退院したまどか
その三日後、僕は部活に行くため、学校へ向かっていた。
突然「よっ!」と言う声とともに肩を『ポン』と誰かにたたかれた。
驚いて振り向くと、そこには制服を着たまどかがニコニコしながら立っていた。
「この前は、お見舞いに来てくれてありがとね」病院のときとは明らかに違う満面の笑みで僕に見舞いのお礼を言った。
「無事退院出来て良かったな」僕が言うと「盲腸だもん、大したことないよ」とまどかが答えた。
「でもね、お毛毛、全部そられて、今、少し生えてきたから、そこがチクチクして痛いんだ」と恥ずかしげもなく、そんな告白をした。
「そんなこと、男の俺に言う?」僕があきれて言うと「君は私の中では同性の友達と同じだから構わないんだ」と言ってまどかは笑った。
「同性の友達にも言わんだろ?そんなこと……」
そう言いかけていた僕の言葉をさえぎり「ちょっとちょっと、手術の痕見せたげようか?」と聞いてきた。
僕は、少し興味があったものの『うら若き乙女の腹を見るなんて……』という照れくささから「いらんよ」と言った
「いいから、いいから……遠慮しなくても」
「遠慮じゃな……」そう言いかけた僕の手を取ると、周りを『キョロキョロ』と見まわし、他人がいないことを確認すると、家と家の細い路地に僕を引っ張り込んだ。
そこで、僕を自分の前に立たすと、家の壁に背中をつけ、スカートのウエスト部分と制服の裾を持って、『バッ』と上下開き、僕に右の腹を見せた。
白い肌に赤黒いミシン跡のような傷痕が痛々しかった。
「どう?痛そうでしょ?」
さっきは、「見たくない」と言っていた僕も、その傷……ではなく腹に見入っていた。
僕が、傷ではなくその横の黒いぽつぽつとした毛の生え初めに目をやっていることに気付いたまどかは、「はい、おーしまい」と言って、上げていた服を直した。
僕は「もう一回、もう一回、そのもうちょっと下の方も……」とお願いした。
すると、まどかは「10年早いんだよ……」と笑いながら路地の外に走り去った。
まったく不思議な……妖精のような女の子であった。




