まどかへのいじめ
次の日、僕が登校すると、女子数人がすでに来ており、宮本さん以外の全員が夏未のところに集まって、ヒソヒソ話をしていた。
その中には、ウチの中学だった高木よし江もいた。
彼女は、「あの子さ、中学の時にも数人の男子たちから告白されて、いい気になってたんだから……そういえば、スケベなバカな男子がいて、その子に胸も見せたんだって……おへそ見たっていう男子もいるのよ……」
そう言って、僕の方を見た。かなり、事実がひん曲げられ、マイナスな情報だけが誇張されて、まどかをこき下ろす内容の話となっていた。
「うわー、ほんとう?いやらしい」そこにいた女子全員がその話を鵜吞みにし、まどかの誤った印象に大騒ぎをしていた。その中心にいる夏未が『ニヤリ』とほくそ笑んだ。
そんなところに、まどかが「おはよう」と言って、教室に入って来た。
女子の一群から離れて自分の席に座っていた宮本さんと、入り口近くにいた男子だけは、「おはよう」とあいさつを返したが、夏未の周りに集まっていた女子は『チラッ』と彼女の方を見ただけで、挨拶を返す者はいなかった。
まどかは、その昨日までとは違う彼女たちの様子に、違和感を感じたようで、そのまま、何も言わず、自分の席に着いた。
夏未の周りに集まっていた女子は、また、夏未の方に視線を戻し、ヒソヒソ話を続けた。
まどかは、そんな女子の様子を気にしないよう、自分の席で、教科書を開き、黙ってそれを眺めていた。
僕はその時、まどかのところに行く勇気を持ち合わせてはいなかった。
昼休みになっても、その状況は好転せず、むしろ、ますます悪くなっているように思えた。
昨日までは、何人かの女子がまどかのところに行って『ワイワイ』話しながら、お昼の弁当を食べていたが、その日は、唯一、気づかいの宮本さんがまどかのところに行って、弁当を一緒に食べているだけだった。
弁当が終わると、夏未が「体育館行って、ドッジボールしよう」と女子を誘っていた。
まどかが、夏未のところに行き「須藤さん、私も行っていい?」と聞いた。
そのまどかの問いかけに、夏未は答えることなく「みんな、行こ、行こ」と言って、皆を引き連れて、教室を出て言った。
まどかだけが、一人、ぽつんと教室に残された。
気づかいの宮本さんが、まどかのところに行き、「まどかちゃん、私と、宝塚の話しよ」とまどかに言っていた。宮本さんは、宝塚の熱狂的なファンだった。
まどかは、そんな宮本さんの誘いに「うん」と小さく言っただけで、ずっとうつむいていた。
そんな、まどかの様子を、そこにいた僕も含めた男子全員が、どうすることもできず、ただ、『モヤモヤ』とした気持ちのまま見ていた。




