口撃終了
「いいわ、分かった……まどかちゃんが、『ケンジ君と付き合っていない』って言うのなら、ママも信じるわ。ケンジ君、ごめんなさいね。お呼び止めしちゃって……今朝、『学校から帰ったら、ウチに来て』って言ってたのも、このことだから……もういいから。どうも、ありがとう」
おばさんは、そう言うとベンチから立ち上がり、「まどかちゃん、ママと一緒に帰るでしょ?」と、まどかに訊ねた。
まどかは、首を振り「まどか、ケンジ君と帰る。だって、帰るまでに、ケンジ君、そこの桜の木で、首吊っちゃうといけないから……」そう言って、笑った。
そんなまどかの言葉を、おばさんは困った顔で見ながら、「すぐに、帰ってくるのよ、遅くなっちゃダメよ!」と、釘を刺してその場を後にした。
「わかってる~! ママ~ ありがとう~」まどかは、そう言って、おばさんの背中に手を振った。
まどかは、立っておばさんを見送ると、先週スズメのヒナの死骸を埋めた桜の木のところに行って、手を合わせた
そして、再び、僕の座るベンチに戻り腰を掛けた。
「ママ、私たちが付き合うの、『ダメだ』って言ったね? 喜んでくれると思ってたのに……」
「そりゃあ、そうだよ」僕は、安易に相槌を打った。
「なんで?」まどかは、先ほど自分の母親を口撃した鋭い矛先を、今度は僕の方に向けた。
「『なんで』って…… そりゃあ、女の子の親なら、みんな、自分の娘が、悪い男の毒牙にかからないか、心配してんじゃないの?」
僕は、適当なことを言って、その口撃をかわそうとした。
「ケンジ君は、悪い男なの?」まどかの、追撃が来た。
「だって、俺の本性なんて、おばさんには、分からないじゃないか。だから、『まどかに、悪いことされるかもしれない』って心配になるんじゃないの?」
「ふーん、そういうものなのか?」まどかは、僕のさらなる適当な返答に、妙に素直に納得した。
そして「でも、もう悪いことしちゃってるけどね」と言って、笑った。
僕も、苦笑いをした。
そんな、屈託のないまどかを見てると、僕は急にまどかを抱きたくなり、「まどか、お稲荷さんに行こう」と、場違いなお誘いをした。
その僕の言葉に、先ほどまで笑っていたまどかが、急に真面目な顔になり「ダメだよ!」と言った。
「先週のこと忘れたの? それに、ママが二人でいること知ってるじゃん」と、僕の誘いを断った。
しかし、僕の股間は、もうすでに、まどかを抱く準備に入ってしまっていたため、素直にまどかの言葉を聞くことができず「ねっ……お願い、すぐに済ませるから……」と、まどかの腕を強く握り無理やりお稲荷さんに引っ張って行こうとした。
「痛い! ダメだったら……生理、終わったとこだし、あそこがヒリヒリするから……第一、ケンジ君、ゴム持ってるの?」と僕の手を振りほどき、訊ねた。
さすがの僕も、学校にまでコンドームを持って行くほどの強者ではなかった。
「生理が終わったばかりなら、生でも大丈夫だろ?……ちゃんと、外に出すから……」そう言って、再度まどかの腕を取り、引っ張ろうとした。
先週あったことなど、僕の中では、もうすでに『過去の出来事』となってしまっていた。
そんな、僕の能天気な誘いに「イヤだ!……やっぱり、ケンジ君て、ママが言うように、私を愛してるんじゃなくって、私の身体だけが目的なのね?」と、まどかは、声を荒げた。
「そんなことないよ……まどかを愛してるから、まどかを今抱きたいんだよ」
「そんなの、嘘に決まってる……痛いから、放してよ……ケンジ君のバカ!!!」
まどかはそう言って、僕の握っている手を振りほどくと、遠くへ駆けて行き、こちらに振り向いて「もう、ケンジ君なんかとしないから……」と言って、走り去った。
一人取り残された僕は、そのまどかの反応に、呆然とまどかを見送った。
その後、家に帰った僕は、仕方なく、自分で自分を慰めて先ほど、まどかに拒否された欲望の処理をした。
その時、頭の中に思い浮かんだのは、まどかの裸や夏未の身体ではなく、先ほど見たまどかの母親のスカートの先から伸びた美しい白い素足であった。




