汽車に乗って
僕たちは、息を切らして、空いている席に二人並んで座った。
まどかは、お腹を押さえ、苦しそうだった。
僕は、そんなまどかの様子を心配し「大丈夫か?」と声をかけ、背中をさすった。
まどかは、お腹を押さえて前かがみになったまま、「大丈夫」と言って、僕に背中をさすられながら、じっとしていた。
そのまま、ずっとまどかの背中をさすり続けていると、青い顔をして背中を起こし、そして「少し汽車に酔ったみたい……お手洗いに行ってくる」と言って、立ち上がった。
「一緒に行ってやろうか?」まどかを心配した僕は、トイレまで、まどかを連れて行こうとしたが、まどかは「大丈夫だから、ケンジ君は座ってて」と言って、揺れる汽車の通路を、よろけながら前に歩いて行った。
そんなまどかの様子を僕は心配で、ドアの向こうに消えるまで、ずっと見ていた。
まどかは、トイレに行ったまま、なかなか戻って来なかった。
僕が、心配になり、様子を見に行こうとした時、通路の先のドアが開き、まどかが戻って来た。
汽車の揺れに、身体を取られながら、右に行ったり左に行ったりしながら、僕のところまで帰って来た。
僕は心配して「大丈夫か?」と訊ねた。
まどかは、僕の隣に腰かけると「うん、大丈夫……それより……ゴメン!」と言って、僕に頭を下げた。
今日、僕が友達との映画をキャンセルして、まどかに連れ添ったことを、まだ気にしているのかと思い、「だから、それは、俺のせいで……」と言いかけた、僕の言葉をさえぎり、再度「本当に、ごめんなさい」と謝った。
「スズメさんが、助けてくれたの」……僕には、意味が分からなかった。
「始まったの……」
「……えっ!?」
『なにが?』と聞き返すまでもなく、まどかが言った『始まった』ものが何かは、すぐに想像がついた。
「私、生理になった……」ほっとした表情で、まどかが言った。
僕は、その言葉を聞いて「やった~!」と言って、椅子から飛び上がった。
僕は、まどかの手を取り「やった~!」「やった~!」と何度もその場で、小躍りした。
(新婚夫婦と逆のパターンである)
まどかも、僕の手を握ったまま上下に振り「よかった~」「本当によかった~」と涙ぐんだ。
周りの乗客たちが、そんな僕たちを、『何事か?』と言う目で、不思議そうに見ていた。




