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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第六章 死闘? 何それ美味しいの!?
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第57話 デモンズメイルの奇襲

 それは矢だった。

 ジジイを貫いたのは極太の矢。

 しかも青白く光っている。

 ――これは、魔法でできたもの?

「何これ!?」

「マジックアローです! ――戦神よ、我らを守り賜え!」

 ノアがそう言って伏せたまま魔法を展開する。

 手のひらに現れた魔法陣がグングン大きくなって、青白い円盾を作った。


 ガァン!


 すぐ頭上に展開された魔法の盾に、マジックアローが弾かれる。

 まるで鍋を被って思いっきりのし棒で殴られたような音。

 衝撃がビリビリと僕の頬を伝っている。

「ぐぅぅ……なんて威力! こんなに連発できるなんて!」

「ノア! これもしかして!」

 さっきからサクサクと砂に刺さっては消えてゆく魔法の矢。

 魔法で作ったにしては妙に形がしっかりとしている。


 ――ふと、嫌なことを思い出した。


 あの路地裏で出会ったヴァンパイア――もとい、『デモンズメイル』を着た男。

 あいつは徒手空拳で戦うかと思いきや、魔法で作った精巧なロングソードを奮ってきた。

 この矢の出来も、そして消え方もアレそっくり。

 ということは、つまり!

 ここにあの鎧の男がいる!?



「ギエエエエエエエエエエエエ!」



「クリーピーちゃん!」

 ドカドカと降り注ぐ矢が、今度はクリーピーちゃんの方に振ってくる。

 バキン! と音を立てて折れたのは角。マジか、あの角けっこう頑丈だったのに!

 クリーピーちゃんは悲鳴と共に雷撃魔法を展開。

 降り注ぐ矢を撃ち落とそうとしているけど押し負けて――

 くそ!

 どんどん刺さってる!

「ノアどいて! 助けないと!」

「ダメ! 頭を出しては!」

 再び轟音が頭の上に鳴り響く。

 砲撃のような魔法の矢が、ノアの展開した魔法の盾を震わせている。

 こんな無力感は感じたことは無い。

 護られながら、僕の目の前で幼龍が蹂躙されてゆく。



「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



 大声を出しても、暴力は止まらない。

 そこから五分か、十分くらいか。

 マジックアローが納まったところで、僕とノアは息があったようにバッと離れて身構える。

 観客席の中程。

 魔法で作った弓を降ろすのは、やはりあの『デモンズメイル』の男だった。

「……キュエエエエ……」

 横目でクリーピーちゃんを見ると、体に無数の傷が出来ていた。

 あのドラゴンの鱗を撃ち抜くだなんて、とんでもない威力だ。

「クソ、ミタマを強引にでも連れてくるんだった。ノア、回復魔法は?」

「本来回復魔法というのは高等技術なのです。魔法の心得がある私でも、あの子(ミタマ)のような事はできません」

 マジか。あのキツネっ娘そんなことしてたのか。

 クエストでボロボロになったギルドメンバーをお札一つで直してるから、回復魔法なんてチョロいとか思ってたけど。置いてきたのがますます悔やまれる。

「大丈夫、ドラゴンは生命の頂点。幼いとはいえ簡単には死にません。それよりもケント、『デモンズメイル』が!」

 バッと観客席から飛び降りて、クリーピーちゃんが出てきた大門あたりに着地した鎧の男。

 魔法で象られた弓がフッと消えると、次に出てきたのは投げ槍のようなものだった。

「あいつ!」

「へ、へへへ……」

 しゃがれた声が聞こえてくる。

 横を見ると、腹に大穴を開けて息絶え絶えになっている狒々ジジイ。

 僕たちに向かって「ざまぁ見ろ」みたいな顔。

 諦念と悔しさと情けなさと、そんなのがグチャグチャに入り交じったような感じだ。

「きょ、協力してやった結果がこのザマかよ……いよいよ年貢の納め時だな、俺ァよ」

「協力? あの鎧に協力してたのかよ!」

「へ、へへ。無敵のセンセイよ。アンタ、()()()()に巻き込まれて……ぎゃああああ!」

 ドカッと刺さるのは魔法の投げ槍。

 狒々ジジイの胸のド真ん中に突き刺さっていた。

「!!」

 目の前で絶命する狒々ジジイの目がグリンと白目を剥く。

 モンスターを何匹も倒しておいて今更だけど、リアルな死を目の当たりにして背筋が凍った。

 ゾワゾワと背中を這うのは相手の殺意だろうか。

「……貴様! 何が目的だ! 何故こんな事をした!」

 ノアが吠えるが、鎧の男はクックと笑うだけ。

 鎧の男は両手をゆっくりと胸の前に掲げた。

 現れたのはロングソード。

 いや、ロングソードというよりもうあれは()()()()の範囲。

 ツヴァイハンダーとか、クレイモアとかそういう類いの――大剣だ。

 肩に担ぐように、けれども常に振り下ろすような気迫を込めてこっちに向かって歩いてくる。

 ただの野良犬剣法ではないのは一目で分かった。

「……あの構えは!」

「ノア?」

「あれは王国騎士の流儀! お前は一体何なんだ!?」

 その言葉が引き金になったのか。

 鎧の男はドッと踏み込んできた。

 その彼我、三〇メートルほど。

 担いだ魔法の大剣を横に寝かせて飛び込んでくるのは砲弾のよう。

 多分、僕たちを二人とも横一文字に薙ぎ払うつもりだ。

「ケント下がって!」

 ノアが前に出る。

 タイミングを見計らっているようだ。

 魔法の剣を弾くことができるのか。

 そんな事を思っている間に。

「イヤアアアアア!」

 逆袈裟に切り上げるノア。

 物体で無いはずの魔法の剣が――


 ()()()()()


 音を立てて、軌道を逸らした。

死闘の始まり。言葉無き鎧の目的とは。


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