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僕の性日記Ⅱ  作者: 水野 流
Ⅵ章 祭の後
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おばさんの追及


その日は、ずっと授業に身が入らず、『おばさんを、どう言ってごまかそう』と、そればかりを考えていた。


授業が終わって、まどかのクラスに行き、まどかの帰り支度を待った。


その間も、ずっと、おばさんへの言い訳を考え続けていた。

もうすでに、『付き合ってない』という、僕の言葉だけでは納得しそうにない、朝の雰囲気だった。


そんな、僕の心配をよそに、まどかは、嬉しそうに「お待たせ!」と言って、僕のところに来た。

いつものように、僕たちは、二人で帰宅の途についた。



帰る間中、まどかは僕に、なぜ自分の母親に僕たちが付き合っていることを言ってはいけないのかと訊ねた。


僕は、『お前に、俺のおちんちんを切り落とされるからだ』という訳にもいかず、「とにかく、ウチの母や姉がうるさくなるから、絶対にダメ」とだけ答えた。


「もう、お前と、自由に会うことができなくなってもいいのか?」とも言った。


まどかは「それは、ヤダ!」と首を振った。



僕たちが、肩を寄せ合ったまま、寄り道の河原の公園に曲がって、いつも二人がしばらく話し込む公園のベンチを見ると、一人の女性が座って、こちらを見ているのに気付いた。


まどかの母親だった。


僕たちは、まずいと思って、即座にお互いがお互いから離れた。



僕たちは、逃げる訳にもいかず、そのまま、おばさんのいるベンチの方に向かって歩いた。

僕も、まどかも、先ほどまでのはしゃいだ様子を封印し、黙って下を向いていた。


おばさんが、「おかえり」と言って、先に僕たちに声をかけて来た。



僕は、その声で初めておばさんに気付いた風に「あっ! こんにちは」と言った。


「ただいま」まどかも、下を向いたまま、小さな声で言った。



「いつも二人で、帰ってるの?」

おばさんは、僕たちに、そう訊ねると、「まあ、二人とも掛て……」と僕たちにベンチに座るよう促した。



おばさん、まどか、僕の順で、そのベンチに座った。僕とまどかは、少し間を開けて座った。



おばさんは、おもむろに口を開いた。


「あなたたちが、いつも、仲良さそうに肩を並べて登下校してるのを見たっていう人がいて……ついこの前も、二人で駆けて行くのを見たって……」


「……」僕たちは、無言だった。


「まどかちゃん、ママが聞いた話は本当なの? あなた、ケンジ君と付き合ってるの?」おばさんは、そうまどかに問いかけた。


まどかは、黙っていた。


そんなまどかに代わって、僕が「僕たち、付き合ってなんかいません!」と言うと、下を向いていたまどかが顔を上げて、僕の方を見た。



「ケンジ君、あなたに聞いてるんじゃないの。私は、まどかちゃんに聞いてるのよ」おばさんのその言葉は、優しい物言いではあったが、なんともいえぬ威圧感であった。



そんなおばさんの言葉に、「まどかね、ケンジ君のことは好きだよ」と言った。

「好きなのに、なぜ、ケンジ君と付き合っちゃいけないの?」


そのまどかの言葉を聞いたとたん、僕は『あちゃー』と思って、思わず顔を伏せた。

まどかに切り落とされるかもしれない、僕のおちんちんは恐怖で皮を冠り、小さくなって隠れた。


おばさんは、そのまどかの開き直りともとれる問いかけに、少し戸惑いながらも「ケンジ君がダメって言う訳じゃなくって、あなたは、まだ高校生なんだから、男の子と交際なんかしてる暇ないでしょ? 今は、人生で、一番大事な時なんだから、男の子なんかにうつつを抜かしてたらダメなの……」おばさんは、なんとか、まどかの奇襲に応戦した。


「私、勉強してるじゃん、それで、余裕があったら、好きな男子と付き合ったっていいじゃん」まどかは、そう反論した。


「でもね、まどかちゃん……女性は、いつも受け身なの……恋愛で、不利益をこうむるのはいつも女性なのよ……ママは、まどかちゃんにそんな辛い思いはさせたくないの……」

おばさんは、感情に訴える作戦に出た。


そんな、おばさんの言葉を聞いて、さすがに、つい先週あった出来事を思い出したのか、まどかは、次の言葉が出なかった。


しばらく、沈黙が続いた。



やっと、沈黙を破ったまどかは「でもね……」

「ケンジ君、私じゃなくて、別に好きな女子がいるの」と、寂しそうな声で言った。


おばさんは、その言葉を聞いて「えっ!?」という驚きの声を出した。


一瞬、奈落の底にけり落されそうになっていた僕も、その言葉に、思わずまどかの方を見た。



「それなら、なぜ、二人で仲良さそうに帰ってるの?」

おばさんは、慌てて、まどかに問いかけた。


「だって、その女子、彼氏がいるんだもん……可哀そうだけど、ケンジ君の片思い。だから、私が、そんな可哀そうなケンジ君を幼馴染のよしみで慰めてあげてるの……学校の行き帰りで首吊っちゃわないように……」まどかは、ふざけて笑いながらそう言った。


僕は、なんとなくまどかの言っている、その想像上の僕の彼女は、『夏未』のような気がした。



おばさんは、まどかのその答えに理解ができず「だって、ケンジ君、付き合ってる彼女がいるって……」と、つい、口走った。


それを聞いたまどかは「なんで、そんなこと、ママが知ってるの?」と、すかさず、おばさんに詰め寄った。


おばさんは、その時初めて、自分の失言に気付き「いえ……それは……」と口ごもった。



僕はいずれにしても、血の雨が降りそうなその場を、早く逃げ出したい気分で一杯だった。

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