花火大会
その夜は、8時から9時半までの予定で、花火大会が予定されていたため、僕とまどかは、待ち合わせの場所と時間だけを決めて、一旦家に帰った。
僕は、晩飯とお風呂を済ませると、先日、薬屋の前の自販機で買ったコンドーム一個とティッシュペーパーの塊をズボンのポケットに入れて、家を出た。
僕は、はなから花火など観賞する気はなかった。
僕が、待ち合わせ場所の河原の公園のブランコのところに行くと、まだ、まどかはそこに来ていなかった。
僕が、ブランコに腰掛け待っていると、「お待たせ……待った?」と言う声が後ろから聞こえた。
振り向くと、そこには浴衣を着たまどかが、息を切らせて立っていた。
長い髪を上にあげて結び、大人っぽくなったまどかの浴衣姿にしばし見とれた。
僕は、「今来たところ」と言うと、まどかの手を取り、花火の見える堤防の方に歩いて行った。
堤防の上は、もう、花火を見に来た人で、いっぱいだった。
僕たちは、座って見る場所がないかと辺りをうろうろと歩き回ったが、すでに、花火の見える座れる場所は、埋まっていた。
「いい場所、ないね」まどかが、僕にそう言った時、『ヒュ~ドン!』という大きな音が背中で鳴った。花火大会始まりの合図だった。そこにいた人みんなが「うわ~」と言って拍手した。
僕たちは、振り返り、そこで立ったまま、10分ほど花火を観賞したあと、僕がまどかの手を引き「別の場所へ行こう」と言って、その場所を移動した。
そこは、堤防の上ではあったが、花火が上がる場所の反対側で、そこからは、花火の上がる音とそれを見た人たちの歓声しか聞こえなかった。
当然、人は誰もいなかった。
「ケンジ君、ここからじゃ花火見えないよ」まどかが、不服そうに言った。
「花火なんて、音だけ楽しめばいいじゃん。俺は、誰もいないところで、まどかとゆっくり愛を語り合いたい……」
キザなことを言ったが、『語り合う』気はあまりなく、『確かめ合いたい』というのが本音だった。
まどかは、そんな僕の言葉に、「仕方ないか……来るの遅かったしね」と言って、そこに座った。
僕も、まどかの横に腰掛けた。
「ヒュ~ド~ン!」という花火の音だけは、遠くで聞こえていた。
そんな音を聞きながら「まどか……浴衣似合ってるよ……かわいいね」と、お約束の愛の言葉をまどかに言った。
まどかは、その僕の言葉を聞いて、嬉しそうに「ありがとう」とほほ笑んだ。
しかし、その後は二人とも緊張し、無口になった。
僕が、無口になったのは、ポケットに入れたグッズを使うタイミングを一生懸命探していたこともあった。
そんな、沈黙を嫌ってか、まどかが今日の昼のことを話し始めた。
「夏未ちゃん、彼氏ができたっていうのは聞いていたけど、それが、まさか内田君だったとはね。びっくりしたね……?」
そう言って、笑った。
僕は、このまま話が盛り上がってタイミングを逸してしまうのもまずいと思い、そのまどかの話には乗らず、まどかの肩に手を回すと、まどかの顔を引き寄せ、口づけをせがんだ。
「ダメだよ、ケンジ君、こんなところで……人に見られちゃうよ」
まどかは、そう言って、僕との口づけを拒んだ。
「みんな、花火見てるから、こんなところに誰も来ないって」僕は、半ば強引にまどかにキスをした。
まどかも、目を閉じ、じっとしていた。
僕は、そのまま、まどかの浴衣の合わせの部分から自分の腕を差し込み、ブラジャーの上から胸を触った。
まどかは、そんな僕の行動に驚き、「ダメだって、ケンジ君、人が来たらどうするの」と言って、僕のいたずらな手を抑えた。
僕は、そんなまどかの言葉に「わかった、じゃあ、あそこに行こう」そう言って、堤防の下にあった、小さな稲荷神社のお社を指さした。
まどかは、そんな僕の言葉に驚いて「エッ!?バチが当たっちゃうよ」と言った。
僕は、そんな嫌がるまどかの手を取り、お社の中に入った。




