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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第三章 王都? 何それ美味しいの!?
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第13話 お関わりになりたくない姐さん登場

「あの通り。みんな今更何だって反対してて。ケント君じゃなきゃヤだって。私もちょっとヤだな」

 ちょっとですか。

 ジェニファーさん、もう少し嫌がってくれてもいいんですよ。

 さてさてこの状況。

 嬉しいやら悲しいやら。

 僕彼らの胃袋をガッチリ(つか)んでいたのか。

 こういう時僕どういう顔したらいいのか解らない。


「やめて! アタイの為に争わないで!」


 ってお決まりの言えばいいのかな。

 ちょっとふざけた感じで。

 ……いや、余計に混乱を招きそうだからやめとこ。

 真面目に考えると、こんなに放置されていたのに今更来たギルドマスターに非難囂々(ひなんごうごう)って感じかな。

 人数が足りないところ上手に回していたのに、急に本部から全く現場を知らない人材を押しつけられたら、そりゃ現場は怒る。

 これ僕が飲食店でアルバイトしてた時の話ね。

 大人のいざこざ見て「うわぁ」って引いたことある。

 それが目の前に起きてる。

 中心は僕かもだけど、ちょっと他人事に感じてしまった。


「そう言われても困ったねェ。これでも会合の名代で来てるんだよ。アタシの一存じゃあ無い」


 冒険者達のやり玉になっていたのは濃い茶髪の女性だった。

 後ろ姿しかわからないけど、肩甲骨まで伸びた髪に使い古したファー付きのロングジャケットを着ている。

 身長は僕より高い。

 一七〇センチくらいかな?

 その背後にはプルプルと震える、僕よりちょっと年上の男の人。

 多分料理人。手で解る。勇んできたのに拒絶されたって泣きそうな顔してる。可哀想。

 それはそうとあの女性、こんなにブーイング受けてどっしり構えてるなんて。余程ハートが強いんだろうな。

 一体どんな人なんだろう。

 佇まいは完全にマフィア然としているし、口調も姉御肌。

 低いけど優しそうな、でも切れたナイフのような鋭さの声音。

 興味本位で背後から近づいて――ハッと気づいた。

「どうしたんでぇ大将?」

「この人、めっちゃくちゃ強いかも」

「えっ!?」

 近づいて解る強者のオーラというか。

 腰に吊ってる幅広の剣の柄に、右腕を自然に預けているけど……間合いに入った途端、剣が伸びてきそうだ。

 これ以上近づいたら危ない。

 ……なーんて妄想していたら、


「おや。骨のあるヤツがかかってくるかと思ったんだけどねえ」


 と言って、女性が振り向いた。

 ……うわ、この人めっちゃ美人!

 妙齢、という枕言葉を付けるのは失礼かもしれないけど、それがピッタリ合う。

 胸もメチャクチャデカくて、白シャツの胸元がはだけて谷間が見えてる。

 体つきもグラマラスで、甘い声をかけられたら頬が緩んでしまいそう。

 そして目が凄い。

 ややつり目で大きい。

 茶色の瞳はやたらとギラギラしているけど、(すさ)んだ景色も見たような(よど)みも見える。

「なんだいこの(まり)みたいな男は。気配はもっと大きいヤツだと思ったんだけどねぇ」

「あ、戻ってきたニャ! ケントも言ってやってニャ! ここはケントの厨房だって! 今更料理人なんてお呼びじゃないニャって!」

 もちろんこここでミーアのお望み通り、



「……ギルドマスターさん、はるばる王都からお越し頂いたところ悪いけど、ここはもう僕の場所でね」



 なーんて言えればいいんだけど。

 初めての人、特にこうオラオラしてそうな人にはつい――



「いやその、僕の厨房ってワケでは……」



 と、目を泳がせて日和(ひよ)ってしまう。

 あまりにも情けなかったのか、奥でミーアたちが思いっきりずっこけていた。

 期待に()えず申し訳ない。

 こわいモンはこわいんだ。

「アンタがこいつらの言うケントかい? 記憶喪失の武術家って聞いてたけど。なんだいオークみたいな体つきじゃあないか」

「よく言われますけど、これでも人間です……」

「人間!? いやぁ珍しいモン見たねえ。こんなに丸々太ってるなんざ、上流階級でもそうはいないが――はて、なんでそんなに(した)われてるんだい?」

「いや(した)われているというか、仲良くさせて頂いてて」

 自分でも何でこんなに敬語になってるかわかんない。

 だって自分の領域にズケズケ入ってくるんだもの。

 こっちは混乱するっての。

謙遜(けんそん)しなくていいよ。さっきっからアンタの名前ばっかり出てきやがる。余程の実力者なんだろうさ」

「いや実力者って程では……」

 という僕の言葉を(さえぎ)って、ずずいと前に出てくるのはむさ苦しい三人。


「お目が高いなギルドマスターさんよ。大将はソロでコボルトの群れを倒しちまうくらいだぜ!」

「さっきもキラーベアを一人で倒した。素手でだ。俺の防具着てくれるなんざ、ドワーフとして鼻がたけえや!」

「勇士ケントは間違いなく剛の者。エルフの里にいたなら、吟遊詩人が(たた)えるほどにね」


 やめろおおおおおここで株上げんな!!

 三人ともドヤァと胸張ってるけど、僕的には逆効果だからね!

 ほら見てよ!

 ギルドマスターさん「へぇ……」ってめっちゃ興味持ったじゃん!

 こういう人とお関わりしたくないのに!

 絶対ろくな事起きないからね!?

「腕っ節は強く、料理もできると。こっちはウチのギルドにこそ料理人が欲しいくらいなのにねえ」

「それは、その……ご愁傷様(しゅうしょうさま)です?」

「喧嘩売ってんのかいアンタ。まあいい。ケントとやら。ちっとツラ見せな」

 ギルドマスターさんはズカズカと近寄って、僕に思いっきり顔を近づけてくる。


 ぬぅああああ!

 この美人だチックショー!


 てか何歳だこの人。

 思ったより若く見えるけど、雰囲気が歴戦と言うか熟練というか。

 (しばら)くギルドマスターさんは僕をジロジロ見ていると、彼女の目に小さな光が灯った。ポワッと燐光みたいなのを上げてる。魔法かな? それとも何かのスキルかな?

 と、思ったその時。ギルドマスターさんがいきなり目を見開いた。

「これは……!」

 え、僕また何かやっちゃいました?

 ……みたいにオロオロしていると、彼女はニマニマして僕に耳打ちしてくる。


「どおりで。アンタは世界樹に呼ばれた別の世界の人間。異世界から呼ばれた魂――()()()か」


 心臓が、跳ね上がった。

ば れ た !

もしかしてこれはスローライフの終焉か!?

どうするケント!


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[一言] 事情知ってる人キター
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