繫華街にて
その日、汽車に乗ってわざわざ県庁所在地にまで来た目的が無くなってしまった僕たちは、とりあえず、市内電車に乗ってその町の繁華街へ行った。
少し早めの昼食を喫茶店でとり、『まだ少し頭とお腹が痛い』というまどかがゆっくりできるところということで、映画館に入ることにした。
僕が、中学の時に好きだった『ブルース・リー』の『ドラゴン危機一髪!』と『死亡遊戯』の二本立てをやってる映画館があったので、僕たちは、そこに入ることにした。
カンフー映画にまったく興味のなかったまどかは、部屋が暗くなると同時に、僕の横ですやすやと眠り始めた。
そして、そのまま、映画二本が終わるまでの間、僕の手を握ったまま、ずっと眠り続けた。
僕は、そんなまどかの可愛い寝顔を横目で見ながら「まさに、『まどかちゃん危機一髪!』だったな」と思った。
映画が終わって、部屋が明るくなると、まどかは「はぁ~あ」と大きく伸びをして目を覚ました。
そして、自分のお腹をなでると、「お手洗い行くから待ってて」と言って、トイレに行った。
僕が出口付近で待っていると、まどかは、トイレから嬉しそうな顔で戻って来て、「夢じゃなかったんだ」と僕の腕にしがみついた。
眠ったおかげで、気分の悪いのも少し回復したようだった。
帰りの汽車の中では、僕がまどかの肩に頭をのせ眠った。
まどかは、その間ずっと、海水浴の帰りのバスでしてくれたように、僕の頭をなで続けてくれた。
一難去って、僕は本当に幸せな気分に浸っていた。ただ、『一難去ってまた一難』という言葉があるように、今から思えば、この頃から、少しずつ『幸せの歯車』がズレ始めていたように思う。




