おばさんの涙
その夏休みも、まどかは、宮本さんたちと毎年行っている宝塚の観劇一泊旅行に出かけた。
僕も、その日に合わせ、毎年のように母に言っている『キャンプに行く』という嘘をついて、まどかの出かけた後、まどかの家に行った。
おばさんは、すぐに、僕を家の中に招き入れると、「ケンジ君……」と言って、僕に抱きつき、涙を流した。
まどかから、おばさんの状況は聞いていたものの、ここまでとは思わず、少し動揺した。
そして、そのおばさんの状況に驚いたふりで「どうしたの?」とおばさんに訊ねた。
初め、おばさんは、その僕の質問には答えず、ただ、僕にすがって泣くだけだった。
僕は、そんなおばさんに抱きしめられたまま、ずっと、おばさんの髪をなで続けた。
少し、落ち着いてきたおばさんは、「ゴメンね……」と言って、僕から離れると、台所の椅子に腰かけるよう僕に言った。
おばさんは、まだ「ヒック……ヒック……」と声をしゃくりあげながら、「ゴメンね……今、コーヒー淹れるから……ホットでいい?」と聞いて、コーヒーミルで豆を挽き始めた。
「そんなの、いいから、ここにかけて、事情を話して」僕は、おばさんにそう言った。
おばさんは、後ろを向いたまま「いいの、このままの方が……ケンジ君の顔見ると、また、泣き出してしまいそうだから……」と言って、コーヒーミルを回す手を休め、指で、涙をぬぐった。
「この前、マルアイ銀行で横領事件があったの知ってるでしょ?あの横領した女、ウチの主人の愛人だったの……私も、うすうすとは感づいてはいたけど、今度の事件で、本当だったってことが、決定的になって……あの女、横領したお金は、若い自分の恋人に貢いで、ウチの主人は、愛人関係になって利用されただけ……バッカでしょ? 恥ずかしいったりゃありゃしない。それで、警察とか銀行とかに調べられて、『俺は左遷される~』って、私に怒鳴り散らすのよ……私、今回のことで、ほとほと愛想が尽きたわ……」
おばさんは、そう言うと、またしても、コーヒーミルを回す手を止め、今度は両手で顔を覆って、泣き出した。
僕は、そんなおばさんの姿が、とてもいたたまれなくなり、椅子から立ち上がると、後ろから、そっとおばさんを両手で抱きしめた。
おばさんは、自分の顔を覆っていた手を僕の手に移動させて握ると、まだ、涙の滴り落ちる顔をこちらに向け、口づけをせがんだ。
僕は、そっとおばさんの唇に自分の唇を重ねた。
そのまま、おばさんの頭に両手を回すと、舌を出して、おばさんの舌に絡めた。
おばさんも、大きく口を開け、その僕の舌を向かい入れた。
お互いの口の中や外で、舌と舌を絡め合いながら、僕たちは台所の床に崩れ落ちた。
僕は、すぐにおばさんのスカートの中に自分の手を滑り込ませた。
おばさんは、そんな僕の手を握り、「ここじゃイヤ……ベッドで……」と言った。
引きかけの、コーヒーの香りだけが、その部屋を包んでいた。




