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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第三章 王都? 何それ美味しいの!?
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第15話 悪名高いギルドマスターの噂

 もうやめて! 僕の事で争わないで!

「おいギルドマスターさんよ。最初から疑問だったんだが、アンタどこのモンだよ」

「ギルドマスターとはいえ冒険者に強制はできないはずだ。そもそもワシらが許さねえ」

「所属を。事によってはギルド連合に申し立てます」

 あーもーメチャクチャだよ。

 三馬鹿がとうとう剣の柄と弓に手をかけ始めた。

 僕苦手だからねこういう場所!

 喧嘩良くない!

 ラブアンドピース!

 ……と、言えれば良いんだけど萎縮(いしゅく)してしまう。

 その一騎当千のスキルはどうしたとか言われてもね。

 武術は簡単に人を一方的に殴るものじゃないんですよ、という言い訳だけ言わせて。

 技と心は別モノなのです!

「言いたくなかったんだけどねえ。ギルドマスターの首飾りだけじゃダメかい?」

 胸の谷間から引っ張り上げたのは、ネックレスの先についた長方形の飾り。鎧の人が下ろした剣の柄頭に両手を当てているゴツいヤツだった。

 けっこう精巧(せいこう)に出来ていて、これがギルドマスターの証だって言われても全然納得できる。カッコイイな。僕あれ欲しい。

 ただそれを見せても、アインツさん達は首を振るばかり。納得してないみたい。

「名を。事によってはエルフも命を()します」

 格好いいこと言ってるイケメンは絵になるけどマジでやめろ。

 お前が幼馴染みだったらブン殴ってる。

 でも僕が女の子だったらその言葉惚れる。

 クソが。何で男共に矢印向けられてるんだもう!

 一触即発の事態にも、ギルドマスターさんは引かないどころかさらに目を(かがや)かせている。

 こういう修羅場とか鉄火鳩とか慣れてる人なんだろうな。

「そんじゃ教えてやるよ。アタシの名はカーラ。カーラ=ヴィアルド。冒険者ギルド『灰狼』のマスターだ」

「カーラって……まさか!」

「それとも『赭熊(しゃぐま)のカーラ』って言った方が通りがいいかい?」

 カーラさんが名前を出した途端、ギルドがシーンと静まった。

 ジェイクさんなんかおもっくそビビってる。

 おいふざけんなその筋肉は飾りかよ!

 てか、二つ名あるんだ。カッコイイな。

 でもビビるほどの人なのか?

「アインツさん。しゃぐまのかぁらって誰?」

「悪名高い冒険者ギルドの長ですよ勇士。王都のどこかにあるというギルド『灰狼』。その長カーラ=ヴィアルドは元山賊ながら王都を襲ったグリフォンを一刀両断。その巧を(たた)えられ、王から直々に騎士号を(たまわ)ったとか」

「え、すごい人じゃん」

 それだけ聞いたら英雄レベルだけど?

 グリフォンってアレでしょ。(わし)の頭に獅子(しし)の体を持つってボス級のモンスター。

 僕の世界ではまるっとファンタジーのボス格か強敵で出てくるヤツ。

 王様が元山賊に騎士号与えるくらいだから、相当なモンスターだったはずだ。

「ですがその名を後ろ盾に、王都の闇で好き放題やっているとか。筋者(ヤクザ)元締(もとじ)めに近いという話です」

 前言撤回、まるっとやべー人だ!

 そう聞くとカーラさんの雰囲気も納得だ。

「ワシも聞いたことがある。王都のゴロツキ共もマフィア共も赭熊(しゃぐま)のカーラには頭が上がらねえと」

「大将、アイツはマズい。ギルドも本当にあるかどうかもわからねえって話だ。マフィア自体がアイツのギルドなんて話もあらぁ」

 冷静に聞いてると全部推測の域を出てないけど、皆の態度がカーラさんのヤバさを物語っている。

 確かにもの凄いオーラだし、存在がまるまる怖い人だけれども。

 でもその顔からは、外道みたいには見えないけど……どうなんだろう。

 そうしているうちに、カーラさんはため息。

 つまんなそうに口を尖らせていた。

「ほれ見ろ。アタシの名前聞いた途端ビビりやがって。誰かこの『赭熊(しゃぐま)のカーラ』と素手喧嘩(スデゴロ)しようってタマはいないんかい。あぁ!?」

 カーラさんの凄みに、シーンと静まるギルド。

 わぁん(そろ)いも(そろ)ってタマ無しだぁ!

 アインツさん命を賭するんじゃなかったんかい!

 なんで弓持たないで震えるジェニファーさんの肩抱いてるの?

 そういやこの二人、何かといい雰囲気だったこと今更思い出した。

 このクソイケメンめ! お幸せにな!

「ったく。じゃ、コイツは連れてくからね」

 むんずと腕を組まれる。その爆乳がムニュンと当たる。

 うひょーとか思ってもカーラさんの顔が怖い。もっかい言う。怖い!

 そして体重三桁以上の僕を片手でズルズル引きずっている。

 なんていう力だ。これがギルドマスターなのだろうか。

 グリフォンを一刀両断したってのは本当みたいだ。

「い、いやでも僕は!」

「いいのかいホントにここにいて。今まではたまたま運が良かっただけなんだよ?」

「へ!?」

「さっき言っただろ。アタシが見逃したところで別のギルドマスターが来たら同じことさ。ギルドマスターは皆【人物鑑定A】を持ってる。ギルドに所属しているか、ギルドに足を踏み入れた人間のステータスが全部見える。冒険者登録した時点で半分()んでるのさ」

 そんな無茶苦茶な!

「そしたら行き先は戦場だ。コボルトだのキラーベアだので満足してたアンタが、連日ドラゴンとタイマン張る勇気あんのかい?」

「はう!」

 耳打ちするのはわざとらしい甘ったるい声。

 確実に僕の弱点を突いてくるのがとても嫌らしい。

「アタシは親切で言ってやってるんだ。アンタは強いが、進んで戦う気は無い。そう言うヤツが無理くり戦いに出された末路は、そりゃあ悲惨(ひさん)なモンなのさ」

 なんでそう言って少し悲しそうな顔になるの?

 意味ありげな表情の裏が読めない。

 人の顔を(うかが)って十七年生きてきた僕を以てしてもだ。

「心配しなくていいよ。ウチのギルドがアンタに一番いい場所だ。メンバーもアンタみたいな一癖も二癖もある連中ばかり。仲良くなれるさ」

 いやそこの三馬鹿もかなりキャラが濃くて面白かったですけれど。

 それ以上となると僕が捌ききれるかどうか。

 僕のチャーミングボディーすら(かす)んでしまうのでは?

「大将!」

「ケント君!」

「ニャー! 行っちゃうのニャ!? ホントに!?」

「ほれ、一番親しくしてくれている時に挨拶済ませな」

 何それ勝手に。

 僕はまだ行くとはハッキリ決めていないのに!

 ――でも。

 この人に真っ直ぐに見つめられると反論が出来なくなる。

 どうしてこの人の瞳に母性みたいなのを感じてしまうのだろう。

 どうして「頼っていいかも」って、顔から読めてしまうのだろう。

恐ろしいはずなのに、どうして母性のようなモノを感じるのか。

このカーラという女性、何者……!?


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― 新着の感想 ―
[一言] せめて、クリームシチューのレシピを渡してあげよう!www がんばれケントくんw
[一言] 哀れぽっちゃりさんは熊さんに美味しくいただかれてしまうのか……
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