零れ落ちる幸せ
そんな事もありながら、それでも、それなりに幸せに僕とまどかは半同棲生活を送っていた。
まどかは、もうすっかり僕の女房気取りだった。
僕のことを冗談で『あなた』と呼んだりすることもあった。
僕は、まどかにそう呼ばれることが、少し気恥ずかしくも、それでも嬉しかった。
しかし、僕のような最低男に、神様はそう長くはほほ笑んでくれなかった。
大学1年のクリスマス・イブの日にその幸せの日々が崩壊する、僕たちにとって最大にして最悪の出来事が起こってしまう。
冬休みが、始まり、まどかは自分の女子寮に帰る必要が無くなり、月末に実家に戻るまでの間は、僕のアパートに入りびたりとなった。
僕のアパートには風呂がなかったので、近くの銭湯に二人で通った。
まさに、『かぐや姫』の『神田川』を地で行くような感じだった。
寒い中、僕はまどかの肩を抱き寄せて、二人で震えながらアパートに戻った。
そして、交わった。
これ以上の幸せはないと、僕もまどかも感じていた。
まどかはいつも、「幸せすぎて怖い……」と、それこそ、『神田川』の歌詞に出てきそうなことを、毎晩眠る前に言っていた。
年末の帰省の予定を聞いた時、まどかは、「クリスマスの次の日にママの実家に帰る」と言った。
「それなら、クリスマス・イブは二人で過ごす?」
僕がまどかに訊ねると、まどかは申し訳なさそうに
「イブは、ホテルでサークルの演奏会があってダメなの。演奏会の後、そのホテルにみんなで泊まらなくちゃならないみたいなんだ。嫌だけど…… 演奏会をお願いして来たホテルが気を使って、ご接待してくれるんだって……イブの日にそんなことされたら、逆に迷惑なのに……彼氏のいる女の子たちはみんな『ブーブー』言ってる……だから、25日のお昼に二人で、クリスマスしましょう。二人でケーキ食べるだけだけしかできないけど……クリスマスは、夕方ママが車で迎えに来ることになってるから……その代わり、来年戻ってきたら、二人の新年会を盛大にやろうね」と言った。
まどかが、クリスマスの翌日におばさんの実家に帰るということで、自分も、クリスマスの翌日、家に帰ることにした。




