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僕の性日記Ⅱ  作者: 水野 流
Ⅱ章 まどか
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バレンタインデー


そんな、まどかへの告白ゲーム(?)の盛り上がりも冷め、僕たちは3学期に入っていた。


まどかは、あれ以来、僕と以前のようにおどけて話しをすることはなくなり、話しかけても「何か御用ですか?」というように敬語を使って、妙によそよそしくなっていた。


僕は、そんなまどかの様子を、少し寂しく感じながらも『僕が悪い訳でもないのに、まどかが一人で誤解して、勝手に怒ってる』とそのまま、真剣にその状況を改善しようとはしなかった。



そんな中で、僕たち、男子にとっては、冷静に装いながらも、心の内では『ワクワク』と期待する日が近づいて来ていた。


内田は、あの後、まどかへの愛はきっぱりと諦め、3組の吉川さんと付き合い始めていた。


そのため、去年とは違い、バレンタインデーが近づいても、余裕であった。


「さーて、君たちは愛情のこもったチョコを何個、もらえるのかな~?いやいや、数が問題ではなくて、そこに秘められた変わらぬ乙女の真の心が問題なんだよ……いつも変わらなくてこそ本当の愛なのだよ……君たち」妙に、文学めいた言葉を僕たちに言った。


「こいつ、吉川と付き合いだして、ゲーテ読みだしたんだって……」木村君が、吹き出しながら言った。


「ゲーテ……?こいつが?」皆が、一斉に吹き出した。



そんなバカな男子同士の話を繰り返しているうちに、とうとう、2月14日となったが、結局、帰るまでに、女子から義理チョコ以外のチョコをもらった奴は、内田以外、僕たちの仲間内ではいなかった。


密かに、まどかからのチョコを期待していた僕も、結局は、気づかいの宮本さんが、男子全員に配った小さなチョコ一個だけだった。


去年のバレンタインデーは、まどかが「いつも、仲良くしてくれるから、ケンちゃんにあげる……いい?普段のお礼だからね……ママが持って行けって言ったから、あげるんだからね……」しつこいように、そう念押ししながら、それでも、大きなハート形のチョコをくれた。

なんだかんだ言いながら、僕は、本心では、それがとてもうれしかった。


そうだ、実は、去年のバレンタインデーには、リョウちゃんのお母さんからも、手作りのチョコをもらっていた。


それが、今年のバレンタインデーは、宮本さんからもらった、義理チョコ一つ……


僕は家に帰りながら、泣きたい気持ちを『グッ』と抑え、その小さな義理チョコを口に放り込んだ。



そのチョコを、一気にかみ砕き、最後の上り坂を曲がった時だった。まどかが、自分の家の前に立って僕を待っていた。


「ヒカル君……誰かにチョコレートもらいました?」まだ、よそよそしい言い方で僕に訊ねた。


「いや」僕は、そのまどかのよそよそしい言い方に、『まだ、怒っているのか?』と思いながら、頭を左右に振った。


「欲しいんだったら、あげましょうか……?」


僕は、その僕をさげすむようなまどかの言い方に『カチン!』と来て、「いりません!」と答えた。


まどかは、その僕の返答を、まるで予想していなかったように驚き「なんで……?」と素直に聞き直してきた。


僕は、「どうせ、義理チョコなんだろ?そんな、お前の義理チョコなんか、いりません!」と大きな声で言い放った。


その僕の返答を聞いたまどかは、見る見る涙目になり、「ケンちゃんのバカ……」と言って、持っていたきれいな包み紙に包まれた小さな箱を、僕に向かって投げつけた。


そして、そのまま泣きながら、自分の家に走り込んだ。


中から、「まどかちゃん、どうしたの?」という、おばさんの声が聞こえた。

「何でもない!」というまどかの声も聞こえた。


その後、外の様子を確認しようと、おばさんが、玄関から出て来た。


そこに、僕の姿を見つけたおばさんは、「ケンジ君……まどか、どうしたの?」と僕に聞いた。


僕は、先ほどまどかが僕に投げつけた箱を拾い上げ「これを、僕にぶつけて、なんだか知らないけど、怒って中に入った」と、最小限の事実だけを伝えた。


その箱を見たおばさんは、僕に近づき「それって、昨夜、まどかちゃんが、一生懸命作ってたチョコレート……」と言った。


「ケンジ君にあげるつもりだったんだ……?あなた達、もしかして付き合ってるの?」


そのおばさんの言葉に、僕は頭を横に振り「投げつけて渡すんだから、付き合ってるわけないでしょ……!!!」

乙女の真の心が理解できていなかった、僕は怒りながら言った。


それを聞いたおばさんは「ゴメンね、ケンジ君。ケガはなかった?あの子、時々乱暴なことするから……」と、悪くはなかったはずのまどかが悪者になった。



僕たちが付き合っていないことに安心したおばさんは「いい、もう一度言っとくけど、絶対にまどかちゃんと付き合っちゃダメよ」と、僕に念を押した。



その後、「ちょっと待って」と言うと、おばさんは家の中に入り、まどかが投げつけた箱と同じ包み紙で包まれた、まどかの箱よりも少し大きな箱を持って出て来た。


「はい、ケンジ君、バレンタインのチョコレート。まどかと一緒に作ったから、味は同じだけどね」と言って、僕にその箱を渡した。

そして「明日も、遊びに来るの?」と聞いた。おばさんがチョコをくれたことで、僕は一瞬で怒りが収まり「もちろん……」と答えた。



家に帰って、まどかが僕に投げつけた箱を開けると、小さな少しいびつな形のハート形のチョコがいくつも入っていた。


おばさんがくれた、箱の方も開けると、それは、去年まどかが「義理チョコだから……」と言ってくれたと同じ、きれいな形の大きなハート形のチョコが入っていた。



明らかに、おばさんがくれたチョコの方が見た目はきれいだった。でも、僕は、僕のために、一生懸命まどかが作ってくれた、そのいびつな形のチョコの方が嬉しかった。



そんな、いびつな形の小さなハートのチョコを1個口に入れた瞬間、突然、姉が「ケンジ、チョコ貰った?」と言って、僕の部屋に入って来た。


僕の机の上に並ぶ、二つの箱を見つけると、「うわ~本命の手作りチョコじゃん?それも二つも……やるじゃん、ケンジ……」と言いながら、勝手に、まどかの作った小さなチョコを一つとって口に入れた。


「このチョコ、形は悪いけど、甘くておいしいじゃん」と姉は言った。


僕は「勝手にとるなよ」と怒って、姉を部屋から追い出した。



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