戻って来たまどか
夜が白々と明け、通勤の人たちで、公園と寮との間にある道路がにぎやかになって来た頃、一台の単車が寮の駐輪場に戻って来た。
それは、僕たちが待ち焦がれたまどかだった。
少し、眠りかけていたおばさんは、慌てて目を覚ますと、車を降りて、まどかのもとへ駆け寄った。
僕たちを見たまどかは、初め驚いた顔をした。
そして、僕たちを無視して、寮の中へ入ろうとした。
そんなまどかの手を取り、おばさんが引き留めた。
「待って、まどかちゃん……ママが悪かったわ! あなたたちが付き合ってるなんて知らなかったから……」
それを聞いたまどかは、初め黙っていた。
しかし、おばさんが、泣きながら強い力でまどかの手を引っ張るもんだから、まどかはついに
「当たり前でしょ?知ってて、あんなことされたら、たまったもんじゃないわ!……痛いから、手を放してよ、ママ!!!」と声を荒げた。
それを聞いて、おばさんは、慌てて掴んでいた手を離した。
「どこへ行ってたの? ママ、心配したのよ……」
そのおばさんの問いかけに「心配しないで、ママが心配するようなところじゃないから……あのアパートのすぐ近くに住んでる女友達のところ。そこで、寝かせてもらったの」
まどかは、そう言ってから、僕の方を見ると「ケンジ君も、待っててくれたの? せっかくだから、少し話しする……?」と聞いた。
僕は、予想外のまどかの言葉に、小さく「あっ……ああ」と頷いた。
おばさんは、自分もその話に加わりたそうだったが、「ママは、私の部屋で休んでて、昨日遠いところからきて、一睡もしてないんでしょ?ベッドで、横になってていいから……」まどかは、そう言って、おばさんを気遣った。
「一緒に、部屋まで行くわ。悪いけど、ケンジ君は、少しそこで待ってて」そう言うと、泣き続けるおばさんの肩を抱いて、寮の中に消えた。
僕たちの中では、まどかが一番落ち着いているように感じた。




