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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第五章 貴族の令嬢? 何それ美味しいの?
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第35話 おキツネ様はじゅうよんさい!

「これで大丈夫じゃなぁ~」

 間延びした声と共に、細くなった足からペリペリと湿布のようなモノを剥がされる。

 じんわり暖かくなったかと思うと、(すね)のあたりに見慣れない光の文字が浮かび上がった。

 瞬間、ムクムクと足が肥大化し始める。

 うおお、何だこの速さ。回復魔法すげえ。

 あっという間に治った。お帰りなさい僕の太い足。

 左手首を叩いてステータスを見てみる。


 体力値:S

 筋力値:A

 魔力値:D

 知力値:C

 耐久値:A

 素早さ:A


 うん、完全復活だ。

 全部元に戻っていた。

「先生どうかの〜?」

「バッチリ。流石はミタマ。そのお札みたいなの凄いね」

「そうであろ、そうであろ。なら先生、褒めて~?」

 ヌッと突き出された桜色の髪の頭。

 ぴょこんと突き出す狐耳がピコピコ動いている。

 一ニ〇センチくらいの身長の小さな彼女。顔はどこかキツネっぽくて、動かないと人形だと言われても気づかないほどに整っている美少女……幼女? だった。

 格好もなかなか特徴的。なんと和装に近い。具体的には巫女装束に似た何か。ただ袴はミニスカートみたいで足が出ていた。スケベなゲームのキャラようだと言いそうになるけどいつも我慢している。

 彼女の名はミタマ。モフモフの狐の尻尾を振る彼女は、これでおギルド『灰狼』のメンバーだ。

 例の『東の国』から流れに流れてきた『陰陽師』を自称する彼女。そんな職業アリかよと思ったら、これはこれで特に珍しいものでもないらしい。杖の代わりに札を使って魔法を行使するんだって。

 ……もう突っ込まないぞ。

 ここはそういう世界だ。健人理解した。

 普段は糸目のまま、ギルドの端っこでボーッとしているか寝ている。

 怪我人が出たらこうやって湿布のようにお札を貼り付けて、()がすと元通り。

 どういう原理だ。

 でも治るんだから仕方ない。ここも考えないでおこう。

 確かな腕を持っているとはいえ、何でこんな子供が……とは思ったけど僕は気づいてしまった。


 彼女が時々見せる、大人びた表情がヤバい。

 糸目が開くと、ゆるキャラから一気に雰囲気が高貴になる。


 僕が推測するに、彼女けっこうな年長者なのではないだろうか。

 エルフとかはめちゃくちゃ長生きだし、成長も遅いらしいからね。

 思い切って年齢を聞くと、長〜〜〜い間の後、


「じゅうよんさい!」


 ……とか返ってくる。嘘つけ!

 よ〜く見ていると、彼女のことをマスコット扱いするヤツもいれば、敬うような言葉で話しかけるヤツもいる。ますます怪しい。

 それでも僕の事を先生と呼び、少女のように甘えてくるから本当に不思議だ。

「ミタマを連れてきて正解だったね。こいつはこんな時にしか役に立たないから」

「ママぁ~それは酷いじゃろぉ~。いつもちゃんと仕事しておるぞ~」

「はいはいそうだね。ウチは怪我が絶えないからミタマには助かってるよ」

 カーラさんも横から手を伸ばして、ミタマをワシワシと()でる。

 ミタマは「ぬは~疲れた~」という間の抜けた声を上げると、ソファーに座る僕とカーラさんの間にぺたんと座る。そして「もっと褒めろ」とばかりにこちらへ頭を突き出してきた。

「先生、私も」

 ミタマの頭を()でていると、反対側から白銀の頭がヌッと突き出された。

 エステルだ。こちらもいい子いい子してあげるけど……やはりひっついたときのナイフの柄が痛いです。

「カーラさん、この二人の組み合わせ珍しいですね」

「人選にだいぶ苦労したよ。みんなカチ……行きたいって言って聞かなかった。でもこの部屋に通したら……解るだろう?」

 今カチコミって言いかけましたよね?

 突っ込んだら負けか。

「……まぁ、そうですね。こんなところに来たら、みんな片っ端から盗むでしょうね」

 僕が今いる豪華な客間。

 そこは右を見ても左を見ても高級品ばかり。

 この中に『灰狼』の連中が雪崩れ込んできたら、多分収拾がつかないだろう。カーラさんナイスだ。


 僕たちのいる場所はもちろん、ノアさんの屋敷。

 そのあまりの煌びやかな光景に、僕は最初唖然(あぜん)としてしまった。


 まずこの客間。すごい広い。ちょっとした公民館とか小体育館とかそのくらいある。天井も絵がビッシリ。

 敷かれている真っ赤な絨毯(じゅうたん)金刺繍(きんししゅう)でドラゴンが絵が描かれた高級品。

 吊り下がったシャンデリアは魔力灯――この世界の電球みたいなやつ――の光を反射してキラキラしている。

 見回した範囲の調度品も高級品ばかり。熊くらいあるトカゲの剥製とか目に宝石が()め込んである。

 これぞザ・ファンタジーのブルジョアって感じ。

 貧乏性の僕はさっきからオドオドしっぱなし。

 つまづいて何か壊さないかなとか、引っ掛けてキズつけないかなとか。

 その点、横に座るカーラさんはデーンと構えている。流石だ。ハートが強すぎる。

「さっすが『王の宝物番』だ。客間もどえらく豪華だねえ」

「その王の『宝物番』って何です?」

「名の通りさ。ここの嬢ちゃんは代々、アリアンナ王国の宝物番をしてるのさ。宮廷入りしてる上級貴族の中でも、皇族とかを除いて四番目に国王に近い存在ってな感じかな」

 多分この世界の常識みたいな知識なんだろうけど、カーラさんは馬鹿にすることなくちゃんと教えてくれる。嬉しい。

 この王国の階級はよくわからないけど、ようするにめっちゃエラい家柄ってのはわかった。そのくらいの理解で十分だろう。

「で、そんなお偉〜いプレストン家の次期当主。美しき令嬢様が、このお方というわけだ。この若さで凄いだろう? そりゃ、地下に拷問部屋も作れるってもんさ、ねえ?」


「ひ!」


 テーブルは挟んで、これまた豪勢な椅子に腰掛けるノアさんがビクーンと跳ねた。

 彼女すっかり萎縮してしまっている。

 偉~い序列第四位じゃなかったのか。

 というか、そんな大貴族相手に何でカーラさんは乗り込めたんだろう?

「なに、昔王に大きな貸しを作ってね。押しつけられた爵位だけど、こうやって貴族相手に門前払いを食らわない程度には役に立つね」

「カーラさん何で僕の心読めたんですか」

「顔に解りやすく書いてあるじゃあないか」

「先生は顔に出るからの~」

「先生は顔に出る」

 ステレオで言わないで。

 美少女と美幼女(仮)に挟まれても涙が出ちゃうぞ。

 まあそれはどうでもよろしい。

 肝心なのはカーラさんの言葉。

 国に貸しってのは、もしかしてグリフォン退治のコトなのだろうか。

新キャラ登場。ミタマちゃんじゅうよんさい!

ただし時々設定年齢を忘れる様子。実年齢は……?


「面白かった!」「続きが気になる!」「ナイスカロリー!」などありましたら、ブクマや★★★★★などで応援いただけると嬉しいです。

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