高2のバレンタイン
冬休みになっても、状況は変わらなかった。
僕は、ますます、まどかの母親にのめり込み、まどかのことなど、どうでもよくなりつつあった。
クリスマスも、子供たちの施設にボランティアに出かけたまどかのいないスキを狙って、おばさんと交わった。そのことに対する、罪の意識は、もうすでになくなっていた。
冬休みが終わって、高校2年の3学期が始まり、2月14日が訪れた。
僕は、まどかからのチョコレートは期待していなかった。
かろうじて『まどかの彼氏』と思われていた僕に、チョコを持って来る他の女子もいなかった。
『どうせ、おばさんがくれるから、こんなショーベンタレの女子達のチョコなんかいるか!』と心の中でうそぶいた。
授業が終わり、その日も、一人寂しく下校した。
僕は、一人で下校する時も、『もしかすると、まどかがいるかもしれない』とひそかな期待を持って、遠回りの道である河原の公園を通って、帰っていた。
『ああぁ~ まどかと帰ってる時は楽しかったのにな~』そんなことを、その日も考えて、空しく、公園に行くと、ウチの高校の制服を着た一人の女子が、僕たちがいつも座って話し込んでいたベンチに座っていた。
『もしかして……?』と目を凝らすと、それは、まぎれもなく、僕のSweetheart……まどかだった。
それを見つけた僕は、内心嬉しくて仕方がなくなった。
しかし、まどかがそこにいる理由が分からない状況で、『ここで、嬉しそうに彼女に駆け寄ったのでは、男が廃る』と意地を張り、まどかを無視して素通りしようとした。
僕に気付いたまどかは、ベンチから『スクッ!』と立ち上がり、僕の方に駆け寄って来た。
そのまどかの行動は、意外で、嬉しい反面、びっくりもした。
「けんじく~ん 待って~」まどかは、僕の方に向かって駆けて来た。
これまでの、まどかの僕に対する態度からは想像できない、その明るい様子に、少々驚いた。
気持ちの中では、飛び上がりたいほど嬉しかったが、態度はクールに決めていた。
僕は、駆け寄るまどかの方を振り向いただけで、何も言わず、その場に立ち止まった。
僕のところに息を切らして駆け寄ったまどかは、「ケンジ君、ハイ」と言って、きれいな包み紙に包まれたリボンのついた小箱を差し出した。
「なんだよ、これ?」僕は、中身が分かっていたが、わざと怒った風で、ぶっきらぼうにそう言った。
「バレンタインのチョコレート」まどかは、悪びれることなく、嬉しそうにそう答えた。
僕は、内心嬉しくてたまらなかった。
しかし、男の意地があった。
「いらねぇよ、そんなもん」僕は、突き放すようにそう言った。
「そんなこと、言わないで……受け取って……」まどかは、笑いながら、差し出した手を引っ込めなかった。
「いらねぇ……」僕は意地になっていた。
その、僕の言葉を聞いて、まどかは「ケンジ君のバカ!」と言って、その箱を僕に投げつけるふりをした。
『中2の時と同じだ』僕は、そう思って、両手でその箱を避けようと顔を隠し身構えた。
しかし、箱は飛んでこなかった。
僕が、恐る恐る自分の手をおろすと、前で、ニコニコ笑うまどかの顔があった。
「まどか、もう子供じゃないから、そんなことはしませんよ~」とおどけた。
「いいから、いいから……ちょっと、こっちに来て、箱開けて……君の喜ぶものも入ってるから……」そう言うと、僕の手を引っ張って、さっき座っていたベンチに僕を連れて行った。
ベンチに座ると、早くその箱を開けるようにまどかが僕を促した。
僕は、意地を張っていたため、不機嫌な振りで、その包みを開けた。
その中には、まどかの手作りチョコの入った箱と、一通の封筒が入っていた。
「開けてみて」まどかは、僕の肩に頭をのせ、そう言った。
僕は、すでに、意地を張って不機嫌そうに振舞うのがバカバカしくなっていた。




