中学卒業
次の日、学校へ行って、まどかに会ったが、やはり、まどかは怒っており、僕たちは一言も口をきかなかった。
そんな状態で、僕たちは、お互いを自然と避けるようになり、中学3年になった。
いよいよ、高校受験の学年となり、2学期にもなると、皆少しずつ、自分の進路のことで、ピリピリし始めた。
そんな中でも、内田だけは陽気で、相変わらず、恋人の吉川さんとうまくやっているようだった。
肉体関係まで、いっているかどうかは定かでなかったが、「そんなことがあれば、あいつのことだから、すぐに皆に言いふらすだろう」と木村君が言っていた。「おそらく、キスさえしてないだろう」と……
ドスケベであったが、いざ、生身の女性ということになればめっぽう控えめで、グラビアの中の女性で自分を慰めるだけというのが、内田のいいところだったのかもしれない。
僕たちは、めいめいに、違う進路を決め、それに向けて、残り半年のラストスパートに入っていた。
僕と山田君、そしてまどかも、市内で唯一の進学校である『大川高校』を志望していた。
僕とまどかは、3年になっても違うクラスだったので、お互いに、口を聞かなくなったということもあり、まどかから、そのことを直接聞くことはなかったが、おばさんに聞いて、僕は知っていたのだ。
3月になると、授業はなくなり、自分の家や自習と称する学校の先生の受けたい授業を聞くだけになった。
受験の日、僕たちは、学校に集められ、志望校別に並ばされた。やはり、まどかは、僕と同じ隊列にいた。
そして、各担当の先生に従って、受験する高校へ向かった。
一日目が学科の試験、二日目が小論文と面接だった。小論文の課題は、『最近あった楽しかったこと、悲しかったことについて書け』というものだった。
僕は、迷わず、まどかとのことを書いた。もちろん、『まどか』とか『女友達』という訳にもいかないので、単なる『友達』とのケンカということで、自分のまどかに対して今思っている贖罪の意思を書いた。
試験も面接も終わって、僕が校舎の外に出ると、そこには、まどかがいた。
僕は、声をかけることに若干躊躇しながら、それでも、やっと受験が終わったという解放感から、まどかに、本当に久しぶりに声をかけた。
「どうだった?試験……」
突然、僕に声をかけられたまどかは、最初、少しびっくりした表情を見せたが、僕の問いかけに素直に返事をした。
「面接で、あがっちゃった……」まどかは、舌を出して笑った。
久しぶりの、まどかのそんな表情に、僕たちはそのまま、そこにあったベンチに腰を掛け、前の日にあった学科試験の答え合わせをした。
僕は、自分で思っていたよりも、出来てなかった。
落胆する僕に、まどかは「大丈夫だよ、ケンちゃん、昔から悪運が強いもん……」という、慰めなのか、茶化しなのか分からぬ言葉をかけて笑った。
その、県立高校の試験の数日後に、中学校の卒業式が執り行われた。
僕たちは、めいめいにサイン帳を持ち寄って、仲の良かった友達に一言、書いてもらった。
僕は、わざわざ隣のクラスのまどかのところに行き、サイン帳への一言をねだった。
「なに?私たち、同じ高校に行くのに、お別れじゃないじゃん」まどかが笑った。
「いや、俺、落ちてるかもしれないし……」
そんな、弱気な僕の発言を聞いて、まどかは「大丈夫だって……私が保証する。ケンちゃん、悪運強いもん」そんな、ありがたいような、ありがたくないような励ましの言葉を再度かけてくれた。
「じゃ、私のサイン帳にも書いてね」まどかは、自分のサイン帳を僕に差し出した。
お互いに、お互いへのエールの言葉を綴った。
僕のサイン帳には『今まで、親切にしてくれてありがとう。高校に行ってもよろしくね』という、まじめな言葉が丁寧な美しい文字で書かれていた。
一方の僕は『また、デンキアンマしよう!』
面白いことを書こうとして、ドスベリした言葉を書いてしまった。
それを見たまどかは、笑うでもなく、ただ単に、小さな声で「ほんと、バカ……」と言って、サイン帳を『パタン』と閉じた。




