一人ぼっちの下校
その日の授業が終わって、やはり、まどかに謝りたかった僕は、まどかのクラスに行った。そこに、まどかの姿はなかった。
まどかと同じクラスの夏未がいたので、夏未に「まどかは?」と聞いた。
夏未は「さっきまでいたけど、なんか、急いで帰ってたよ……あんたと帰ったのかと思ってたけど……」と答えた。
僕は、「ありがとう」とだけ、お礼を言って、すぐに、まどかを追いかけた。
しかし、途中でまどかに会うことはなかった。
いつも、遠回りしている河原の公園にも行ったが、そこにもまどかはいなかった。
それまでは、まどかと帰ることが当たり前で、そのことに対する喜びなど、特に深く感じたことはなかったが、こうして、一人で下校をすると、思いのほか、寂しく悲しかった。
その時、初めて、まどかに『近くにいて欲しい』と思った。
僕は、そのまま、まどかの家に寄った。
家からは、おばさんが出て来た。
「あら、ケンジ君、昨日は、まどかが、失礼な態度とって、ごめんなさいね」と言って、「まどかちゃ~ん! ケンジ君が来られたわよ」と、奥にいるまどかを呼んだ。
まどかは「会いたくないから、『帰って』って言って」と、僕に聞こえる声で奥から叫んだ。
「どうして? せっかく、来てくださってるのよ」おばさんは、再度そう言ってまどかを呼んでくれたが、やはりまどかは「いいから……『帰って』って言って」とかたくなに僕と会うことを拒否した。
おばさんは、困った顔で「ゴメンナサイね、わがままで」と僕に謝った。そして、小さな声で「あなたたち、何があったの?」と、僕に訊ねた。
僕は、正直に話せる内容ではないその話を「何でもないです」とごまかして、まどかの家を出た。
僕は、いつまでも僕の謝罪を受け入れようとしない、まどかの態度に少々腹が立ち始め、『明日まどかが塾に行ったら、また、この家に来よう』と、密かに、先ほど見たおばさんの胸と足を思い出してダメ男の気分転換を図ろうとしていた。




