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僕の性日記Ⅱ  作者: 水野 流
Ⅷ章 落
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左頬の痛み


「えっ!?……」

僕の答えを聞いたまどかは、あまりの自分の想像との開きに、それ以上の言葉が出なかった。


「えっ!? 今、何て言ったの?」

まどかは、自分の聞き違いではないかと、再度、僕に確認した。


「中学二年の時!」僕は、やけくそになって、大声でそう言った。


それを聞いたまどかは、しばらく声が出なかった。



やがて、まどかは自分の声を絞り出すように「ウソでしょ……?」とだけ聞いた。


「ウソじゃない……」僕は、泣きたい気持ちで小さくそう言った。


その僕の答えに、まどかは、今度は強い口調で「……『中二』って……中二のいつからよ!?」

完全に、先ほどの穏やかに話していたまどかとは、違っていた。



僕は、眠気が襲ってきていたこともあり『もう、どうにでもなれ!』と、やけになって、本当のことをぶちまけた。


「中二の時に、お前が、盲腸で入院していた時……お前の家にお前の学校の届け物を持って行った時!」そう、はっきりと言った。



その僕の答えを聞いて、まどかは明らかに動揺し、そして再び、沈黙が続いた。



「なんで……?なんで、あの時……どちらが……どちらが、先に誘ったのよ……?」まどかの質問は、次に移った。



その答えには、僕も躊躇した。

おばさんに、『誘惑されたような……?』『僕が襲ったような……?』

どちらにしても、まどかに言える話ではなかった。 


僕は、小学校の時、リョウちゃんのお母さんに、お風呂場を覗いたことを問い詰められた時のように、うなだれて、下を向いて黙った。



「答えてよ……はっきりと……」まどかは、黙ってしまった僕を責めた。


「いいわよ、あなたが答えないんだったら……ママに聞くから……」


その、まどかの言葉を聞いて、まどかへ許しを請うことへの気力さえ失くしていた僕は、

「僕が、おばさんのこと抱きしめたんだ。『おばさんのことが好きだ』って」


「えっ!?……」 まどかは、その僕の返答を聞き、小さくそう言うと、再び沈黙した。



しばらく、二人の間には、さらなる重苦しい空気が流れた。



そんな中、やっとまどかが口を開いた。

「それなら、なぜ、私と付き合ったのよ……?」



もうすでに、僕の頭の中の思考は完全に停止していた。

襲い来る睡魔の中「それは、お前が誘ったから……」


いかなる場合でも、絶対に口にしてはならない『禁句』であった。



「パシーン!」

僕の左頬に、眠気を一気に吹き飛ばす、冷たい痛みが走った。


「サイテイ!」


顔を、上に向けると、そこには、目に涙をいっぱい溜めたまどかの姿があった。


「ケンジ君が、そんなこと言う人だとは思わなかった!……さよなら!!!……」


それだけ言うと、まどかは、寮の方へ駆けて行った。



正気に戻った僕は、ブランコから立ち上がり「まどか……」と言って、右手を差し出したまま、そこから動くことができなかった。


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