駅への道
二日後、僕は「友達と映画に行く」と言って、家を出た。一緒に映画を観に行く約束をしていた友達には、「急用ができた」と言って、断っていた。
まどかと、待ち合わせをしていた河原の公園に行くと、すでにまどかがベンチに腰かけていた。
僕は「待った?」と言って、まどかの隣に腰かけた。
「うぅうん」まどかは、首を振った。
やはり今日のことが不安だったのか、昨夜よく眠れなかったようで、目を真っ赤にはらし、「少し頭が痛い」と言った。
僕は、そんなまどかに「大丈夫?」と声をかけた。
「ごめんね……ケンジ君、今日本当は映画行くはずだったんでしょ?それなのに、まどかのこんなことにつき合わせて……」
「何言ってるんだよ、もともとは、俺が悪いんじゃないか」
自分が、一番つらいはずなのに、そんな時にも、僕を気遣うまどかがいじらしくなり、僕の涙腺が少し緩んだ。そして、その涙をまどかに知られぬよう、上を向いてまどかの肩を抱くと、そっとベンチから立ち上がった。
僕たちが、駅に向かおうとした時、堤防の下の草むらに一匹のカラスがいるのが見えた。
僕たちが、近づくと、カラスは『バタバタバタ』と飛び去った。
そこには、カラスが啄ばもうとしていた小さなスズメのヒナの死骸があった。
それを見つけたまどかは、そこに駆け寄り、ヒナの死骸を両手の上に拾い上げた。
その死骸は、まだ新しく、腐敗は進んでいなかったが、「そんなのさわると汚いよ」とまどかに声をかけた。
まどかは、先ほどと同じように「うぅうん」と首を横に振ると、その死骸を両手にのせたまま、しばらくじっとそのヒナを見つめていた。
「ケンジ君、このスズメさん、埋めてあげよう」そう言うと、草むらの中の、適当な場所を探し始めた。
「そんなことしてると、汽車に乗り遅れるよ」
そんな僕の言葉は無視をして、「ここがいい」と言って、桜の木の根っこのところを、落ちていた小さな木の板で掘り始めた。
しかたなく、僕も、まどかが土を掘るのを手伝った。
穴を掘って、その小さな死骸を穴に埋めると、まどかは、その上にそこを掘るのに使った小さな木の板きれを立て、両手を合わせて拝んだ。僕も、隣で一緒に手を合わせた。
「今度、産まれてくるときは、ぜったい幸せになるんだよ……」まどかが、口に出して言った言葉が、もしかすると、自分のお腹に宿っているかもしれない小さな命に向かっての言葉のようにも聞こえ、とてもやるせない気持ちになった。
僕たちは、汽車の時間に遅れそうで、駅までの道を、二人で全力疾走した。
すでに、汽車はホームに停まっており、僕たちは急いで切符を買うと、汽車の中に走り込んだ。出発の時間を少し過ぎていたが、汽車は僕たちが乗り込むのを待って、ドアを閉めた。




