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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第五章 貴族の令嬢? 何それ美味しいの?
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第41話 しくじり令嬢の覚悟

「最初はそうも焦ることはなかったじゃろうなぁ。長いプレストン家の歴史じゃ、襲撃の際の手引きも、隠蔽の手引きも厚いものがあろう。じゃが、輸送隊はまるっと消え失せて、鎧はあろうことか王都に現れた。偶然とは言いがたいのぉ~」

 頭上のおキツネ様が口を開いた。

 何だろう、頭の上がゾクゾクする。

 アレだ、時々彼女が目を見開いたときの圧だ。

「こんな宝物庫の奥も奥にしまい込まれておったのじゃ。その真名に気付く者はいないはず……が、被害が広がれば万が一もある。そうなれば、プレストン家は失脚間違いなしじゃの~」

「そ、その通り……貴方は……?」

「ミタマ。前から気になってたんだけど、本当は何歳?」

「……は! な、なんのことじゃな? わらわ、今年でじゅうにさい!」

 嘘つけ!

 減ってるだろ!

 てかそこで何で声変えるの?

 さっきまでまるで宮中経験者のような物言いだったんだけど!

 年齢も一〇〇とか下手したら一〇〇〇とか抜いてない?

 そう思っていたら彼女の細い太ももで顔を挟まれた。

 ガタガタ言わず推理を褒めろってことか。

 手を伸ばしてキツネ耳を撫でると、ミタマは再びふんにゃりとなって僕の頭に顎を預けた。

「なるほどねえ。確かにこれは一大事だ」

「……正直に言えば、もう打つ手がありません。カーラさん、どうかお力をお貸し願えませんでしょうか」

「いいだろう」

 即答だった。

 そもそも引き受けるつもりだったからだろうけど。

「報酬は覚悟してもらおうかね。こっちは料理係をやられてるんでね」

「それは勿論ですが……料理係? まさかこのオークが?」

「だからオークじゃないって言ってるだろ!」

 ノアがすっごい目で見てきた。

 毒でも盛ってるのとか、さては薬でカーラさんを懐柔したのかとかそんな目をしてる。

「そうだケント。この一件、アンタがやりなよ」


「「はぁ!?!?」」


 ハモった。

 それはそれは綺麗に。

 何言ってんだこの人。

 僕がこのポンコツ令嬢に何されたか解って言ってるのか!?

「嫌なのかい?」

「当たり前でしょう! 僕、拷問までされたんですよ!」

「でもほら、現状アンタがその『デモンズメイル』だか何だか初めて撃退した男なんだろう? なら適任さ」

「カーラさん、その、この男に任せるにはちょっと」

「何だい不服なのかい? ケントはこれでもA級クラスの冒険者。ノアの嬢ちゃんだってその強さ解ってるだろう」

「し、しかし!」

「契約条件はケントがやる、だ。嫌なら他をあたりな。まあ、市井の冒険者ギルドを使ったとあれば、それはそれで貴族の界隈からバカにされるだろうけどねえ」

「ぐうう……」

 チラッチラ見てくるノア。

 もう殆ど殺意に近いものを向けて来ている。

 僕だって嫌だよこんな悪役令嬢。

 確かに彼女は見た目だけ見れば完璧に綺麗だ。

 金髪のセミロングもその立ち振る舞いもいかにもヒロイン。

 剣の腕も強くて、立ってるだけで品が良いのが滲み出てる。

 ハッキリ言えば、僕が思い描いたヒロインそのものだと思う。

 けどね、僕気付いたよ。

 人間見た目じゃ無い。

 綺麗なハートだ。

 ハリウッドの俳優もそう言ってたから間違いないよ。

「子供じゃ無いんだから我慢しなよ。そんな貴族根性だからシクるんだろ」

「シクってないもん! ……ないです……」

 シクッてるね。

 しくじりかましてるね。

 口に出そうものなら側にある妖刀めいたもので斬られそうだけど。

 カーラさんはニヤニヤしながら顎に手を当てている。

「そもそも今回の騒動、盗られたのは気の毒だが、お嬢ちゃんのケツの拭き方が気に入らないね。アタシが助けに来なかったら、ケントをどうしていたんだい?」

「そ、それは――」

「当ててやろうか。ケントを旧魔王軍の参謀ハイ・オークって事にする。首は取らないだろうがーーそうさねえ、プレストン家の慈悲を見せて、檻に入れて市中引きずり回しの上に国外追放ってとこかな。何枚か金貨握らせて、な?」

 ぎくり、と肩を震わせるノア。

 こいつとんでもねえヤツだなマジで。

「ケントもそう怒るな。これが貴族ってヤツなんだよ」

 とカーラさん。

 肩を竦めてため息をついている。

「クソみたいだろ。隠蔽体質は一級品さ。でも仕方が無い。家柄で殴り合う人種だし、生まれて上流階級ってのは絶対に下を見ながら育つ。品行方正でお上品に育っても、絶対心に線引きってのがある。だからアタシゃ宮仕えが嫌なんだよ」

 なるほど、カーラさんも嫌がるのが解る。

 この王国、コテッコテの貴族制があるみたいだ。

 例に漏れず貴族は大なり小なり選民思想を持っているし、建前では民に寄り添いながらホントのとこは農奴くらいにしか思ってないんだろう。

 ノアはまだマシなほうで、自分から鎧探しに出るくらい責任感は強いのだろうけど、根っこの所は貴族なんだ。やだやだ。

「もっと良いこと思いついた。ノア、アンタウチで冒険者やりな。ケントと一緒に現場に出るんだ」


「「なんでそうなる!」」


 誠に遺憾ながら。

 二度もハモってしまった。

 ええ……凄い、嫌です……。

 僕一人でやるならまだしも、こんな悪役令嬢とバディ組むの?

 絶対トラブルしか起きないじゃん。

 当然こんな提案、ノアも目を丸くしている。

 拳をギュッと握って、激怒寸前まで顔が真っ赤になっていた。

「はぁ、プレストン家の覚悟ってのはそんなモンだったのかね」

「何を!」

「ちゃんと現場に出るいい貴族だと思ったんだけどねえ。ちょっと都合が悪くなったら渋りやがる。貴族根性を叩き直すいい機会だと思ったんだが……これだから良いとこ育ちはーー」

「や、やります!」

 ノアが言い切った。

 そのまま引き下がってくれれば良かったのに。ガッデム。

「いくらカーラ勇士卿でも聞き捨てなりません。私はこれでも次期当主候補。父上不在の中、事実上の当主です。家を守る為なら何でもやります。た、たとえ……汚らしいオークの側にいろと言われてもです!」

 ノアが半べそで吠えた。

 なにそのくっ殺せ寸前の表情。

 僕もそろそろ泣いて良いですかね。

 確かに元の世界でも同じように嫌われてたけど、そんなに言わなくたっていいじゃないか。汚らしいって。僕ちゃんとお風呂入ってるからね?

「口では何とでも言えるけどねえ。できるのかい本当に? スラムは怖いよぉ? お嬢ちゃんみたいな良いとこ育ち、すぐさらわれちゃうよ~?」

 割と冗談じゃ無く本気で危ないんだけどねそれ。

 スラムの中はカーラさんの睨みが利くけど、ゼロゾーンはどうかな。

 そもそも、彼女があの劣悪な環境にいられるとは思えない。

 慣れた僕でさえ時々顔を顰めるような事もあるのに……あんな煌びやかな豪邸に住む人がだなんて、とてもとても。

「こ、怖くなど! 私にはプレストン家のロングソード術があります。宝物庫を賊から護る守護たる剣が――」


「本当に怖くない?」

「――!?」


 ノアが僅かに後ろに引き寄せられた。

 急なことでビックリしたけど、ノアの背後にゆれる銀の髪で状況がすぐに理解できた。

 いつの間にかノアの背後に忍び寄ったエステルが、ノアを掴んで首元にナイフを当てていた。

大貴族に向かって冒険者になれと言えるのはカーラのみ。果たしてその意図はーー?

半分くらいは私怨だと思う(ケント談)


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