丸山君の説得
僕が、教室に戻ると、まどかはポツンと一人で自分の席に座っていた。
そんな様子を、丸山君たちが心配そうに見ていた。
僕は、丸山君のところに行き、廊下へ連れ出した。
そして、二人っきりになったところで、こう切り出した。
「丸山君、君も感じているとは思うけど、この前、君が行った女子の人気投票……あれが、原因で、まどかは今、須藤さんたち女子にいじめられているんだと思う。君って、須藤さんと同じ中学だろ?何とか、須藤さんに、まどかのいじめをやめるよう言ってくれないかな?」
そう言うと、丸山君は「うん、俺も伊藤さんには悪いことしたと反省してるんだ。君の言うことは分かったよ。夏未に言ってみる……ただ、あの夏未が俺の言うことを素直に聞くかは、微妙だけどな……」そう言って、僕の肩を『ポン』とたたいた。
とりあえず、まどかのことは、丸山君頼みとなった。
そんなところに、夏未を先頭にした女子たちが戻って来た。
「ああ、楽しかったね……」女子たちは、皆、満足そうに笑いながらの帰還だった。
そんな、夏未を、丸山君が呼び止めた。
「なに?なんか用?」夏未が、丸山君をにらんだ。
女子たちも、足を止めた。
「ちょっと、話があるんだ」丸山君の声は緊張で上ずっていた。
「あの、こないだの、女子の人気投票のことは、謝る。僕が、男子を呼んで勝手に始めたことなんだ……」
「だから何?」夏未は不機嫌そうに答えた。
「だから……だからさ、伊藤さんは、あの件に関して、まったく関係ないんだ。だから、今、夏未たちが伊藤さんに対して行っている、いじめをやめて欲しいんだよ……」
丸山君は、そう、ストレートに、まどかへのいじめをやめるよう夏未に、お願いした。
「ちょっと、変なこと言わないでよ。いつ私が彼女のこといじめたのよ?」夏未は、シラを切った。
「いや、それは……見ていて思うから……」丸山君は、しどろもどろになって答えた。
「それは、あんたが、勝手に思ってるだけでしょ……みんな、皆は私が伊藤さんをいじめているように見える?」そう言って、そこにいる女子たちに訊ねた。
女子は、その夏未の問いかけに皆が「思わない……」と首を振った。
「ほ~ら、みんな、思わないって……変な言いがかりつけないでよね!」
その、強気の夏未の言葉に、丸山君はそれ以上何も言えなくなった。
横にいた僕も、何もフォローすることができなかった。
夏未は、その時すでに、クラス全部の女子を自分の味方につけていたのだ。




