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ギルドの掟、リオンの怒り

 騒がしい朝食を終えて冒険者ギルドに向けて町を歩く。


 メンバーは僕とリオン、そしてゾフィーとバウルの四人。


 ロインさんとレイラさんはやる事があるっていって朝食を食べ終えたら僕らが準備を整える前に宿を後にしていた。


 その時に「後で楽しみにしといてね」といい笑顔で言われたのだけれど何をするのだろう?


 何をするか聞いてみたんだけど秘密で押し通されて知ることは出来なかった。


 そんなこんなであの二人の行動は不明ながら僕らは四人で町を歩く。


「それで、今日の目的っていうのはグレンのパーティー加入の登録ってことでいいんだよな?」


「そう、それと生存報告をするわ」


「なんでも死んだ事にされているんだっけ?酷いことするよね」


「まぁ、アレだけやってたら普通死ぬわよね」


「足刺されて魔物の群れの前に置き去りだっけ?想像するだけでぞっとするよ」


「それでも生きてるんだからしぶとさだけは認めてあげるわ」


 というのが僕のお世話になる新しいパーティー「デラシネ」の三人の評である。


 そう話している時にリオンの尻尾の毛が逆立っていたので思い出してイライラしてるんだろうな。


 ゾフィーさんはヤレヤレという感じで、バウル君は想像したのか身震いしている。


 そんな三人と一緒にギルドに入る。


 いつもこの時間は依頼の受注にきた冒険者でワイワイガヤガヤと喧騒が支配している。


 しかし胸の高さの両開きのスイングドアを開けて僕らが中に入った瞬間。


 その一部の場所でその喧騒が途切れる。


 何かあったのかな?と思いながら登録カウンターに向かう。


 その間に喧騒が途切れて静寂が支配する場所が伝播して広がっている。


 そしてそれらが半分を支配した時、依頼の受注を行っていた冒険者達も異変に気付く。


 僕らも当然それに気がついているのだが、先頭を歩くリオンは構わずに歩を進める。


 一緒にいる二人もそれについて行っているので僕もそれについて進む。


 冒険者達に訪れた不自然な静寂の中、僕らの足音だけがギルド内に響く中リオンが口を開く。


「パーティー加入の手続きをしにきたわ、私はパーティー『デラシネ』のリーダーのリオン。ここにいるグレンをダンジョンで救出した、その時にモンスターへの餌としてあのパーティーに置き去りにされていたから私のパーティーが彼を救助した。その対価として彼には私のパーティーに入ってもらう事にしたから手続きをしてちょうだい」


 身振りと指差しを行いながら告げるリオン。


 その指差した先にはゴミクズゲスの三人の姿。


 それは有ってはならない事の告発でもあった。


 仲間を救う為に殿を務める事は自己犠牲として尊重されている。


 しかし、仲間を見捨てて置き去りにして自分達だけが助かろうと言う行為を好意の目で見る事が出来る者がいるだろうか?


 冒険者の依頼というのは場合によって命懸けだ。


 そんな中、他人を餌にして自分だけが助かろうという事をした人間がいたとして、その人間を信じる事が出来るだろうか?


 答えは否。


 そのような事をすれば信頼関係など築く前に危険な相手と認識され、そうした中で行われる依頼等上手くいくはずもない。


 そういうわけで、冒険者ギルドでは規約として他人を能動的に犠牲にして自分達が助かる事を禁じている。


 理屈を考えるほど頭が回らない者もいるような玉石混合の冒険者において、仲間を餌に助かろうとしてはならない、仲間を大事にするというのは鉄の掟なのである。


 勿論、裏でそれを無視するものもいるのだが、それが表に出たときに起こる事は……


 ギルド中の人間の冷たい視線が三人に突き刺さる。


 いくら僕が獣人ではないとはいえ、僕は誰かに危害を加えたわけではない。


 確りと働いている姿を、こき使われてる姿を見ている人も多いのだ。


 その有能ではないが、真面目な人間を囮に逃げ帰ってくるという醜悪な行動。


 それは彼らの感情を、目線を侮蔑の目線に変える十分な事だった。


「で!でたらめだ!そいつは自分で起動してしまったモンスター召喚のトラップの責任を取るために自ら進んで囮になったんだ!」


「そうだ!俺に任せて先に行けって飛び込んでいったんだ!」


「それを俺達が囮にして逃げたなんていいがかりだ!」


 ギルド中から向けられる冷たい視線に三人が慌てて言い分ける。


 しかしそれを許さない般若を背中に背負う少女がいた。


「・・さい」


「「「あ?」」」


「うるさい!!!!」


 リオンの怒気に満ちた叫びに三人は言葉を失う。


「私がグレンを見つけたとき、グレンは全身傷だらけで足にナイフを生やして魔物達に食われる寸前だった。全身噛み傷は擦り傷、打撲に切り傷で普通だったら途中で群がられて死んでるところ、それを何とか逃げてきても死ぬ寸前だった」


 俯きながら放つ言葉にはドロドロとマグマのように熱く、粘り気を持った怒気が篭る。


「グレンは弱いのに助かってホッとしてたはずなのに打ちもらしに奇襲を受けた私を身を呈して庇ってくれた」


 淡々と言うその言葉に篭る感情は何なのか、それは僕には分からないけど。


「そんな私の幼馴染を」


 そう言ってキッと睨みつける姿に激怒している事だけは分かる。


「殺そうとしたあんた達を私は許さない!決闘だ!お前達を地獄に叩き落してやる!」


 そう言ってリオンは三人を指差し睨みつけるのだった。

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