持つべきものは友
まどかを見つけた奴らは「あらららら~昨日のまどかちゃんじゃん。尺八の続きしに来てくれたの?」と、また卑猥なことを言って、まどかを侮辱した。
「今から、君の彼氏、ボコボコにしてあげるから、俺が勝ったら、俺の彼女になってね」そう言って、そいつは笑った。
僕とそいつが向き合い、いよいよ、殴り合いのケンカになろうとした時、後ろで聞き覚えのある声がした。
「おう、お前ら、何やっとんじゃ!?」
「お前ら、他校の奴とケンカするときは、俺に言うてからにせいと、いっつも言うとるやろが!」そう言って、そいつが一番近くにいた奴の頭をはたいた音がした。
「すんません。ウチダさん。昨日、こいつにエエところを邪魔されたもんで……ちょっと、お仕置きしてやろう思いまして」
『ウチダ』という名前を聞いて、僕はまさかと思い、振り向いてそいつの顔を見た。
中学校の時には、丸坊主だった頭が、リージェントにはなっていたが、紛れもなく、あの『ドスケベの内田』だった。
そんな、驚いた僕の顔を見て、内田も「おう、ケンジじゃないか。久しぶりやなー」と嬉しそうに言った。
内田は、遠くにいるまどかも見つけ「おう、まどかも来とるんか?」と言った。
そんな、僕たちに対する内田の親し気な会話を聞いていた5人組は、あっけにとられ、「もしかして、こいつら、内田さんのお知合いですか?」と聞いた。
「知り合いも何も、小学校からの、俺のポン友よ」と嬉しそうに答えた。
「なんじゃ、お前ら、もしかして、この俺のポン友を殴ろうとしてたんか!?」急にドスの効いた声に代わり、僕の前にいた奴をにらみつけた。
「いえ、まさか、内田さんのお友達とは知らなかったもんで……」そいつは、しどろもどろになって、言い訳をしていた。
「じゃけん、他校の奴とやるときは、俺に相談せい、言うとるんじゃ!!!」内田は、思いっきりそいつの頭をしばき倒した。
「すんません」そいつらは、その内田の剣幕に、一斉に頭を下げた。
「まあ、ええ、ケンジが殴られる前やったけん……もしこいつが、ちょっとでも怪我しとったら、お前らの息の根、止めとるとこじゃったけどのー」そう言って、内田は大笑いした。
「ええか、お前ら、こいつらには、今後、一切、手出したら許さへんぞ。もし、手出したら、そいつの腕、へし折るけんな!ええな!!分かったか!!!」
そいつらは、またしても、直立不動で、一斉に頭を下げた。
「でも、なんで、ケンジやまどかが狙われたんや?……岩田、言うてみ」
内田は、僕を殴ろうとしていた奴に訊ねた。
「いや、俺と同じ中学だった須藤夏未いう女に、『同じクラスの伊藤まどかいう女がむかつくからちょっと怖がらせてくれ』って頼まれまして」
やっぱり、裏で糸を引いていたのは夏未だった。僕の憶測が真実に変わった瞬間だった。
「『須藤夏未』……?ああ……『ヤリマン』のか?」内田が言った。
「ご存じで?」
「いや、名前聞いたことがあるだけや。『須藤土建』の娘やろ?誰でも、すぐやらしてくれる女やって、俺らの間では有名な女や。『ヤリマン』のくせに、顔はええいうて……お前知り合いなんやったら、今度紹介してくれ」
「はあ……」そいつは、少し困った顔をした。
「何や、イヤなんか?お前の女なんか?」
「いえ、そう言う訳では……」
「それならええやろ、今度紹介せい……そいつが、『まどか襲え』言うたんなら、まどかのお礼した後に、しっかり、俺の『ビッグマグナム』ぶち込んでやるけん」
内田は、そう言って、またしても大笑いした。
その、内田の言ったことを聞いて、岩田と呼ばれる、そいつが苦笑した。
「なんや、お前……何、笑ろとるんじゃ!?笑ろとる場合やないやろ!?まだ、言わなあかんことがあるんやないんか!?」
「はっ?」
「『はっ?』やないやろがー! 謝罪じゃ、謝罪!ヘラヘラしとらんと、早よ謝らんかーーー!!!」
そいつは、内田の剣幕に、慌てて姿勢を直すと「本当にスンマセンでした」
と内田に向かって、深々と頭を下げた。
「俺に、頭下げてもいかんだろ。下げるんなら、あっちの二人にだろ!!!」内田は、再び、大声で、そいつを怒鳴りつけた。
その大きな声にまどかは、肩をすぼめた。
そいつらは、僕たちの方に身体を向けると、全員で「どうも、申し訳ありませんでした」と内田にしたと同じように、僕たちに深々と頭を下げた。
僕とまどかは、その様子を、あっけに取られて見ていた。




