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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第五章 貴族の令嬢? 何それ美味しいの?
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第37話 華やかで荘厳な王宮の裏

 ついでにこの人の性格上、家族に手を出されて頭来たから、この際貴族達から金むしり取ってやるってのもあるかも。

 仇を取ってくれるのか。

 それともダシにされたのか。

 うーん複雑だ。僕が無事だからいいけどさ。

「心配ないよ。ウチのみんなは口が固いから。この赭熊のカーラにどーんと任せてみなよ」

 ニッコリと笑うカーラさんの顔はズルい。

 ガサツで乱暴そうな顔が、いきなり母のような顔になるんだから。しかも年齢不詳の魔美女だから余計に威力が高い。

 これが決め手になったのか、目の前のノアさんはホロリと涙をこぼしていた。感動の涙だ。あーあ落ちちゃった。

 多分ノアさんの年齢は僕よりちょっと上。二十歳は迎えていないだろうけど……人間を見る目はもう少し養った方が良いと思います。

 僕が言えることじゃないけどね!

「ひぐっ……ご厚意、感謝致します……」

「さぞ辛かっただろうねえ。グリフォンに驚いてギックリ腰やらかしたお父様は半分隠居中。この大きな家とお役目を嫁入り前の女一人で支えるにゃ、相当な苦労があっただろう。その上、愚痴をこぼせば家名に釘を打たれるのが貴族だ。解る。解るよ。だからほら、アタシに話してみな」

 ここからノアさんが嗚咽混じりで泣きじゃくり、側に寄ったカーラさんが優しく抱きしめるんだけど……「やったぜお宝ゲットォ」みたいな山賊顔になってたのは墓場まで持って行こうと思いました。まる。



 ★



「はえ~、すっごい! ここが王宮!」

「あまり騒がないように。ここは神聖なる場所です」

 そんな事言われても、この光景を間近で見て感動するなとかリアクション取るなと言うのは無理があると思う。

 僕達は今、いつも遠目で見てきた王宮に来ている。ノアさんが曰く、ここでしか話せないんだって。

 王宮はバカでっかいクリスタルが浮かび、それを囲うように作られた城。その独特な形は完全にゲームで見たファンタジーのそれだった。

 城はかなり深い堀に囲まれていて、橋は大通りから伸びる場所だけ。この辺りの建物は高級感を増して、歩いている人も金持ちっぽい人ばかり。僕たちみたいな冒険者が歩けば完全に浮く感じだ。

 最初の城門前で門番兵にかなり怪しまれたけど、ノアさんとカーラさんが顔を見せた途端に態度が変わった。ポンコツ令嬢かと思ってたけど、王宮前では隙がない所作は流石かなと思う。

 王宮に入り、各部署につながっている大ホールに入るとあまりの豪華さに目が回りそうだった。

 まさに白亜の大宮殿。

 彫刻も天井画もえげつない。

 オマケに円状のガラス天井を見上げると、さっきのバカでっかいクリスタルのちょうど真下。宝石みたいな光が入り込んでめっちゃ綺麗だった。

 田舎根性丸出しなのは僕とエステルだけで、ノアさんとカーラさんそしてミタマはスタスタと歩いてゆく。

 いや二人はいいけどミタマ。

 君やっぱりただモンじゃないだろ。

 しばらくすると王宮の人のひそひそ声が聞こえてきたので、慌ててついていく――けど、先を歩いていたノアが立ち止まっていた。

「これはこれは第四位。勇士爵を連れて珍しい」

 誰かに話しかけられているみたいだ。

 カーラさんの後ろからひょっこり見てみると、ノアさんの正面にはイカつい初老の……なんだろ、将軍とか閣下とか言わんばかりの雰囲気を纏うオッサンがいた。

 鷲の眼のようなギロリとした目が印象的で、眉が猛将と言わんばかりの極太。それでいて真っ白なロングジャケットは皺一つ見当たらない。

 お手本……いや規則が足を生やして歩いているみたいな感じ。

 几帳面で、部下のあくび一つで咎めそう。そんな神経質さが滲み出ていた。

 怖い生活指導の先生に似た雰囲気が出ててヤだな。

 ……てか、ノアさんとこのオッサン、なんでこんなにピリピリしてるんだ?

 後ろからでもわかる緊張感。カーラさんは小さくだけど肩をすくめていた。

「これはこれは儀典局長。第三位がわざわざお声かけとは。私の公務を遮って、一体何の御用でしょうか」

 待って。

 ノアさんの言葉に『なんだァ……てめぇ……』ってルビが見えるんだけど。

「カーラさん、あの人は……?」

「序列第三位。『王の儀典長』ファビオ=ダラスさ」

 こっそり聞いてみると、カーラさんはちゃんと教えてくれる。

 その顔は何となく嫌なやつを会って気分が悪くなったみたいな感じ。ミタマも尻尾をしんなりしていた。一方エステルは「?」の顔で僕にひっついていた。興味ないのね。

「なんでピリついてるんすか?」

「さあ。王宮なんてこれが日常だからねえ。特に序列の近い者同士は基本犬猿の仲。ピリつくのも仕方ないかもね」

 どう言う事だってばよ。

 もしかして貴族達って基本仲悪いのか?

 そういや大ホールに入ってから、スラムとはまた違うピリピリ感を感じていた。こうなると僕が奇異な存在だからってわけではなさそう。

 何だろう……この、ねっとりというか……出し抜いてやろうかとかそんな感じ。グループが力を持ち始めて割れた、仲の悪いクラスみたいだ。

「お呼びかけは光栄ですが、勇士爵を宝物殿へ案内するお役目があります。そこを退いて頂けると助かるのですが」

「ほう。勇士爵を。一体どんな御用で――!?」

 やっべ。なんか目が合った。

 そしてこのファビオ、僕を見るなりいきなり驚いた顔をしてる。

「第四位、かの者は。こう言っては何だが、王宮に入るにはいささか」

 いささか何だよドチクショウ。

 ここに体重制限なんてないだろ。

 ドレスコードがあったならごめんなさい。

 見た目通り、この人衣服とか気にする人だったのかも。儀典局っていうくらいだからね。アメリカの儀仗兵がビシーッと制服に身を包んでいるのと同じアレを求められたら無理です。

「勇士爵の部下です。お気になさらず」

「勇士爵の……まあ良いだろう。それでは一つだけ。例の件は考えていただけましたかな?」

「その件でしたら丁寧にお断りしたはず。私にはお役目があります。婚姻などはまだ先のことです」

 オー、なんか込み入った話になってる。

 僕たち置いてけぼりなんだけど。

 いや違うな、僕たち――カーラさんにも聞いてほしいみたいな雰囲気。チラチラカーラさん見てるし。

 なんだろ婚姻って。

 もしかして息子と見合いとかそういう感じ?

 でもキッパリ断るあたりがノアさんらしい。

 さっきからピリピリしてたのもそのせい――

「ではもう一度。ノア=プレストン卿。我が妻となれ」


 いや、アンタかよ!

 オッサン歳考えろ!!

なんで王宮ギスってんの?

というかこのオッサンちょっと言ってることわからない(ケント談)


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