送り届けて
まどかの家へ着き、玄関の呼び鈴を押した。中から出て来たおばさんは、いつもと違う様子に「どうしたの、みんな……?」と言った。
僕は、玄関先で、先ほどあったことを簡単におばさんに伝えた。先生が、『明日、事情を説明しに来る』と言っていたことも。
その、僕の話を聞いたおばさんは、驚き「まどかちゃん、大丈夫だった?」とまどかに訊ねていた。まどかは、その言葉にうつむいたまま、『コクリ』と頷いた。
「みなさん、ありがとうね……ささ中に入って」と、おばさんは僕たちを家の中に誘った。
しかし、美香と丸山君は「私たち、家が遠いんで……」と言って、そのまま上には上がらず、玄関先で帰った。
結局、僕だけが中に入り、いつものソファーに腰かけた。
まどかも、僕の前のソファーに座った。急ぎのアイスコーヒーを持ったおばさんも部屋に入って来た。
そして、先ほどあった話を詳しくおばさんに話した。
その間、まどかは一言もしゃべらず、ずっと下を向いていた。
「あいつら、僕とまどかの名前、知っていたから、ウチの高校の誰かが、あいつらにまどかに嫌がらせするように言ったに違いないんだ……」と、夏未の個人名は伏せて、先生に言ったと同じ事を、おばさんにも言った。
ずっと黙って僕の話を聞いていたおばさんは、その僕の推測を聞いて「でも、それが、まどかちゃんをいじめてる子だとは、分からないんでしょ?」と言った。
そんな、話を続けていると、知らぬ間に夜の8時を過ぎていた。
それに気づいたおばさんが「あら、もうこんな時間、ケンジ君、早くお家に帰らないと、お母さんが心配するわ」と言った。
そのおばさんの言葉で、ソファーを立ち上がった僕は「明日の朝も、迎えに来るから。朝も、一緒に学校行こう」とまどかを誘った。
その僕の誘いで、その時初めてまどかが口を開いた。「私、もう、あんな学校行きたくない……」今まで、気丈にいじめに耐えていたまどかの初めての弱気な発言だった。
その、まどかの言葉に僕もおばさんもしばらくかける言葉がなかった。
「そんなこと言わず……俺がまどかのこと守るから……絶対に守るから……だから、明日も学校行こう」
その僕のかけた言葉に、まどかは涙の流れる瞳で僕を見つめ「本当?本当にケンちゃんが私を守ってくれるの?」と聞いた。
僕は、おばさんの顔色を気にしながら、小さく「うん」とだけ答えた。
おばさんがそんな僕たちの会話を、複雑な表情で聞いていた。




