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鏡の先に届きたくて  作者: 斉木 明天
1/6

夕日の中の割れた鏡

 自分の呼吸は酷く乱れていた。

 全身に失敗を感じた時の、細かい針が肌一面を刺したような感覚が走っている。この感覚は一番嫌いだ。誰かに見限られた時、誰かを裏切った時、些細な言葉が躓いたときの、自分自身を殺すような感覚だ。


「待って。お願いだ、待ってくれ! 本当に、本当にたどり着きたくて、色々やったんだ!!」


 自分は地に着いた自分の手から、目の前に顔をあげ叫ぶ。

 目の前には、とても静かに、赤黒い夕日を背にした長髪の女性が立っていた。

 赤い色だけを斑に残して、乾いた雰囲気を残した砂浜の上に立つ彼女の姿は美しく。そして、全てが完璧な上で、それができないこっちを、心から軽蔑しているようだった。

 その目を見るだけで、呼吸が荒くなる。どうして、どうして? 自分はどこで間違えたんだ。後で冷静になって、全てが時間を掛けて理解できてからじゃ遅い。今、相手に見限られるこの瞬間に、自分が何を間違えたのかが理解できないと意味がない。

 そんな恐怖心が自分の頭を高速で書き込み、書き込んだがゆえに頭を真っ黒で読み取れなくして、思考を停止させる。


「届くために、本当に色々やったんだ。貴女みたいな力を、貴女みたいな才能を、貴女みたいな憧れられるだけの理由を。なのに……なんで!! 何が学べてないの、私は!!」


 自分は手を地面から離し、彼女に駆け寄ろうとした。

 だが、その瞬間に激痛が走る。

 痛みで目を下に向けて見れば、一線の斬撃が、自分の手を、手首から切断していた。

 自分はそのまま情けなく地面に倒れる。砂浜に倒れ、自分の手首から血が噴き出して砂浜に消えていくのに。自分は立つことも、血を止めることも出来なかった。

 悪い子の手は切り取られる。なんて言葉があった気がするが、まるでそんな感じだ。


「……たしかに、貴女は頑張ったわ」


 自分が痛くて、居たくて。説得力もなんもない言葉を叫び続けている中、彼女は今しがた出した剣を降ろしながら、口を開く。


「でも、私が学べてないと言ったのは、人の気持ちを理解する事だけよ」


 そう言いながら、彼女は私に近づいてくる。

 それは、慰めるわけでもない。無視するわけでもない。

 ただ、何もできないくせに、一丁前に人の人生を壊すことしかできない私を、今後邪魔にならないように、殺す為に。


「同じ実力を得た? 同じ地位を得た? 同じことができるようになった? 後は、認めてもらえるだけ?」


 泣き叫ぶ自分の視界が暗くなる。おそらく、夕日から影になるように、彼女が剣を振り上げたんだ。


「私は、最初っから最後まで。人の気持ちを学んでほしかっただけ。一番学ぶはずの事ができないから、それ以外の事を学んで、学んだ気になっただけの。本当に、屑の愚か者」


 その瞬間、彼女の剣が私に振り下ろされた。

 自分の首が飛び。本当に何もできなくなったことを、自分自身、死んでいく中で実感する。

 『おまえは何も学ばなかった』

 最後に、そう呟かれた言葉だけが聞こえた。

 悔しい。悲しい。なんで、なんでどうにかしようと生き続けたのに。軽蔑されたうえで、お別れを言われるまでになってしまったんだろう。

 やり直したい。今度は、裏切り者じゃなくて、褒められたい。

 後悔の言葉ばかりを呟きながら、私の気持ちは暗転した。

前回書いてから色々あって、また書きたくなりました。

書いてる途中の作品の中、書くものですが、書きたいと思うタイミングで書いていこうと思います。

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