幸せな時間
「まどか、もう起きる。待ってね、すぐにご飯作るから……」
そう言って、白い裸体を起こし、床に落ちた下着と服を身に着けると「出来たら呼ぶから、ケンジ君は、まだ、横になってて」と言って、部屋を出て行った。
僕は、言われたまま、本棚にあった女性雑誌を読みながら、ベッドに横になっていたが、やはり、まどかのそばに行きたくなり、ベッドから起き上がると自分の服を着て、台所に行った。
まどかは、エプロンをして、一生懸命、料理の真っ最中だった。
起きてきた僕に気づくと、顔をこちらに向けキスをねだった。
僕は、そんなまどかに軽く口づけをし、「何作ってるの?」と訊ねた。
まどかは、そんな僕の質問に「ミート・スパゲティー」と答えた。
ウチの母は、他の友達の母親よりも、少し歳をとっており、ウチのおかずは、煮物や煮魚と言った、昔ながらの和食中心だったので、その、横文字のメニューに感激した。
それまで、スパゲティーを外で食べることはあっても、定番のケチャップ味のイタリアン・スパだけだったので、初めて食べるそのスパゲティーにワクワクした。
「お待たせ」と言って、野菜のサラダと、僕が初めて食べるまどかの手料理であるミート・スパゲティーが出て来た。
僕とまどかはお互いに向かい合わせに座り、「いただきます」と言って、両手を合わせてから食べ始めた。
「ハチミツも入れたんだけど、少し甘かったかな?」まどかは、僕に訊ねた。
その、甘さが、僕にとっては、絶妙の甘さ加減で、一瞬で、初めて食べるミート・スパゲティーの虜になってしまった。
「甘すぎないよ……すごくおいしい……」その僕の感想に「よかった」と言って、まどかはほほ笑んだ。
あまりのおいしさに、僕はあっという間にそのスパゲティーを平らげると、「まだ、あるよ」と言うまどかの言葉に、お代わりをした。
そんな僕に、まどかは、とても嬉しそうだったし、僕も、新婚生活を送っているようで、とても幸せだった。
二人が、食べ終わると、まどかは、急いで、お風呂を沸かしに行った。
僕は、その間に、何もすることがなく、二人が食べ終わった食器を流し台に持って行き、洗い始めた。
戻って来たまどかが、それを見て、慌てて「私がやるから、旦那様は座ってて」と言って、僕を、食卓の椅子に座らせた。
エプロンをして、僕のために、一生懸命洗い物をするまどかの後姿を見ていると、とても、可愛く思え、まどかの後ろに行って、後ろから、そっと抱きしめた。
まどかは、そんな僕の行動に、少し驚き、「そんなことしたら、洗えないじゃん……」と、照れくさそうに笑った。二人にとっての、柔らかく、幸せな時間が流れていた。
「もう、お風呂、沸いたと思うから、ケンジ君、先に入って」とまどかが言った。
僕は「一緒に入ろうよ~」とまどかを誘った。
しかし、まどかは「ダメです!」ときっぱりと拒否した。
僕は、仕方なく、先に入り、「出たよ」と言って、パンツとTシャツ姿で台所に戻った。
まどかは、そんな、僕の格好を見て「ズボン、掃かないの?」と聞いた。
僕は、「どうせ、後で脱ぐもん」と答えた。
まどかは、その僕の答えに、下を向いて『ポッ』と頬を赤らめた。




