約束を破った日
僕は、その後のことが気になり、じっと二人の様子をそこから見ていた。
まどかが、松下君のところに行くと、彼は、何かをまどかに話しかけ、そして、まどかの手を取ると、まどかの前にひざまずいた。
まどかは、その手を放して自分の後ろに引っこめると、何か、彼に向ってしゃべっていた。
それを聞いた松下君は、立ち上がり、自分のズボンの汚れを手で払うと、まどかに背を向け、片手をあげてこちらに向かってきた。
松下君は、僕の前まで来ると「見事に、振られたよ……彼女、好きな男がいるんだとさ……」
僕が、その話を『ホッ』としながら聞いていると、
「何してるんだよ、早く彼女のところに行ってやれよ。恋の道化師は消えるからさ」とキザなセリフをはいて、階段を下りて行った。
僕は、彼から言われたとおり、急いで、まどかのところへ走って行った。
まどかは、下を向いて、涙を流していた。
そして、僕が来たのを見ると
「どうして……?どうして、ケンちゃんは、いつもこうやって、私をからかうの……?
私の心、知っているはずなのに、どうしていつも、それを無視して、私を試すように……
私、引っ越して来たときから、ずっとケンちゃんのことが好きだったのよ……
それなのに、ケンちゃんは、ずっと私のこと、知らん顔して……
ほかの男性たちが私に告白する様子を見て楽しんで……」
僕は、そのまどかの言葉を聞いて、この期に及んでも、まだ言い訳をしようとしていた。
「いや……俺は別にそんな、まどかの気持ちを……」
言いかけたときに、まどかは、『バッ』と、僕に抱きついてきた。
僕は、突然のことに、驚き、動揺し、そして迷った。
このまま、まどかを抱きしめれば、それは、自分の心に一番正直な行動だった。
でも、それは、まどかの母親との約束を破ることでもあった。
僕は、しばらく、まどかに抱きしめられた両手を下に伸ばしたまま、じっとしていた。
しかし、僕の分身は、そんな状況に正直に反応し、またしても、ズボンの下から、まどかの股間を攻撃した。
今度は、まどかは、腰を引かなかった。
腰を引かず、そのまま、僕を引っ張る形で、下に崩れ落ちた。
僕は、彼女が屋上の床に頭をぶつけないよう、急いで、下に伸ばしていた両手を彼女の頭に回した。
そうして、本能の赴くまま、その手を自分の方に引き寄せると、まどかの小さな可愛い唇に自分の唇を押し当てていた。
まどかは、目をつむったまま、その僕の唇を、しっかりと自分の唇で受け止めた。
一筋の涙が、まどかの目から流れ落ちた。
僕たちは、しばらく、そのまま、お互いの唇を合わせたままじっとしていた。
やがて、まどかは、その唇を離すと、僕の学生服の一番上のボタンを外し、そっと、その中に手を差し込んで、カッターシャツの上から僕の左胸に手を当てた。
「ドキドキいってる……」まどかは、静かにそう言った。
僕も、同じようにまどかの学生服のボタンを外し、左胸に手を差し入れようとしたとき、後ろで『ゴホン!』という、咳払いが聞こえた。
僕たちは、驚いて、その咳払いのした方に目を向けると、そこには、学校の最後の見回りに来ていたセイジツさんが立っていた。
「はい……お前たち、今日はそこまでだ。続きは、家に帰ってやれ……あっ!イヤイヤ、家に帰っても、続きはやってはいかん」
セイジツさんは、しどろもどろになって自分の言ったことを訂正した。
僕たちは、あわてて、自分たちの服を直し、立ち上がって「失礼します」と頭を下げると、一目散にその場を離れた。
僕の横には、今までふれたくても手を触れることさえできなかった不思議な妖精が、僕に手を引かれ、笑いながら僕の後ろを駆けていた。
僕は、可愛いくて、可愛いくて仕方のない、不思議な妖精をとうとう自分の手に入れた。




