ドッジボール
次の日の昼休み、皆が弁当を食べ終わると、また、夏未が女子たちを遊びに誘った。
「みんな、今日はドッジボールしよう」女子たちは、その夏未の誘いに、すぐさま「しよう、しよう」と言って従っていた。
女子全員で、教室を出て行こうとした時、夏未が立ち止まり「伊藤さん、あなたも来る?」とまどかに声をかけた。
突然の夏未の誘いに、女子たちの姿を見ないように机に座ったまま下を向いていたまどかは、驚いて顔を上げた。
「えっ……?私も行っていいの……?」まどかが、夏未に訊ねた。
「もちろんよ。みんな友達じゃん」夏未が、笑いながら言った。
その言葉に、夏未を取り囲んでいた女子と、僕たち男子は驚いて、夏未を見た。
夏未と女子たちは、その時は、まどかが来るのを待ち、みんなで一緒に教室を出て行った。
「ほら、よかっただろ……俺のおかげだぞ」そう言って、そもそもの原因者の丸山君が、笑いながら、僕のところに来た。
僕も、少し『ホッ!』とした気持ちになった。
「見に行ってみようか?」丸山君が言ったが、「男子が大勢で駆けつけて、まどかのこと見てたら、また、須藤さんの機嫌が悪くなるかもしれないから……しばらく、そっとしとこう」僕は、そう言って、丸山君を引き留めた。
「そうだな……しばらくは、そっとしとこうか?」丸山君も、僕の意見に賛成した。
休み時間が終わって、女子たちが夏未を先頭に「キャッキャッ」言いながら、教室に戻って来た。
その中に、まどかの姿はなかった。
まどかが、戻って来たのは、午後の授業が始まる寸前だった。
一人だけで、下を向き、黙って、自分の席に着いた。
僕は、そんなまどかの様子が気が気ではなく、それから始まった午後の授業は、ほとんど上の空だった。
僕は、午後の授業が終わると、すぐにまどかのところに行き「どうしたの?」と訊ねた。
まどかは、そんな僕をチラッとだけ見ると「何でもない……」と言って、鞄を持って、教室を出て行った。
僕は、そんなまどかの様子を心配そうに見ていた宮本さんを、他の女子に見つからないよう、校舎の裏に呼んだ。
「まどか、元気なかったけど、どうしたの?須藤さんと、仲直りしたんじゃないの?」
そう、宮本さんに訊ねた。
宮本さんは、初め、何も言わず黙っていた。
それでも、再三の僕の問いかけに、周りを気にしながら、恐る恐る口を開いた。
「まどかちゃんさ、皆とドッジボールをしたにはしたんだけど……みんなから、一人だけ、標的にされて、強いボール、皆にぶつけられて……その後、皆から『どんくさい』だとか『あんたのせいで負けた』だとか、散々ののしられて……私、気が弱いから、何も言えなかったけど、本当に可哀そうで……」
宮本さんは、涙ぐみながら、僕に昼休みの状況を教えてくれた。
その話を聞いた僕の心の中には、なんとも言い難い、夏未に対する怒りの感情が『メラメラ』と沸き上がって来ていた。




