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僕の性日記Ⅱ  作者: 水野 流
Ⅵ章 祭の後
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コーヒーを飲みながら


「コーヒーれるわね」

おばさんは、そう言うと、コーヒー豆を取り出し、コーヒーミルで引き始めた。部屋に、コーヒーのいい香りが漂った。



ガステーブルにかけたポットのお湯が『ヒューヒュー』と音を立てて、湯気を放っていた。



「はい、どうぞ」おばさんの入れてくれたコーヒーは、とてもいい香りで、家で飲む、インスタントコーヒーとは、格段の違いがあった。



『フレッシュ』と『コーヒーシュガー』も、家の『クリープ』と『上白糖』とは違って、喫茶店で飲んでいるような気分になった。



おばさんは、自分のコーヒーもいれ、僕の前に腰かけた。



「ケンジ君、おばさんと、こんな関係になって、どう思う……?」今さらの質問だった。


「どうって?」僕は、おばさんの質問の主旨が分からず、そう訊ねた。


「後悔は、してないの?」


「後悔……?」さらに理解ができず、僕はおばさんに続けざまに訊ねた。



「だって、こんな年増のおばさんと、こんな風になって……もしかすると、可愛い好きな彼女ができても、『まどかちゃんと付き合っちゃダメ!』っていうように、邪魔されて、彼女もできないかもしれないんだよ……」とおばさんは笑いながら答えた。


「……」僕は、答えなかった。



「私ね……『愛とか恋とか信じない!』って、言ったでしょ? でもね、この前、ケンジ君が『私との関係終わらせたい』って来た時、本当は……」


おばさんは、一旦、話をやめた。


そうして、「笑わないで聞いてね」と前置きをすると、話を続けた。


「本当は、私、あの時、とっても、悲しかったの。『男なんか信じない!』『絶対に好きになんかなんない!』って決めてたのに、『ケンジ君と会えなくなるのはイヤだ』って……こんなおばさんなのに、ケンジ君みたいな若いにそんな気持ち持つなんて、ずうずうしいよね?……おかしいよね?」

おばさんは、コーヒーカップを額につけ、顔を隠すようにして、そう言って笑った。


僕は、そのおばさんの話を、黙って聞いていた。



「まどかには、『幸せになって欲しい』って、母親だから当然思ってるの。私みたいに、好きでもない人が、初めてのひとなんてことになって欲しくないから……だから、まどかの最初は、本当にまどかが愛した人であって欲しいと願ってるのよ……でも、それが、ケンジ君だったら、イヤ! 絶対にイヤなの……それって、私と関係を持ってるからでもあるし、そんな母親として娘を思う気持ちとは別の……女の……なんだろ……?」



………… しばらく、沈黙の時間が続いた。



「だから、ケンジ君……まどかも、あなたのことが好きで、もし、ケンジ君も嫌でなくって清い交際を始めるんなら、私は、それを祝福したいと思うのよ……でも、それ以上は絶対に無理!……私と関係した男性が、まどかにも同じようなことするなんて……絶対に……」



「それは……」僕が、正直に今のまどかとの関係を言おうとした時、「ただいま」と言って、玄関のドアが開いた。


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