一人ぼっちのまどか
「みんな、今日は、バスケットやろうか?」と続けて夏未が言った。
その言葉に、女子の多くが「やろ、やろ」とその意見に賛同した。
「宮本さんもやろ」一群の中の高木が宮本さんを誘った。
困惑したような顔で立ち上がった宮本さんは、まどかの方に振り返り、「まどかちゃんもやろ」とまどかを誘った。
高木が無言で宮本さんに小さく首を振った。
まどかは、その宮本さんの誘いを少し驚いた様子で聞いていたが「うん」というと、静かに立ち上がった。
女子たちは、そんなまどかを待つこともせず、走って教室を出て行った。
まどかが、集まって来ていた男子たちに「ありがとう」と頭を下げると、ゆっくりと一人で彼女たちの後を追って教室を出て行った。
僕は、そんなまどかのことが気になり、まどかが出て行ってから少しして体育館に様子を見に行った。
多くの生徒が、体育館でボール遊びやトランポリンをして遊んでいた。
その隅っこに、ぽつんとボールを持ったまどかが下を向いて座っていた。
体育館で遊んでいる生徒の中に、ウチのクラスの女子たちの姿はなかった。
僕は、そんなまどかの横に座り「みんなは?」と聞いた。
まどかは、黙って首を振り「分からない……私が来た時には、みんないなかったから……」と答えた。
しばらく、沈黙が続いた。
まどかが、口を開いた
「ケンちゃん……私、いじめられてるんだよね……?」
僕は、そのまどかの問いかけに、すぐに返事をすることができなかった。
「私、いじめられてるの?……なんで……?」
「それは……」僕は、返答に困った。
「やっぱり、この前の、俺たち男子がやった、女子の人気投票がまずかったのかな?」
僕は、絶対にそれが原因だと確信していたが、それを始めた丸山君やそこにいた自分の責任を逃れるため、曖昧に答えた。
「それって、私、何も関係ないじゃん……」
そう、まどかは全然関係ない、まったくの被害者なのだ。
「そう、まどかは全然関係ないよ……だから、まどかは全然悪くない……」
僕は、自分の責任を逃れるため、無責任な慰めを言った。
「じゃあ、『オッパイ見せる』は……?」
「それは……それは、内田が、たぶん……小学校の時の話を……」
まどかは、その僕の返事を聞いて、そのことを思い出したのか「そんなの、小3の時の話じゃん」と言った。
「そう、だから、夏未の言ってることは、何も気にすることなんてないんだ……」またしても、僕は無責任な慰めを言った。
「じゃあ、おへそは?」
「それは……」僕は、答えに躊躇した。
「それは、つい、あの時のことを、内田に言ったから……ゴメン……」
「……」まどかは、無言で僕の方を見た。
そして「やっぱり、ケンちゃんだったんだ……」まどかは、そう悲しそうにつぶやいた。
しばらく、先ほどの教室と同じ、重苦しい雰囲気が二人を包んだ。
僕は、そんな重苦しい雰囲気を打開しようと、まどかに言った。
「俺がバスケ教えてやるよ。やろ、バスケ……」
「やらない」
「ケンちゃんも、私なんかと話してると、いじめられるよ……」
そう言って、僕にボールを渡すと、黙って体育館を出て行った。




