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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第五章 貴族の令嬢? 何それ美味しいの?
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第43話 先生の料理は特段にキマる

 てかサキュバス嬢って。

 お前何日か見てなかったけどそういう……。

 まさかヒモか?

 いや仕事してるからヒモじゃないか。

 とにかくダメだぞそいうのは。

 うらやまけしからん。

 うらやましいけど、けしからん!

 ……いや、よくサキュバス嬢の相手できるな。そういう強さもあるのね。

 まあそれは置いといて。

 確かにギルの頬はげっそりしていて、静かにお腹をさすっていた。

 側にはいつも酒が置いてあるのに、湯気が立ったハーブティーが置いてある。

 僕は医者じゃないけど、確かにあれは食あたりみたいな顔だ。間違いない。

「あら珍しい。ケント、後で何か胃に優しいもの作ってやってくれよ」

「ギル、何食べたの?」

「わかんねえ」

「わからないって……今日の献立ハンバーグだけど、薬膳作ってあげようか?」

 そう言うとピクリ、と反応するギル。

 何だ今の。

 何に反応したんだ。

 ハンバーグ?

 それとも薬膳?

 ずっと四方を睨むような表情だから読めないんだよなこいつの顔。

 しばらくすると無念みたいな顔をして、ため息。

「……悪い、少し寝る」

 そう言いながらのっそりと起き上がって、ギルは階段を上がってしまった。

 跳ねっ返りが静かになるのは何か心配通り越して不気味でもある。

 まあいいや、起きてきたら美味しい薬膳がゆ作ってあげよう。

「……で、先生。その女と四六時中いるっての?」

 奥にいるのはブスーッとしているウサ耳のモカだった。顔はちょっと怒っているけど、耳だけしんなりしてる。調子悪いのかな。

「四六時中じゃないよ。探す時だけ」

 そう言うとモカは「あっそ」と素っ気なく答えた。

 何でイライラしているんだろう。

 かと思えば、僕の顔見て悲しそうな顔するし。

 取りあえずそっとしておこう。


「ん? もしかして~?」


 こてん、とミタマが首を傾げている。

 糸目の上の柳眉がニュッとよって、困惑しているような感じだ。

「先生~、その間のご飯は~?」

 ご飯、という言葉にピクリと反応する『灰狼』の面々。

「わらわ、毎日先生のご飯食べるのが好きなんじゃけど~。探しに行くってことは、何日か留守にするってことかのう~?」

 たしたし、とテーブルを叩くミタマ。抗議のつもりだろうか。

 ミタマの困惑が広がったのか、ギルド無いもザワザワし始めた。


「そういやそうだった。メシどうなるんだ?」

「先生のメシだけが生きがいなのに……調査中はもしかして無しか?」

「は? 冗談じゃないんだけど?」


 モカがありえないんですけどーみたいな口調で更に不機嫌になった。

 エステルもふくれっ面になって無言の抗議をしている。その他以下略。

「仕方ないだろう。これでも大口の案件だよ。探してたら作れない日もあるーー」



「「「やだー!! ご飯抜きやだー!!」」」



 カーラさんの説得も空しく、もの凄いブーイングが飛んできた。

「うるっさ! 一斉に叫ぶんじゃないよ!」

 と言っても、皆はずーっとブーイングをしてくる。

 何だかこれ、デジャヴだなと思ったらサーラの村でもこんな感じだったっけ。

 僕のご飯を美味しいって言ってくれるのは嬉しいけど、ちょっと中毒っぽくなってないだろうか。

 確かに僕のご飯の味付け、ちょっと濃いから外働きの彼らにはウケがいいんだよなぁ。

「そ、そんなに美味しいのですか。お前の料理というものは」

 驚いてるノアに迫ってきたのはニックたち。ヒッヒッヒと何だか悪いものを勧めるような笑みだけど、これ彼らのデフォです。


「ノアのお嬢様よ。一度食ってみねえ。あっという間に虜になっちまうぜ。コロッケなんてたまんねえぜ?」

「一度キメると抜け出せねえんだ。やみつきになること請け合いだ。ホイコーローっていう野菜炒めが夢に出てきちまう」

「先生のご飯がねえと震えちまうんだ。ギョーザっていう挽肉の薄皮包み焼きが目の前にチカチカ出てきやがる。先生、早くメシくれよぉぉ!」


 おいやめろ。

 別の意味に聞こえるだろ。

 料理名が不思議なお薬の隠語みたいになってんぞ。

 完全にキマッてる顔でノアに説明するんじゃ無いゴロツキ共。

 ニック達の迫真の説明にやっぱり何か勘違いしたのか、ノアは更に侮蔑の目を向けてきた。

「お前……料理に何か仕込んでいるのですか……こいつらの目、どう見てもおかしい……」

「違う違う。あと、こいつらのしゃべり方は慣れた方が良いよ」

「とにかくだ。俺ァ絶対反対だ。そもそも先生がやられて……やられてる?」

 そこ疑問形になるなよ。

 バッチリ捕まったよ。

 めっちゃいいマッサージだったけどさ。

「で、依頼とは言え尻拭いも先生だ。その上三日以上飯作らない? それはまかり通らねえ!」

 あーうんまあその通りなんだけど、決めたのカーラさんなんだよなぁ。

 言葉的には僕のこと心配してくれてたみたいだけど、平気なのを見るや料理が提供されないで反発してるなこいつら。僕わかる。かなしい。

 いつのまにかギルドメンバーはニックを先頭にスクラム組んで「反対!」と、どっかのデモみたいになっていた。

 バカだと思っていたんだけど……全員ここまでバカだとは思わなかった……。

 うーんどうしようか。

 作り置きにも限度があるしなあ。

 シチューは漏れなくつまみ食いされる。

 燻製を作るとゴロツキ達が酒の肴にする。

 漬物作るとミタマが全部食べる。

 もうちょっと我慢ってのを知らないのか君達は。

 叱ると「先生のが美味しいのが悪い」って逆ギレするからなぁ。

 三日以上って彼らは言ってるけど、調査を本格的にやればもっとかかるだろうし。

 今のところゼロゾーンにいることは濃厚だけど、別の所に行ったらもう追えないもんな。

 カーラさんを見る。

 案の定こうなった彼らを制御するのはお手上げのよう。「何とかしてくれ」とばかりに目で訴えてきた。

 いやいや、貴方が決めたことですからね?

 出たとこ勝負過ぎるでしょ……。


「ん!」


 ニック達のスクラムの背後からスーッと伸びたのはエステルの手。

 そして意外にも、我関せずと怪しい薬物を調合していたヴィクトールが眼鏡をキランとさせて、一緒に手を上げていた。

因みに後日ノアもしっかりキマったとさ。


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[一言] この身体のデカイ欠食児童どもをなんとかせにゃあ……
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