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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第五章 貴族の令嬢? 何それ美味しいの?
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第51話 理想のカタチ、ヒロインの気品

「答えて下さい。私は頭がおかしくなりそうだ。私は恥ずべき事をした。もう没落かと思った。カーラ卿に身ぐるみ剥がされることも覚悟した。なのに! あんなに美味しいご飯を毎日毎日! 何故!」

 えええ、そこまで僕のご飯って悩ませてたの?

 ムキになって本気を出したせいかな。嬉しいやら悲しいやら。

 うーん、答え辛いなあ。

 ……飾ったところで仕方が無いから、正直に答えるか。

「わかんない」

「わからない!?」



「僕の思う理想の武術家は、そういうのじゃないから」



 自己満足の極みだと言われたら、甘んじて受け止めます。

 でもこんな僕には理想しか無いからね。

 元の世界で卑屈になって、顔色を窺ってでもそれなりにやっていけたのは、常に映像や創作物に僕の理想があったから。

 弱気を助け、強きを挫く。

 たとえ恥辱を受けようとも、相手が改心したならば手を差し伸べる。

 得た力を壊すことに使わず、助ける事に使う。それが僕の思う武術家。

 笑われたっていいよ。

 結局僕が知識をため込んだ武術は人を殺める技。

 残忍で狡猾で卑怯で心の無い方が強い。世の常。

 そんなルールの中でも自分を律してスマートに勝てるなら、その方が格好いいじゃん。

 だから、僕は理想の武術家の先生がやる事をしたいだけ。

「理由なんて無いよ。僕がそうしたいだけ」

 前はそうしたいのに、できなかった。

 今だってスキルが無ければずっとビクビクしていただろうけど。

 ふとカーラさんの言葉が重なったような気がした。

 アホだなと思う。

 僕はスキルがあるだけのただのデブなのにね。

 言葉が過ぎる。

 身の程をわきまえろってね。

 ヒーローはイケメンがやるべきだ。

 わかってますよ。

「拷問をしたのに?」

「もういいよ。因みに。内緒だけど僕これでもエキゾチックスキル持ち」

「!?」

「君がいくら拷問したところで、痛くもかゆくもない。僕もほとんどマッサージだった。黙ってて悪かったけど、カーラさんに上手にやられたね」

「……そう、ですか。そうだったんですね。あはは」

 顔を上げたノアの頬に、つーっと一筋涙が出ていた。

 やべえ。

 何か変なこと言っただろうか。

()()()()()()()()()()()()

「どどどどどういうこと!? 僕何か変なこと言った!?」

「何でもありません。さあ、長とやらに話を。できたらここにあるエリクサーを全部頂いて行きましょう」

 それまでおっかなびっくり、時には子供みたいに感情を露わにしてたのに。貴族根性丸出しの悪役令嬢かと思ってたのに。

 今のノアにはちょっとだけ、ヒロインめいた気品がでてきた。そんな気がした。



 ★



「エリクサーねえ。確かにあるぜぇ」

 ぷかぷかと水タバコを吹かす老人が、ドラゴンの頭骨で出来た豪華な椅子に座っていた。

 両脇に半裸の美女侍らせてる。いかにもって感じだ。

 眼光が鋭い短髪白髪の老人。

 この人が闇市の長か。

 おっかねえ。ヤのつく人の親分じゃん。

「僕はケント。こっちはノア。ギルド『灰狼』の冒険者です」

「聞いてるぜぇ。カーラからも、ウワサでもな。何でもスゲえ使い手だそうじゃねえか。ええ?」

「ただの武術家ですよ」

「ただの、と来たか。おめえさん、抗争を一つ潰したそうじゃあねえか。たった一人で。殺すかと思いきや、双方ゲンコツで納めやがったと。シビれるねえ」

 水タバコを再びぷかーっと吸っては吐く闇市の長。

 口では僕の事を評価しているように聞こえはするけど、何だか値踏みをされているような、そんな視線だ。

「それでだ。今お騒がせの吸血鬼野郎が、何でかエリクサーを欲しがってる。もう街の在庫がねえから、ここに来たって事だな?」

「……もしかしたら、その吸血鬼がここを狙ってるかも。僕たちはそいつの身柄を抑えたい。だからエリクサーを譲ってくれませんか」

 今のところは吸血鬼ということにしておく。

 あれが宝物庫から盗まれた鎧っていうのは秘密中の秘密だからね。

「言い値で払いますよ。何なりと。こちらはそれなりの報奨金を貰っているので」

 お、何か凄い。

 ノアが完全に冒険者を装ってる。

 しかも堂々としているから凄みも出てるし、百戦錬磨って言われても解らないかも。

 暫くの沈黙の後、闇市の長ははぁーっとため息交じりで煙を吐き出した。

「やだねえ、金、金、金って。俺を誰だと思っていやがる。この闇市を一手に率いる男だぞ。何だおめえら、俺が残りのエリクサーがめてつり上げようって腹だと思ってんのか。ああ?」

 どこだよ怒りポイント。

 と、思ったけどこれ怒ってないね。()()()()()()()

 これで僕たちがどう出るかを見てるんじゃないかな。

 うーん、参ったな。

 僕こういうの苦手なんだけど。

「吸血鬼が来ても備えがあるから大丈夫、ということですかね」

「ハッ! 今さら何が吸血鬼だよ。逆にエリクサーを餌にして返り討ちにしてやらあ。見ろ」

 長が指を鳴らすと、ゾロゾロと出てきたのは屈強な男達。

 身に纏うのはいかにも聖なる装備みたいな感じの鎧と槍。

 白銀のフルプレートに身を包んだ彼らは、誰も彼もが強者なのは見て解った。

「……破魔の祝福に、不死殺しの槍。ドレインバスターの剣に、銀の杭」

「おお、何だ姉ちゃん。鑑定スキル持ちかい。その通りだ。ってワケでご足労願ってなんだが、間に合ってるよ。カーラに伝えとけ、舐めんなってな」

「別に舐めては無いですけど……」

「あぁ!? テメエなんだ。俺に口答えするってか?」

 この人……いや。

 このジジイ、典型的な親分タイプだ。

 めんどくさ。

 話を聞いているようで最初から聞いてない。自分の言葉を聞くか否かの輩だ。

 主の空気を読んでか、側近のゴリゴリマッチョが僕の胸ぐらを掴んできた。

 これで僕の顔に一発か二発入れて、「はひぃ! すいませんでしたぁ!」って言わせるヤツだね。ついでに僕のウワサが本当かどうかも試してる。

 なら、ちゃんと応えるけど。

 正当防衛ってことでいいよね?

 ということで、反撃させて頂きます。

いきなり雰囲気が変わったノアに少しドキドキするケント君。

自身も変わっていることに気付くのはいつだろうか。


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