力づく
その日は、次の日から愛の巣の取り壊し作業が始まるという日曜日の午後だった。
僕は、僕たちの愛の巣の最後だからということで、まどかを、『昼食がすんだら来るように』と呼んでいた。
僕が、その家に行って待っていると、まどかが、いつものように、自分の家と反対側にある裏口から「お待たせ」と言って、入ってきた。
まどかは、いつになく、明るかった。
「今日の、お昼さー まどかが初めて、お寿司つけたの。持ってきたから、よかったら、食べてみて」そう言って、小さな弁当箱を差し出した。
その中には、錦糸卵や紅しょうがののった、きれいに盛られたばら寿司が入っていた。
「明日から、ケンジ君家の新しい家の建て替えが始まるから、そのお祝いのつもりで、作ったのよ」
まどかは、そう言って、寿司を食べる僕の顔を、ほほ笑んで見ていた。
「どう、食べれる?」まどかが、聞いた。
お世辞ではなく、本当においしい寿司だった。
「うまいよ」僕はそう言って、腹が一杯であったにもかかわらず、その寿司を一気に平らげた。
まどかは、その僕の様子を見て「よかった……」と言って、喜んだ。
少なくとも、そこまでは、二人は幸せだった……あの、僕の愚かな行為さえなければ……
その後、僕たちは、いつものように、二人で肩を寄せて、和室の畳に座ったまま話を始めた。
「この部屋で、こうやって二人で話せるのも、今日限りになったな……」
僕が、そう言うと、まどかは「まどか、この部屋であったこと、一生忘れない。ケンジ君と二人で、とっても楽しかったもん」と言った。
感傷的な話に、少しの間、話が途切れた。
僕は、ここぞとばかりに「まどか……」と言って、まどかの唇に自分の唇を重ねようとした。
しかし、やはり、まどかは「ダメだよ……」と、僕の口づけを拒否した。
すでに、頭の中が、まどかとのセックスモードに入ってしまっていた僕は、「今日で、こんな風に二人っきりで居れる部屋が無くなってしまうんだから、今日ぐらいさせてくれたっていいじゃないか!」と声を荒げた。
「だって、約束したでしょ? しばらくは、身体の関係はやめるって……」
「そんなの、まどかが、勝手に言い出したことじゃないか! 俺、たまっちゃって、どうしようもないんだよ!」僕は、まどかに、自分の苛立ちをぶつけた。
まどかは、黙って下を向いていた。
「ごめんなさい……でも、やっぱり、今は私したくない……もう少しだけ待って……」
「……」しばらく、お互いに、沈黙した。
「たまってるんなら、私、口でしてあげるから、それで、我慢して……ねえっ、それでいいでしょう?」
まどかは、僕にそう言うと、僕の股間に膝まづき、ズボンのチャックをおろして、僕の分身を取り出すと、恐る恐る、それに口をつけた。
中途半端に固くなっていた僕の分身に、まどかの歯が当たった。
まどかは、慣れないそんな口戯を、一生懸命、ときにむせながら続けた。
本当は、そんなことをまどかにさせたくはなかった。
二人がセックスをしてお互いに興奮している時ならまだしも、まどかの気持ちが冷静なまま、僕だけを慰められるのが、なんだかみじめに感じ、自分の我がままに対する自責の念からなのか、訳の分からぬ劣等感が自分の頭全体を支配した。
それが、いつまでも、かたくなに僕との肉体関係を拒否するまどかへの怒りに変わった。
僕の目の前には、僕の股間に口をつけるまどかの頭の向こうに、スカートに隠された、まあるい可愛いまどかのお尻があった。
『こいつも俺と同じように興奮させてやる!』
そう思うと、僕はその尻に手を伸ばしていた。
そして一気に、その下にある、純白のパンティーを脱がそうと、まどかの身体をひっくり返した。
その僕の、突然の暴挙にまどかは驚き、咥えていた僕の分身を吐き出すと、「ちょっと……ケンジ君……いやだ……やめて……」と言って、足をばたつかせ、抵抗した。
まどかのスカートがめくれ、久しぶりの黒い茂みが、脱げかけたパンティーの隙間からわずかに見えた。
僕は、その光景と、まどかの抵抗するさまに、ますます興奮し、強い力で、嫌がるまどかの身体を押さえつけた。
「嫌だったら……やめてよ……いたーい……」
まどかは、必死にその僕の暴挙に対して抵抗した。
「冷静になって……ねえ……ケンジ君……」
まどかは、そう言って、僕に懇願した。
しかし、そんなまどかの必死の訴えも、すでに、性の興奮で周りが見えなくなっていた僕の耳には届かなかった。
まどかの乱れたスカートの下にある、パンティーの中に手を入れようとした瞬間、
「キャー!!!」
力ではかなわないと思ったまどかが、大声を上げた。
その大声で、僕がひるんだすきに、まどかは、ずり下がったパンティーを上げ、僕の手の中から逃れた。
部屋の襖戸にまで逃れたまどかは「ケンジ君のバカ!……これって、レイプとおんなじじゃん!!! ヘンタイ……」
そう言って、その部屋を飛び出した。
そのまどかの怒りに、我に返った僕は、ズボンからはみ出し、うなだれた自分の分身を見つめ、同じようにうなだれて、しばらく呆然としていた。
横には、先ほどまどかが持って来た、キャラクターの絵が描かれたブルーの弁当箱が転がっていた。




