聴取開始
弁当を食べ終わったまどかが、立ち上がり、中村先生に言われたとおり、一人で職員室に向かった。
まどかが、教室から出て行くと、数人の女子が夏未のところに集まった。
「あの子、セイジツさんに何て言うのかな?」その中の一人が、心配そうにつぶやいた。
「きっと、まどかが母親にチクったのよ。今日まどかのお母さんが学校来てるの見たもん、私」高木が言った。
「エーッ……!?」「嫌だ、私、内申が悪くなっちゃう……」そこにいた女子たちはめいめいに不安を口にした。
「心配することないって……だって、私たち、いじめなんて、してないでしょ?」
夏未が、そこにいる女子にその認識を強要するように、強い口調で言った。
「そうよ、そうよ、私たち、いじめなんてしてないもん」それまで、動揺していた女子がその夏未の言葉を聞いて同調した。
「そうよ」「そうよ」……自分たちを納得させるように、女子たちはそれぞれで、その言葉を口にした。
「私、ちょっと、行って、外から何言ってるか聞いてこようか?」今や、夏未の一番の腰ぎんちゃくとなっていた高木が言った。
「行きたきゃ、行けば……私は行かないけど」夏未のその言葉に、高木と二、三人の女子が教室を出て行こうとした、まさにその時、まどかが先生の聴取を終えて戻って来た。
あっという間に、まどかは先生との話を終えて戻って来たのだ。
高木たちは、何事もなかったかのように、また、夏未のそばに行った。
僕は、その時間のあまりの短さに、まどかが先生にちゃんと自分の状況を話したのか不安になった。
そして、放課後になり、夏未が職員室に行った。
夏未は、まどかの聴取時間とは対照的に、とても長い時間、戻って来なかった。
その間、僕と夏未の取り巻きの女子たちが、教室で、夏未が戻ってくるのを待っていた。
1時間ほどして、やっと、夏未が戻って来た。教室に残っていた女子たちがすぐに夏未を取り囲み「どうだった?」「何聞かれたの?」と、めいめいに質問をしていた。
「別に……『いじめなんか受けてる子、見たことない』って答えてやったわ。だって、そんな子いないじゃない?」そう言って、またしても、夏未は嘘の話を、そこにいた女子に刷り込んでいた。
夏未が戻ったことで、『俺の番だ』と思った僕は、先生が呼びに来るのを待たず、職員室に向かった。
ちょうど、先生が職員室から出てくるところに出くわした。
「おお、ケンジ、今、呼びに行こうとしてたんだ。こっちの部屋に来い」そう言って、僕を『相談室』という職員室の隣の小部屋に招いた。




