セイジツさんの差配
その日、弁当を食べていると、中村先生が教室にやって来た。
「みんな、メシ食っているところ悪いが、少し先生の話を聞いてくれ。今日、父兄の方が、『このクラスで、いじめが行われているんじゃないか?』と心配して、相談に来られた。
もちろん、先生は、そんなことはないと否定したし、皆がそんなことするはずはないと信じている。しかし、そう、心配されている父兄の方がおられる以上、このことを、そのまま放置するわけにはいかない。これから、少しづつ、皆にも協力してもらって、いろいろな目線からの話を聞かせてもらいたい。それで、昼休みに時間を取らせて悪いが、まずは、まどか、弁当を食べたら、職員室に来てくれ。そして、今日の授業が終わったら、夏未、お前が来てくれ。その後、ケンジお前だ。お前も、何か『放課後相談事がある』と言ってただろ。その話も、その時聞くから……」
そういう、中村先生の話を聞いて、箸を止めて聞いていたみんなが、少しざわつき始めた。
「まあまあ、静かに、あくまでも、参考で、皆の話を聞かせて欲しいということだから……そんなに、気がまえなくても……早めの個人面談とでも思ってくれればいい……」
そう言って、中村先生は教室のみんなに動揺しないよう言った。
その時、夏未が不満そうに「先生、なんで、私なんですか?」とキレ気味に質問した。
それを聞いた中村先生は「別に、『お前が』ということではない。『お前にも』聞きたいということで、話を聞く二番手ということだけだ。今日都合が悪ければ、明日以降でもいいぞ。都合悪いんなら、ケンジを二番手にしようか?」そう言って、逆に夏未に質問した。
夏未は、僕が先に中村先生と話し、自分のいじめの真実をバラされるとまずいと思ったのか「別に、今日でいいです」と答えた。
「それなら、授業終わったら、職員室に来てくれ。ケンジはそれが終わったら、先生が呼びに来るから、教室で待っててくれ」と、先生は言った。
父兄からいじめの相談を受けたこと、僕が放課後相談があると言っていたこと、そして、何よりも、とりあえず、ごまかしたとはいえ、いじめの当事者二人を一番手と二番手の事情聴取者に指名したことは、父兄の相談内容をバラしたようなもので、僕は、唖然とした。
この件を、ずっと一人で抱え込んでいたまどかの思いも同じなのではないかと思った。
ただ、このことで、どん詰まり状態だったまどかへのいじめ問題は、その解決に向け、少しずつ動き始めたようにも思えた。




