一触即発
そんな光景に、僕は、一気に頭に血が上り、
「やめろ!まどかから離れろ!!!」と大声で叫んでいた。
それを聞いた男たちが、僕たちに気付き「なんだ~お前……?」と言って、まどかから離れ、こちらに向かって歩いてきた。
まどかは、そこにしゃがみ込んだまま、緊張の糸が切れたのか、泣きじゃくっていた。
「女の前だからって、カッコつけてんじゃねーぞ!」一番前にいた男が、ガンを飛ばしながら、僕の方に向かってきた。
「はは~ん、お前がケンジって野郎か?お前、あの女にガキ孕ませて、おろさせたんだってな~ ひっでぇ男だぜ!まったく……そんなひどい奴は俺が、ここで成敗してやる」
『こいつらは、まどかの名前も俺の名前も知っている。その上、夏未たちが広めたであろう、まどかの根も葉もないうわさ話まで知っている』僕は、こいつらが、夏未の差し金であると直感した。
そいつが、拳を『ボキボキ』鳴らしながら、僕の目の前まで来たとき、
「こらー!!!お前ら、やめんかー!!!」という声が、遠くで聞こえた。
「やっべー、先公だ」そう言うと、そいつらは、慌てて、声がしたのと反対方向に走って逃げ去った。
「お前ら、ケガはないか?」
それは美香が呼んできた中村先生だった。数人の男子生徒も一緒に来ていた。
美香は、一目散に、しゃがみこんだまま泣きじゃくるまどかのところに駆け寄った。
「まどかちゃん、大丈夫?あいつらに何もされなかった?」
そう言って、まどかの背中をさすりながら、横に座った。
「あいつら葛山の奴らか?」先生が、僕に訊ねた。
「学ランの襟章はクズ工のでした。おそらく、夏未の差し金だと思います」僕は、そう先生に言った。
それを聞いた先生は、「そんな、確証のないことを軽々しく言っちゃいかん」と即座に僕をたしなめた。
しかし、僕とまどかの名前を知っていた以上、それ以外に考えられないと僕は思っていた。
まだ、声をしゃくりあげながら泣き続けるまどかを、美香が僕たちのところに連れて来た。
「大丈夫か?まどか」先生が、まどかに聞いた。
まどかは、涙を指でこすりながら、下を向いたまま、無言で何度も頭を上下に振っていた。
「ケンジ、今日は、お前が、まどかを送って行け。お前の家、まどか家の目の前だっただろ?ちゃんと家まで送り届けるんだぞ。
先生は、これから学校に戻って、今日あったことを校長らに報告して対応策を相談するから……それと、まどかのお母さんには、明日、先生が事情を説明に行くと伝えといてくれ。頼んだぞ」
僕は「分かりました」と言うと、まだ、泣いているまどかに「大丈夫か?」と声をかけ、そっと背中に手を当て、家の方へ歩き出した。
途中までしか道が一緒でない美香と丸山君も、その日はまどかの家まで僕と一緒に来てくれた。




