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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第三章 王都? 何それ美味しいの!?
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第11話 熊を倒すたった一つの冴えたやり方

「グォアアアアアアアア!」


 ――悲鳴が森に響き渡った。

 僕が投げ飛ばした熊が、()け反って断末魔(だんまつま)を上げている。

 岩に思いっきりぶん投げてやったからかなり痛いはず。

 巨大とはいえ、動物相手にはちょっと心が痛んだけどね。

 熊は仰向けのまま震えていると、命が尽きたのかダランと脱力。

 やがて体が消え、代わりに現れたのは魔物石だった。

 この世界で魔に魅入られた動物、即ちモンスターが落とす(よど)んだ魔力の結晶。

 冒険者ギルドでは換金アイテムとして取引できる、ある意味お金みたいなものだった。


「すげえ……大将、キラーベアを素手で倒しちまったぜ」


 後ろでポカーンと見ていた筋肉モリモリの戦士、ジェイクさんがあんぐりと口を開けていた。

「今の技は? 背中に回って思いっきり引き抜いていやしたが」

「ジャーマン・スープレックスって言ってね。人には使っちゃいけない技だよ」

 そう言うと、ジェイクさんはブルリと震えていた。

 この世界に来てから何度かモンスターと戦ったけれど、まさかプロレス技まで使うとは思わなかった。

 プロレス技だってちゃんとした武術だと僕は思う。

 もちろんプロレス自体がショー的な意味もあるし、無駄に派手なものもある。

 しかし中には殺傷力抜群のものがあって、受け身を取らなければ命を奪うものだってある。

 良い子は真似してはいけない。

 プロレスはプロ同士だからできるんだよね。

 熊に使っていいのかと言われたら……う、うーん……モンスター化しているので、セーフということで。

 この世界、悪い魔力に充てられてモンスター化すると何でも超攻撃的になる。

 これは人間にも当てはまるそうで、強盗とか殺人とかを繰り返していると、そのうち目が真っ赤になるそうだ。

 逆にモンスターかな? と思いきや友好的なものもいてちゃんと見定めないといけない。

 今の熊は紛れもなくモンスター。手配書も回ってたしネ。

「豪快にいったなァ旦那。それで、どうだいその防具はよ」

 斧を肩に担いで、のっしのっしと歩いてきたのはジンさんだった。

 僕の着ている防具を()めるように見て、うんうんと納得したように頷いていた

「とっても動きやすいよ。僕の戦い方にピッタリだ」

「前衛職なのに魔術師のローブってのが変だがな。旦那にゃこれの方がいいだろ」

 ガッハッハと笑うジンさん。

 相変わらず豪快だなこの人。

 最初こそドワーフは酒飲みでヒゲもじゃでガサツで野蛮な人だな〜と思っていた。

 でも、一度道具を持たせたならば。僕の世界にあった伝承(でんしょう)の通り、何かを作らせれば最強の種族だった。



 ――そうだ、最初に言っておこう。

 冒険者になってはや二ヶ月が経ちました。

 時間が経つのって早いね!



 昼間は冒険者達のクエストのお手伝い。

 夜はギルドで臨時コックを務める日々。

 忙しいけど、生まれて初めて充実していた。

 体力値Sだから疲れ知らずだし、一晩寝れば全快。

 ただ体型を維持しないと弱くなるから、しっかり食べないといけないのが逆に大変だ。

 そんな感じで食と住は確保できたのだけれども、問題が一つあった。

 それは僕のような体型の人が必ず頭を痛める衣服だ。流石に学生服のままで戦うのは無理があった。

 お金はコボルトの(オサ)が落とした魔物石のお陰でそこそこあったんだけど、問題はサイズが無かったこと。

 ドワーフより大きな体の僕に合うサイズは、サーラの村の武具商店においてなかった。かなしい。

 仕方なく学生服の可能性を信じて、そのままゴブリンやらハーピーやらと戦っていたけれど……。

 ある日蹴りを放った瞬間、お尻がビリッと裂けました。

 嫌な、事件だったね……依頼のゴブリンはちゃんと倒したけど。

 しかし。捨てる神あれば拾う神あり。

 ギルドでひとしきり皆に笑われた後、ドワーフのジンさんがサーラの村の鍛冶師やら服飾師やらを集めて作ってくれた。ウワサによると彼、元はそこそこ名の知れた名工だったらしい。

 僕は「そこまでしなくても」と遠慮したのだけれども、毎日作ってくれる料理の礼だと言ってみんなノリノリだった。うれしい。

 そうして出来上がったのがこの特注の防具です。

 今日はお試しに何かクエストに出ようと思ったら、熊退治に参加させられていました。

 試運転にはハードすぎませんかね。倒したからいいけどさ。

「まるでジェダイの騎士だなこれ」

「ジェダ……何だって?」

「何でもない。僕の生まれたところで勇者が来ている服ってこと」

 何となくはぐらかしたけど、ジンさんは「勇者、かぁ」と妙に感慨深いような表情をしていた。

 ジンさん達がこれを持ってきた時はビックリした。文字通り腰を抜かした。

 だって手渡されたのが、道着と小袖が混ざったような服だったのだから。

 下もまんま袴。羽織るのは青く滑らかな生地のローブだった。

 本来魔術師用の防具なんだけど、僕に着せられるとしたらこれしか無いらしい。

 でもドワーフお手製の防具というだけあって、かなり頑丈みたいだ。

籠手(こて)はどうでえ。ワシの力作だ」

「薄い鉄鋼なのに手袋みたいに付け心地がいい。殴った時も全然衝撃がない」

「そうだろうそうだろう。アインツが持ってたミスリル鋼でできてるからな」

「ドワーフにミスリル鋼を渡すのは種族的に(しゃく)でしたがね。他ならぬ勇士のためですから」

 そう言って、辺りを警戒していたアインツさんがニッコリと笑う。

 彼らを見ているとそうは思わないけど、エルフとドワーフって本来仲が悪いんだって。ちょっと覚えておこう。

「全体的にアラクネの糸を編み込んであるから槍も通さねえぜ。ローブに至ってはサンダーリザードの革を使ってる。雷が落ちても生き残れる!」

 待って全然わかんない。

 アラクネはかろうじてわかる。

 蜘蛛のモンスター……だよね?

 けどサンダーリザードって何だよ。

 電気鰻のトカゲ版か?

 着ているローブのサイズからいってコモドオオトカゲくらいありそうだけど。

 この世界ってそんなのばっかいるの?

 改めて思うとこわい。

「まさに拳の賢者(ナックル・サージ)ってところか。記憶が戻ったらどんだけ強いんだろうなぁ大将はよ」

 記憶?

 ……と、首を傾げそうになったけど。慌てて首を振った。

 咄嗟(とっさ)についた嘘の設定ってよく忘れちゃうよね。

 彼らはとても親しんでくれるからこそ、罪悪感が心をチクチクする。

 これもうそろそろ限界かな、なんて思ってしまったりする毎日です。

「そ、そうだねえ。それこそ雷に打たれないと戻らないかなーってあはははは」

 でも誤魔化さないと。

 めっちゃ強いスキル持ってますなんて言ったらそれこそ大事になりそうだし。

 名前こそ【わがままボディ】とふざけているけど、この体を維持している限り熊すら簡単に投げ飛ばす力を使える。

 知識だけだった武術も体現できるし、最近なんか相手の行動が手に取るように予想できる。

 そもそもエキゾチックスキルと(めい)打たれたこれは、英雄の資格とすら言われるモノらしい。

 英雄、ねえ。

 僕、そんな器じゃないのに。

 せいぜい身の回りとか、ご近所トラブルを解決できる程度でいいのにな。

 だからしっかりと隠さないと。

 僕の平穏なスローライフの為に、だ。

「雷かぁ。おい、ここに雷の精霊(サンダー・エレメント)っていたっけか?」

 げ。

 いるのそういうの!?

因みにこの世界には火の精霊、水の精霊、土の精霊などバッチリいます。

素手は届くのだろうか……?


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― 新着の感想 ―
[一言] ハーピーもいるのか、世界観によっては美人な亜人系もいるけどこの世界は同なのかな?
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