高校生の現実
その日は、いつものように裸になって抱き合うなどという気分には、二人とも到底なれず、もし本当に妊娠していた場合のことについて、話し合った。
「まどか……もしさ、妊娠してたら、どうするつもり?」僕は、単刀直入に、そうまどかに訊ねた。
「どうするって……?」まどかは、無責任な僕の問いかけに、僕の顔を見ると、黙り込んだ。
「ケンジ君は、どうして欲しいの?」逆に、まどかが、その無責任な僕に問い直してきた。
「どうして欲しいって……そりゃあ、俺たち、まだ高校生だから……」その先は、言えなかった。
『産め! 俺が高校辞めて働いて、お前と子供を養うから』そう言えば、格好もよかったのかもしれない。
しかし、そう、出来そうにもないことを軽々しく言う方が、余計に無責任な気がして、それも言えなかった。
「そうだよね……私たち、高校生だよね……」まどかは、下を向いてそれだけ言うと、自分のお腹をさすりながら、またしても嗚咽した。
『ポタポタ』と畳の上に、まどかの涙が落ちた。
僕は、そんなまどかがいたたまれなくなり、そっと自分の胸に抱き寄せた。
そのとたん、まどかは僕の胸に自分の顔を押し付け、そして堰を切ったように、先ほどにも増して大泣きをした。
僕の着ていたTシャツが、またすぐにまどかの涙で、びしょびしょになった。
まどかは、僕の胸でひとしきり泣くと、「もう、大丈夫……」と力なく言って、僕の胸から顔を外した。
「私、このことは、ママには内緒にしておく」
まどかの母親の前で、罵倒されながら土下座をして許しを請うことを想像していた僕は、その言葉に、少し『ホッ』とした半面、『僕たちだけで何とかできるのか?』と不安になった。
「内緒にするって……お母さんたちに、正直に話して協力してもらわないと、俺たちだけで、なんともできなだろ?」自分で自由にできる大金を持たない僕は、自分の失敗に親たちを巻き込むことを考えていた。
そんな僕の問いかけに「だって、こんなことママに言ったら、ママびっくりして気絶しちゃう……絶対に、ダメ!」
「『ダメ!』って言っても……」
「大丈夫、お金ならさっき言った通帳にいくらかは入ってるから……それに、夏未ちゃんも、もし、本当にそんなことになったら、協力してくれるって言ってくれてるし……私たちだけで、何とかしよう……」
僕は、一抹の不安を残したまま、とりあえず、まどかの言うとおりにすることにした。




