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僕の性日記Ⅱ  作者: 水野 流
Ⅲ章 いじめ
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夏未の謝罪


次の日も、僕はまどかと一緒に登校した。


教室には、夏未はいなかった。


僕たち二人を見つけ、みんなが、僕たちに「おはよう」と声をかけてくれた。

僕たちも、大きな声で皆にあいさつを返した。


僕と、まどかは、夏未がやはり登校していないことを心配した。


夏未は、朝のチャイムが鳴っても現れなかった。


朝の会にやって来た中村先生も、夏未が登校していないことを確認して、悲しそうな表情をした。


その日の授業が終わって、僕は、まどかを家まで送り届けた。


すると、おばさんが玄関に出てきて「今日、須藤さんて言う子が、お母様と一緒にみえられて『まどかちゃんをいじめて済みませんでした』って謝ったわよ。

あの子が、まどかちゃんをいじめていた子?全然そんな風には見えなかったけど……

泣いて謝るから、私『これから、仲良くしてくれたらいいから』って、言ったんだけど、それでよかった?」とまどかに聞いた。


それを聞いて、まどかは「うん、それでいい。ママありがとう」と言った。



次の日も、僕とまどかは一緒に登校した。その時に、まどかが、昨夜おばさんから聞いた、夏未の謝罪の詳細を教えてくれた。


「それなら、今日は学校へ出てくるかな?」と言った。

まどかは「夏未ちゃん、今日は絶対来るよ……」と嬉しそうだった。



朝、僕たちが教室に入ると、やはり、夏未は来ていなかった。

僕とまどかはお互いに顔を見合わせ、少し落胆した。


しかし、まどかは「大丈夫だよ、夏未ちゃん、きっと来てくれるよ」と僕に微笑みかけながら言った。


そのまどかの言葉に、僕は一抹の不安を抱きつつも「そうだな、きっと来てくれるな……」と言った。



しかし、学校の始業のチャイムが鳴っても、やはり夏未は現れなかった。


朝の会に来た中村先生が「夏未は、今日も休みか?」と、みんなに尋ねると、目をつむって頭を左右に振った。


僕たちは、その先生の様子を見て、みんな黙っていた。



一時限目の授業が始まり、もう少しで終わる頃、突然、後ろのドアが開いた。


みんなが振り向くと、そこには鞄を下げ、下を向いた夏未が立っていた。



それに気づいた、古典の授業をしていた石川先生が「あら、須藤さん、どこか調子が悪かったの?」と訊ねた。

その、先生の質問に、夏未は小さく「ええ……ちょっとだけ……」と答えると、そのまま、自分の席に着いた。


すぐに、一時限目終了のチャイムが鳴り、「それじゃ、今日の授業は、ここまで」と言って石川先生は教室から出て行った。



一時限目と二時限目の間にある15分間の休憩時間の間、みんな、夏未のことには触れないよう、普段よりも静かにしていた。夏未の取り巻きだった女子たちも、夏未のところに行くこともなく、めいめいが、自分の席で、本を読んだりしていた。


教室全体を、なんだか、重苦しい空気が包んでいた。



そんな、重苦しい空気の中、夏未が、突然、自分の席を立って、まどかの前へ行った。


まどかは、驚いて、自分の席に座ったまま、夏未を見上げた。

その様子を、みんなも驚いて息をのんで注目した。



「まどかさん、私、あなたに、とても、ひどいことしてしまった……謝って済ませられることじゃないけど……ごめんなさい……ほんとうに済みませんでした……」夏未は、そう言うと、目から大粒の涙をまどかの机に落とし、そのまま、机の前に崩れ落ちた。


まどかもみんなも、何が起こったのか、すぐにはその状況が呑み込めず、しばらくは無言で、その様子を見ていた。


しかし、すぐに、まどかは我に返り、その場に立ち上がると、自分の前で頭を伏せて泣き続ける夏未の肩に手を伸ばして、「立って、夏未ちゃん……私、大丈夫だから……怒ってないから……だから、そんなところで泣かないで……私も悲しくなっちゃう……」

そう言って、涙ぐんだ。


「まどかちゃん……」下を向いて、泣き崩れていた夏未が、顔を上にあげ、まどかの顔を見た。


まどかは、夏未の肩を持って、ゆっくりと彼女を自分の前に立たせると

「夏未ちゃん、高校に入学したとき、本当は一番にあなたとお友達になりたかったの。中学の時、市の広報で、あなたがいろいろな施設でボランティア活動しているの知っていたから、お友達になって、一緒にその活動に参加させてもらいたいと思っていたの……だから、その活動、私にも参加させて……高校入学した時のように、私と仲良くしてくれたら、私は、とってもうれしい……」そう言って、夏未の肩をゆすった。


「まどかちゃん……」それからあとは、夏未は涙で言葉にならなかった。


そんな、夏未をまどかは自分の両手で抱きしめた。



ずっと、その光景をかたずをのんで見ていた僕たちは、思わず、みんなで「うぉー」と言って拍手をした。みんな、泣いていた。女子だけでなく、男子も、あの夏未に暴言を吐いた僕さえも……



その後、夏未は僕の前に来て「ごめんなさい……私が間違っていました」と言って、頭を下げた。

僕は「僕の方こそ、ひどいこと言ってごめん」と謝った。


またしても、みんなが拍手をした。


そして、夏未は、みんなの方に振り返ると、みんなに対しても「ごめんなさい、みんな……私を許して下さい……」と言って、頭を下げた。



辛かった、まどかとみんなの困難が完全に解決した瞬間だった。



僕たちは、すぐに職員室に中村先生を呼びに行き、教室に引っ張ってきて、そのことを伝えた。


その話を聞き、中村先生も、みんなと同じように泣きながら「おまえら、よくやった……よかった、よかった……」と僕や近くにいた生徒の頭を撫でて回った。


二時限目のチャイムはすでに鳴っており、授業に来た数学の先生が、何事かと教室の入り口で立ち伏していた。



それからは、まどかと夏未は大の仲良しになり、あの時、まどかが言ったように、夏未が恵まれない子たちの施設で行っていたボランティアにも、まどかは一緒に参加するようになっていた。


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