公園のブランコで
再び、寮から出て来たまどかは、僕を前の公園に誘った。
僕たちは、時々、二人ではしゃぎながら遊んだこともあるブランコに、二人並んで腰を掛けた。
「ケンジ君も寝てないんでしょ?」そう言って、まどかは僕も気遣ってくれた。
「お前も、寝てないんじゃないのか?」僕の問いかけに、まどかは首を振り「うぅうん、まどかは、美幸のところで少し寝た」そうとだけ答えた。
しばらく、沈黙が続いた。
まどかは、下を向いて、靴で地面に何かを書きながら、小さな声で「やっぱりさ……私たちのベッドで、ママの下着見たときは、正直ショックで、何が何だか分からなくなったの……でもね、美幸んちで、少し落ち着いて、冷静になって考えたら、ママもパパと別れてさみしかったんだろうな~って……それなのに、まどかだけが、ケンジ君と幸せを謳歌して……きっと、罰が当たったんだよ……」
「まどかさー 今朝、眠るまでずっと『ケンジ君とどうすればやり直せるかな?』って考えてたの……」
まどかが、そう言った時、僕は、そのまどかの言葉に期待して「ごめん!まどか、俺、心入れ替えるから、だから、昨夜のことは水に流して、また、二人でやり直そう……これからは、まどかの望むような、まどかだけを愛する、理想の男になるから……だから、許して……」そう言って頭を下げた。
あまりの、僕の都合の良い謝罪に、まどかは驚いて僕の顔を見た。驚いたというより、あきれていたのかもしれない。
まどかは、その僕の調子のいい話にはのって来なかった。
「で……いつからなの?」
僕は、急なまどかのその核心を突く質問に先ほどの調子の良さから一変し、動揺した。
とりあえず、僕は、適切な答えを見つけるための時間稼ぎとして「えっ!?」と、質問の主旨が分からないふりをした。
「『いつから?』って?」
「だから、ママとああなったの、『いつからか?』って聞いてるの!」
まどかは、少し苛立って質問を繰り返した。
「『昨日から』ってことはないでしょ!? ママ、ケンジ君に呼ばれないと、ケンジ君のアパートになんか行けっこないもんね? しかも、ママ、私との約束の日よりも一日早く来てるんだから……」
僕は、ごまかそうとして考えていた嘘の答えを先にまどかに否定されてしまい、模範解答が思いつかなくなってしまった。
頭の中が、一瞬で空白になり、黙り込んだ。
まどかの質問の答えを探すよりも、頭の中は『落ち着け……落ち着け……』という、自分の動揺を抑える言葉で一杯になった。
「そんなこと、後で、ママに聞けばすぐに分かるんだから、正直に言って……私は、正直な答えが、ケンジ君の口から聞きたいのよ」
その、まどかの説き伏せるような言葉に、何も考えられなくなっていた僕は、つい「中二から……」と正直に答えてしまった。




