5月の連休
5月になり、土、日、月と続く5月の三連休が始まった。
僕は、家で母のつくった昼ご飯を済ますと、宿泊のバッグを持って、家を出た。
家を出るときに、母が心配し「相手のお家に迷惑のかからんようにするんよ」と言って、近くのお菓子屋で買ってきていた、小さな菓子箱を一つ持たせてくれた。
奥で、姉が「友達んとこって、彼女のところじゃないの……?」と笑った。
姉も、彼氏とのデートの準備中であった。
母が、そんな姉の言葉に「そうなん?」と言って、僕の顔を、心配そうにのぞき込んだ。
僕は、慌てて「違うよ、本当に丸山のところだよ……」と言った。
さすがに、二人とも、今日僕がお泊りする家が、自分のすぐ目の前の家だとは思わなかったに違いない。
僕は、これ以上、姉にいらぬことを言われまいと「それじゃ、行ってきます」と言って、急いで家を出た。
外に出ると、あいにくの雨だった。走っていけば、ほとんど濡れない距離ではあったが、僕は、もう一度玄関に入り傘を取って家を出た。
そして、辺りに人のいないことを確認して、まどかの家の、押しなれた玄関のチャイムのボタンを押した。
しばらくすると、中から、まどかが出てきた。
まどかは、うっすらと化粧をし、しかも、お風呂を出たばかりのようないい香りがした。
ますます、美しかった。そして、その香りに、まどかの決心を改めて感じた。
まどかは、嬉しそうに「早く、中に入って」と、僕を家の中に招き入れた。
「お昼ご飯は?」
「家で食べてきた」
僕の答えに、まどかは「ええ?そうなの?」と少しガッカリした表情で言った。
台所を見ると、切りかけの野菜がまな板の上に乗っていた。
それを見た僕は「夕飯に使えばいいじゃん」と言った。
まどかは、その僕の言葉に「そうだよね……夜も一緒にいるんだよね……」と、今度は嬉しそうに言った。
「どうする?これから……どこかに、遊びに行く?」とまどかが聞いた。
僕は「外は雨降ってるし、家の中にいよう」と答えた。
その、僕の言葉に「じゃあ、まどかの部屋に来る?」と言って、僕を自分の部屋に招き入れた。
もうすでに、何度もこの家には訪れてはいたが、その部屋に入るのは、初めてであった。
中には、“ピンクレディー”や“新御三家”のポスターが貼ってあり、参考書の入った本棚には、参考書に紛れ、“平凡”や“明星”といったアイドル誌や“ノンノ”などのファッション誌が立てられている、ごく普通の女の子の部屋であった。
その壁際に、まどかの勉強机とシングルベッドが置かれていた。
部屋に置かれている物は、みな、きれいに整頓されていた。
僕は、その、まどかのベッドに腰を掛けた。
まどかも、その僕の横に腰を掛けた。
「なんか、普通で、つまらない部屋でしょ?」まどかは、そう言ってぎこちなく笑った。
僕は、そんなまどかの問いかけには答えず、肩に自分の腕を回すと、そっと顔を近づけ、口づけをした。
まどかは、黙って目を瞑り、その僕の口づけを受けた。
でも、やはりそのまどかの唇は固く、明らかにいつもより緊張していた。
薄く塗られた、おばさんと同じ口紅の味がした。
まどかは、僕の唇から自分の唇をはずすと、「そうだ……ジュースか何か持ってこなきゃ……」と言って、ベッドを立ち上がろうとした。
僕は、そんなまどかの腕をとり、「いらない……」と言って、まどかを、そのままベッドに押し倒した。
まどかは、驚いて「もう……?」と言った。
僕は「そう……もう……」とうなずき、まどかの身体に覆いかぶさると、改めて、まどかにキスをした。




