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グレンにまつわるあれこれ

「調査隊が低ランクのサポーターの為に出てるの?嬉しい事だけど解せないわね」


 そうレイラがそう呟く。


 それは他の面々も同じようで不思議そうにしている。


「信じてもらえるかどうか分からないんですけど、彼、料理上手でしょ?食い詰めた冒険者の救済策としてギルドでバイト募集したときに彼、うちで働いた事あったんですよ、そしたらね、酒場のマスターがえらく気に入っちゃいまして、彼がツケの利子代わりにって出しちゃったんですよね」


 そう言って話すギルマスの顔はヤレヤレといった感じではあるが、その顔には楽しそうな笑顔が浮かんでいる。


 そしてそれを聞いたデラシネの面々はリオンに注目をする。


「えっと、グレンはお料理上手だから、多分ほんと。お母さん仕込のお料理は絶品だし家事も上手。だからサポーターとしては多分これ以上ないくらいの腕前」


 リオンが嘘を言う必要なんてないのは明白で、それは他の誰が言うよりも説得力があるのをパーティーの面々は知っていた。


 それに納得した彼らは話を進める。


 受付嬢に話した内容と奴等の現状、そしてこの後どうするか。


 その選択肢のは多岐に及んだ。


 その選択肢の中から彼女達は自分達の意に沿うものを吟味していく。


 そうして話が終わったとき、外は暗くなっていた。


「それでは皆さん、今日はいいお話が出来てうれしかったですよ」


 そう言って四人をギルドマスターのルインは見送る。


「いいえ、此方こそ押しかけた所に力を貸して頂き感謝します」


 そう言って頭を下げるリオン、彼女は道理が分かっている子なのである。


 多少感情的になったり、自分に不都合な相手には攻撃的になったりすることはあるが、基本はちゃんとしているのだ。


 その事に目を細めるギルドマスターは言葉を続ける。


「それでは、明日の健闘を期待してますね」


 そういって裏口から送りだされた四人は夜道を宿へと歩く。


「狐の郷のじゃじゃ馬娘と異端児にエルフの放浪者か。これは掘り出し物になるかもしれませんね」


 ギルドマスターの独り言は夜の闇に溶けていくのだった。


 そしてギルドから帰った四人はロインと合流して食堂で翌日の段取りを話し合う。


 その中でグレンが褒められてリオンが嬉しそうな顔をして「よかったわね」という声に「なにがよ」と照れ隠しに言っていたとかなんとか。


 そのまま起きないグレンを心配してリオンが「身内だから私が見る責任がある」といったら全員優しい表情で承諾したり、ゾフィーに「夜這いしちゃだめだぞー」とからかわれて顔を真っ赤にして「しないわよ!」と言うやり取りがあったり。


 そんなこんなでロインとレイラの部屋はグレンとリオンが泊まる事になり、他の四人はそれまで三人で使っていた部屋で四人で寝ることになる。


 そうして寝室でグレンの頭を撫でるリオン。


「もう、本当に馬鹿よね、グレン。心配したんだから、これからは私の目の届く所にいなさいよ」


 そう言って椅子に座りながらグレンの頭を撫でるリオンの目は他人のいるところでは見せないやさしさを見せていた。


 その夜、グレンを見張ると言う名目で、間近で見張る為にベッドをくっつけて眠ったリオン。


 その寝顔はそれまでにないほど安らいでいたのだった。




 ???


「お、きたな?」


 聞き覚えのある声が空間に響く。


 その声に応えようとするが身体は動かない。


「ああ、話さなくていいぞ、今のお前に必要なのは休息だからな、とりあえず聞くだけでいい」


 その言葉に身体の力を抜く。


「それでいい、これから話す事は記憶には残らないが身体に残る、言ってみれば当たり前に使えるようになるってやつだな。これは一種の記憶とは違った知識の継承って言う奴だ。これから折を見て分割してお前に知識を与えていく。今のお前に必要な知識は生活面やサポートに関する事全般、それと自衛する方法についてだな、身体能力のほうは枷が緩んでいるから起きたら上がっているし、これからも上がり続けるから気にしなくてもいい、力の加減は覚える必要があるけどな。それとレベルの枷も緩んできているからレベルも時間と共に上がっていく。不思議に思うかもしれないがそういうもんだと思っておけ。今まで上がらなかった分特典つきだからおいしいぞ」


 その言葉の通りに疑問に思うが、そんなもんだという事にしておくことにする。


 そうでもしないと精神がもたないから。


「まぁ理由としては、神様の与えた制限とそれに対する反動だな。まぁご都合主義とでも思っといてくれ。その代わりにお前にはやらないいけない事があるが、それは追々わかってくる事だから今は気にするな。それじゃ、始めるぞ」


 そう言って彼は語り始める。


 今まで見た事も聞いた事もないスキルや様々な事を。


 知識として聞いた後に使用している時の身体の使い方をイメージさせ、それをしているときの感覚も再現していく。


 それはとても不思議な事で、僕の十六年の歳月の中では想像もできないような、濃密な体験だった。


 こんなスキルが使えたらって、そう思うような凄いスキルの数々を見せられていく。


 これがあれば、僕でも足手纏いにならずについていけるかな?


「足手纏いどころか、これがあれば引く手数多だぞ、だからといって、リオンの嬢ちゃんから離れるのはお勧めしないがな」


『そんなことしないよ、リオンは大事な家族だから、ずっと一緒にいるつもり。』


「かーっ!お熱いこって!妬けちゃうねぇ!ひゅーひゅー」


『ちょっ!そんなつもりじゃないって!!』


「あーあーあーきこえないーーーっと。まぁ今はそう思っとけ鈍感野郎!ちゃんと幸せにするんだぞ」


『むぅ……分かってるよ』


「本当にわかっているのかねぇ。まぁいいや、とりあえずそろそろいい頃合だなっと、お?これは……喜べ少年、最高の朝を迎えられそうだぞ」


『最高の朝って?』


「それは起きてからのお楽しみだ、あんな事があったからな、いい人生を送るんだぞ」


『頑張るよ!』


「それじゃあ、またな!」


『ありがとう!』


 そう言った途端、辺りが白く染まっていく。


 そして浮かんでいく感覚と共に色んな物が薄れていく。


「がんばれよ」


 そんな声が聞こえた気がした。

 

「全く、此処に居るうちから念話を使いこなしやがって、覚えが良すぎるだろ」


 誰も居なくなった空間にそんな声が響くのだった。

主人公に鈍感属性は必須ですよね!

次回、そんなグレン君にハプニングが!

グレン「人生終わったかと思った……」

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