おばさんとの再開
僕は、しばらく後悔で、その場を動けなかった。
『まどかに対して申し訳ないことをしてしまった』初めは、そういう当然の思いだった。
しかし、時間がたつにつれ、『あいつは、俺の女なのに、それを今さらもったいぶって拒否するからいけないんだ!』という、実に身勝手な責任転嫁によって、自分を正当化しようとしていた。
そうして、その身勝手な責任転嫁は、最終的にまどかの母親にまでおよび『そもそも、まどかが俺との関係を拒否するきっかけを作った、その母親が悪い!』そんな、理不尽な思いが僕の頭の中を支配した。
僕は、横に落ちている弁当箱を拾い上げると、それを返しに行くのを理由に、まどかの家に向かった。
呼び鈴を押して、『もし、まどかが出てきたら、まどかに素直に謝ろう……』、まどかではなく『もし、おばさんが出てきたら、関係を再開するようお願いしよう……』そんな、二分の一の賭けのようなことを考えていた。
まどかの家の玄関で呼び鈴を鳴らすと、「はーい」と言って、おばさんの声がした。
密かに、まどかが出てくることを願っていた僕は、やはり、少し動揺した。
「あら? ケンジ君、どうしたの?」おばさんは、久しぶりの僕の訪問に、驚いた様子だった。
そして「この前は、ごめんなさいね」と言って、公園でのことを詫びた。
「……」
僕が、無言で立っていると、おばさんは「どうしたの? まどかちゃんに用事? まどかなら、さっき、友達のところに行くって、出かけたわよ。夕方まで帰らないって……もしかすると、あなたと、内緒でデートするのかと思ってたけど、違ったのね?」と安心したように言った
「これ、さっき、まどかが『お寿司つけたから』と言って、持って来てくれたお弁当箱、返しに来ました」僕は、先ほどまどかが残していったブルーの弁当箱を差し出した。
「あら? あの子、急に『お寿司つけるの教えて』って言うから、どうしたのかと思ったら、ケンジ君 家に持って行ってたの?」おばさんは、そう言って、僕の手から、弁当箱を受け取った。
「ウチが明日から、新しい家の建て替えに入るから、『そのお祝いだ』と言って持って来てくれたんです」
「あら……そうだったの、それは、それは……」
僕は、おばさんとの会話は上の空で、その美しい顔とすらりと伸びた足に見とれていた。
その、弁当箱を返すという用事が済んだにもかかわらず、そのまま何も言わず、そこに突っ立っている僕に対し、おばさんは、「どうしたの?」と不思議そうに聞いた。
『まどかが夕方まで戻って来ないのなら、今からでもできる……』
そう思った僕は、まどかへの謝罪の気持ちなど完全に忘れ、小さな声で、「おばさんと、したい……」と言った。
おばさんは、唐突な僕のお願いに「えっ!?」と驚いて、聞き直してきた。
僕は、もう一度、今度は大きな声で、おばさんに言った。
「おばさんと、前のようにしたい!」
そんな僕のお願いに、おばさんは始め驚いた顔を見せたが、やがて「もう、片思いの彼女への義理立てはいいの?」と聞いた。
「もういい……あんな奴、どうだって」
そう僕が吐き捨てるように言うと、おばさんは、そんな僕の言葉に「あらあら、穏やかじゃないわね? いいわよ、この前のお詫びもあるし……悩みがあるんなら聞いてあげるから……中へお入りなさい」そう言って、笑いながら僕を家の中に招き入れた。




