おばさんの疑問
ダメなことは、分かっていた。しかし、次の日も、まどかと登下校さえできなかった僕は、まどかが塾へ行った隙に、まどかの家に行った。
前と同じように、靴を裏に隠し、前と同じようにおばさんと交わった。
その時だけは、まどかのことも忘れ、おばさんとの情事に没頭した。
まどかへの、罪の意識が少しづつ、薄らいで行った。
おばさんは、僕との行為が終わると、それも前と同じように、おいしいコーヒーを入れてくれた。
コーヒーを飲みながら「あなたたち、どうしちゃったの? 以前は、あんなに仲良さそうにしていたのに……」と、聞いてきた。
僕は、その答えに躊躇した。
僕は、仕方なく、その時思いついた嘘の返答をした。
「まどかが、お寿司を持って来たとき、母に勉強のことで小言を言われて腹が立ってたんで、ついまどかに八つ当たりしたんだ……それに、おばさんにも、まどかとは付き合うなって言われてたし……辛く当たった方がいいだろうと思って……『お前の作った寿司なんて、うまい訳ないだろう』って……『今、昼メシ食ったところで腹いっぱいだから、持って帰れ』って……そしたら、まどか、中学校の時のチョコレートみたいに、俺にお寿司投げつけて、泣いて帰ったんだ」
そもそもの原因を、母やおばさんのせいにして、昨日まどかがおばさんについた嘘と矛盾しないようなことを言ってごまかした。
その僕の嘘の話に、おばさんは自分が想像していたことと違ったのか、少し『ホッ』とした表情をした。
「そうだったの? まぁーまどかちゃん、嬉しそうに、一生懸命お寿司つけてたから、ケンジ君が、本当にそんなこと言ったんなら、怒る気持ちも分からなくもないけど……ただ、その程度のことで、まどかちゃん、未だにあんなに怒ってるの?」
おばさんは、不思議そうな顔で、さらに、訪ねてきた。
「……」僕は、それ以上、おばさんの質問に答えて、ボロが出るとまずいと思い、そこからはダンマリを決め込んだ。
「まあ、いいわ。あなたとまどかが変なことになっていないんなら……私も、それとなく、ケンジ君と仲直りするように言っておくわ……」
僕は、そんなことをおばさんに言われると、ますますまどかは怒り、下手をすると、本当のことをおばさんに言うかもしれないと思い、そのおばさんの言葉を丁寧にお断りした。
おばさんは、「分かったわ…… じゃあ、私は、黙って静観しておく……」と言ってくれた。
その後も、まどかは、僕を避け続けた。
僕もすでに、まどかに許しを請うことは諦めて、知らん顔を決め込んだ。
そうして、まどかのいない時には、まどかの家に行き、おばさんとのアバンチュールを楽しむことが新たな日課となった。
そんな中、同じクラスの木村が「お前、最近、まどかと一緒にいることなくなったけど、別れたの?」と言ってきた。
僕が、黙って無視していると「お前が、別れたんなら、俺、まどかに告白しようかな~?」と言った。
その言葉を聞いて、僕はおもわず、彼の胸ぐらをつかみ、「そんなことしたら、ぶっ飛ばすぞ……俺たちは、別れてない!!!」と叫んだ。
僕の突然の剣幕に驚いた木村は「分かったよ……まだ、お前と付き合ってるんなら、いらんちょっかいは出さないよ。だから、この手、外せよ」と言って、僕をなだめた。
「悪かった……」僕は、つい興奮して怒ったことを謝り、手を離した。
「まったくもう……別れてないんなら、もっと、分かりやすく、仲良くしてろよ。みんな誤解して、まどかのこと狙ってるぞ」と、僕に忠告してくれた。
その言葉を聞いて、僕は、ハイエナたちの中に、可愛い自分のウサギを離したような気持ちになって、実に身勝手な嫉妬と焦りを感じた。




