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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第五章 貴族の令嬢? 何それ美味しいの?
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第46話 エキゾチックスキル【完全鑑定】

 異世界と名を冠してるけど至って普通のピッツァだけどね。

 表面カリッカリで中もっちもち。

 デーンと置いた大皿にホカホカのピッツァ。

 具はほとんどこの世界のソレっぽいものだけど、まあ大体同じようなものだ。味見したから間違いない。

 エステルが選んでくれた、やたらと斬れる包丁でスパッと八等分。

 頑張っている皆の所に持っていった瞬間、秒で無くなった。

 まあ想定済みだこれは。

 まだまだ沢山ある。

 僕は用意したものを片っ端から焼いて皆に出していった。

 案の定喜んでくれたようだ。

 忙しいときとか、大勢でつまむのにはもってこいだからね。

 ミタマは「あっちゅい! おいち、あっちゅい!」と言いながらチーズをうにょーんとさせている。

 うーん見てるだけなら可愛い。

 癒やされる。

 でもやっぱり実年齢が気になる。

「こ、これがピツア」

「ピッツァね。熱いうちにどうぞ」

 ノアがピザのピースを持ち上げる。

 トロォ~っと伸びるチーズの糸がその青い目に映っている。

 ゴクリと喉を鳴らして、意を決したように一口。


「くっそおおおお美味しいなあああもおおおおお!!!」


 若干キャラが素に戻りかけたけど持ち直した。

 ノアが絶叫する中、他の連中は「ククク……落ちたな……」とか言ってる。お前らそういう所だぞ。

「とんでもなく、美味しい。トマトとチーズが、バジルに導かれて舌に絡みついて、そこへ干し肉のうま味がトドメとばかりに広がってきます。カリカリでもちもち。こんなの食べたこと無い……」

「貴族様のお口に合うようで何より」

「……くそう! 調子に乗るなよぉ……美味しい……」

 お上品な食べ方だけど食べきるの早いですね。

 皆も食べるのがメチャクチャ早い。

 そしてお皿を恥ずかしそうに掲げて、お代わりをねだってくる。

 それを予想していっぱい作っといたけど、これを作るのは暫く止めておこう。皆食べ過ぎる。

 元の世界でも、ピザをデリバリーにしたら注文が入りまくるから、あえて高い値段設定にしたって裏話を思い出した。


「やぁやぁ、良い匂いだ。戻ったぞ諸君」


 扉から入ってきたのはヴィクトールだった。

 ついでの買い物をしてきたのか、肩下げの革カバンがパンパンだった。

「丁度良いところに来たヴィクトール。君の貰ってきた生イースト活躍してるよ。ほら」

「これはまた珍しい料理だ。ここから遙か西の国の郷土料理に似ているが……」

 一口食べて、眼鏡がずり落ちた。

 これ彼の美味しいのサインだ。

「……先生、料理店にご興味は? この手軽で高カロリーそしてあまりの美味さ。外に出るのが億劫な錬金術師にはたまらない食事だと思うが如何か」

「いいアイディアだけどここだけに留めておこうね。それこそ僕がフル稼働になっちゃう」

「然り然り。先生がこのギルドから離れることだけは避けたいことだ。それはそうと、吾輩も色々掴んできた。悪い事と悪い事、先生はどっちがいいだろうか?」

「悪い事しかないのかよ。とりあえず教えて」

 ピッツァをムシャと食べながら、ヴィクトールがカバンから取り出したのは小さな小瓶だった。

 真っ青で蓋が尖ったいかにもって感じの回復薬だ。ビンの形状から言って口から摂取するヤツみたい。

 この類いのヤツって、効果があればあるほど苦くてまずいんだよね。

 それをカバンから何個か出してはカウンターテーブルへと並べてゆく。

 それぞれ微妙に瓶の形が違ったり、中には半分欠けたり汚れたり、蓋がないものまであった。

「おいヴィク! 俺たちゃ調査結果が欲しくて、お前の錬金自慢を聞ききたいんじゃないんだぞ」

「まあまあ聞きたまえニック。これは先生が襲われた犯行現場に落ちていたもの。こっちは別の犯行現場。これも、これもまたそうだ」

 えっと皆が反応する。

 僕も変な声を上げてしまった。

 エプロンを外して厨房を出る。

 カウンターテーブルに並べられたそれをマジマジとみるけど、何の変哲の無い瓶だった。

「こんなのが落ちてたんだ。全く気がつかなかった」

「スラム、特にゼロゾーンはある意味ゴミ溜めであるからな。吾輩も何故こんな高級品でなければ、気にも留めなかっただろうよ」

「高級品?」

「ーーそれはエリクサーの瓶ですね?」

 そういうのはノアだった。

 小汚い瓶をじーっと見ている。

 ふと気付くと、その目には魔法陣のようなものが浮かび上がっていた。

「しかも違法品ですか。成分も本物に劣る。こんなのが流通しているだなんて」

「これはこれは。僅かな残りから成分まで。プレストン家の者に代々受け継がれしエキゾチックスキル。其の名も【完全鑑定】というものですかな?」

「詳しいですね錬金術師。その通り。私の先祖は鑑定士。迫り来る魔王軍を打開しうるマジックウエポンを鑑定して王国騎士達に授けたその末裔。この程度ならわけはない」

 すごい。

 自分以外のエキゾチックスキルなんて初めて見た。

 僕のスキル【わがままボディ】もとんでもない強さだけど、彼女の【完全鑑定】もそのぐらいのものなのだろう。

 彼女に看破できないアイテムはない――そんな感じかな。

「万能薬エリクサー。ある程度の副作用はあるものの、致命傷すら即座に癒やす最後の砦。本来なら王国騎士の将校クラスに配給されるもの。違法製造は重罪を免れないですが……」

「ええ、ええ。ですがここはスラムですのでねノア嬢?」

 ニヨニヨと微笑むヴィクトールはちょっと気持ち悪い。

 ノアも何か言いたそうだったけど、はぁ、とため息をついて頭を振っていた。

「まあいいでしょう。郷に入っては郷に従いましょう。それで、これがどうしたというのです、錬金術師?」

「吾輩の推論ではあるのですがね、件の鎧の者はエリクサーを使い続けていないとマズい状況なのでは無いかと、そう思うのですよ」

エキゾチックスキルが発現するのは勇者か異世界転生者か、血統による進化。そこ、スタ○ドとか言わない。


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