さらなる地獄
部屋に戻ると、おばさんが、上半身裸で、急いでブラジャーを付けていた。しかし、慌てているためか、うまく後ろのホックができず、帰って来た僕に、「早くしめて」と言って、背中を向けた。
おばさんは、僕に背中をむけたまま「あなた、あれほど、『まどかには手を出さないで!』って言ってたのに、なんで、言うことを聞いてくれなかったの!?」と、怒りをあらわにした。
こんな夜遅くに、僕の部屋を訪ねてくる女子が、僕と肉体関係がないことなどありえないのは、誰にでも分かることだった。
僕は、先ほど下の階の人に言ったと同じく「スミマセン」と、小さく言うしかなかった。
倒れそうなくらい、血の気が引いていた。
「あなた、『スミマセン』じゃないわよ! まどかちゃんに、もしものことがあったらどうするつもり? あなたには、単なる遊び道具なんでしょうけど、私にとっては大切な一人娘なのよ! もし、何かあったら責任とれるの!!!?」当然のことながら、おばさんの怒りは本物だった。
『遊び道具じゃないです!僕にとっても大切な恋人です!』そう反論したかったが、それを言えない、自分の愚かな今までの行動を悔いた。
僕は、興奮するおばさんの気を納めるため、そして、自分の頭の中も整理するため「いい?ここは、一旦落ち着こう」そう言って、おばさんをなだめた。
僕も、自分の服をきちんと身に着け、おばさんと、とりあえずコタツに座り込んだ。
おばさんは「まどかちゃん、ごめんなさい……」と言って、泣いていた。
僕が、慰めようと肩を抱こうとすると「触らないで……」と言って、僕の手を振り落とした。
「まどかちゃん、まさか、死んじゃったりしないわよね……?」と、僕に訊ねたのか、独り言なのか分からないことを言って、また、泣き崩れた。
僕は、そんなおばさんに、かける言葉が見つからず「大丈夫だよ、まどか、そんなバカじゃないよ……」と、安易な慰めを口にした。
それを聞いたおばさんは、安心するどころか「そんなこと、なんであなたに分かるのよ!?」と、さらにむきになって、僕にかみついた。
僕は、すでに返す言葉もなかった。




