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2 死んだかな?気がついたら白い空間だけどそこは……

「大丈夫?」


 その呟くような声は鈴のように澄んだ声で耳の奥に届くと同時に、胸がドクンと鼓動を打ち、それとは別に根拠の無い安心感と懐かしさを感じる。


「すぐ終わるから、待ってて」


 そう言ってユラリと尻尾を揺らしながら振り返ったその姿に目が釘付けになる。


「爆ぜろ狐火」


 手を横に振りながら放ったその言葉を切っ掛けに、魔物の群れを蹂躙していた炎環が崩れ横一列に広がったかと思うと瞬間、それは轟音と共に魔物の居る場所を一気に嘗め尽くすような爆発的な広がりを見せる。


 不思議と余波の熱を感じないその光景を呆然と見ているしかない俺の前に影がさす。


「救難信号は貴方?」


 いつの間にか目の前に立っていた彼女の言葉に息を呑む。


 言葉が出ず、首肯する事で肯定した俺に目の前の雰囲気が少し緩んだ気がした。


「そう、間に合ってよかったわ」


 そう言って一息つく彼女に何か言わないとと思い口を開く。


「え、えっと、あ、ありがとう、お陰で命拾いした」


 なんとか搾り出した言葉はしどろもどろとしていて、みっともないことありゃしない。


「よかったわね、命は大事にしないとだめよ?」


 仕方ないわねという雰囲気の彼女から言われたその言葉に反論する言葉は見つかるわけも無く。


「返す言葉もない、肝に命じます」


「うん、そうしなさい」


 そう言って雰囲気が緩んだ気がした瞬間、何かが警鐘を鳴らす。


 それは思考の奥にある、本能のような物がならした警鐘。


 それに従って反射的に目線を上げるとそこには信じ難いモノが映りこむ。


 それは燃え盛る巨人のような、そんな何か。


 それが目の前の少女の間後ろで拳を振り上げていた。


「っ!?」


 言葉を発する余裕なんてなかった。


 それは本能的な行動、力の入らない足も、疲れ果てた身体も、何もかもを差し置いて、目の前の少女に手を伸ばし、抱きかかえるようにして位置を反転させる。


 そして自分の身体を盾にして少女を庇う。


 それは自分よりもはるかに強い者を庇うという身の程を弁えない、愚者の行動だが、何故か身体が反射的に動いてしまった。


 この子を助けないといけないと思ってしまった。


 今まで逆光で顔が見えなかった少女が目を見開いて驚く顔が目に映る。


 ああ、そうか、どうりで声に聞き覚えがあるわけだ。


 この子を庇って死ぬなら、死ぬ意味もあるかな。


 そう思いながら昔も同じような事があったなって思い出す。


 これが走馬灯か、そう思いながらその時が来るまでに出来る事がないかと思考を巡らすがそれは意味をなさない。


 身体を衝撃が襲い、そして僕の視界は暗転した。








「・ーい・・・-」


 何か聞こえる?


「お・い・・・ろ-」


 呼ばれている?


「おーい、早くおきろー」


 そういうなよ、全身ボロボロなんだから、もう少し寝かせてくれよ。


「身体の傷は関係ないからさっさとおきろー。起きないと黒歴史暴露するぞー」


 なんか不穏な言葉が聞こえる気がする。


「ったく、仕方ねえな、たった一人の大事な幼馴染相手にどんな思い抱いていたかを暴露してやるか、村を出る3年前から――」


「え?いや!それはこまるから!」


 がばっと顔を起こして叫ぶようにして遮る。


「っつ……あれ?痛くない?怪我もして……ない?」


 そうして混乱していると目の前にいた奴から声をかけられる。


「ったく当たり前だろ、ここはお前の中に作った領域なんだ、外の怪我なんてものは此処には関係ねえ」


 そう言って呆れたように言葉を発するのは。


「え?僕……?」


 そこにいたのは毎朝顔を洗う時に桶に張った水に映るのと同じ顔。


 僕がそこにいた。


「おうよ、こうして話すのは初めてだな、ようこそ、もう一人の俺、お前の日常、楽しく見させてもらってるぜ」


 僕の声で、僕の顔で悪びれる風もなく、そういう彼は続ける。


「混乱していると思うがまぁ、とりあえず座って聞いてくれ。質問は最後に受け付ける」


 よくわからないけど、僕のいう事に従って身体を起こして胡坐をかいて向かい合う。


「先ず俺が何なのかから――」


 そう言って告げられた言葉は俄かには信じ難いものであるが、要約すると。


 先ず彼は僕の前世の意識体であるということ。


 そして彼は僕が命の危険に陥るまでは傍観者として接する事しか出来ない制限を課せられていたということ。


 その制限への対策として努力しても中々能力に結びつかないというものもあり、それが今の僕の現状を作り出した一因らしい。


 正直ここまで長引くとは思わなかったが、その分楽しませてもらってありがとうとは彼の言。


 そしてそれが取り払われた時、僕は彼と記憶を共有する事が出来る。


 それは上書きされるわけではなく、追加される形で、今までの僕の記憶や思いはそのままに、彼の記憶や経験、思考メカニズムを追加出来るという形で。


 曰く彼は世界の人が至れないだけのモノを持っていて、それを一気に流し込むと混乱してしまうので段階的に少しずつ開放されていく、そういう形をとるとのこと。


 最初だけ、ちょっとした儀式がいるので此処に呼んだとのことである。


 それ以外は呼ぶ意味はない、ないけども呼ぶ事も出来るし、僕が此処に潜る事も出来る。


 やらないといけない事もある、それは僕が生きていくうちにやりたいと思うような事だから心配しなくていい。


 そう説明された後、彼は徐に立ち上がる。


「それじゃ始めるから動くなよ」


 そう言って僕に掌を向ける。


「我、神との約定に従い役目を果たす者なり」


 その言葉と共に僕と彼の下に光の円が浮き上がる。


「受けた力の代価としてこの世に幸福を施さん」


 言葉が進むにつれ、足元の円に線が引かれ文字が刻まれ力の奔流が風となって吹き付け光がつよくなる。


「願わくば、彼の者の行く末にいと尊き恩寵を、ターンメモリーズ」


 その詠唱句が終わった瞬間、足元の光が全てを埋め尽くす。


「それじゃ、楽しい人生を送ってくれよ、胸糞わるいもん見せるんじゃねえぞ!あと幼馴染をちゃんと大事にしてやれよ!」


 光と共に流れ込んでくる物と共にその言葉が流れ込んでくる。


 その色んな物の奔流に流されるように、僕の意識は流されていき、その空間から飛び去っていた。


「それじゃ、楽しい楽しい物語、神様達も楽しんでくれよ」


 遺された彼はそんな事を呟くのだった。

お読み頂きありがとうございます。


 謎の彼女の容姿についてグレン君視点の描写だけじゃ分からないと思うので記載しておきます。


 描写の中にあるように狐っ娘ですが、金髪碧眼で、髪の長さは肩甲骨辺りまで伸びるストレートロングを後頭部で結んでいて、アホ毛がぴょこっと立っています。


 身長は百五十センチ程でつるぺ(うわ!なにをする!やめ……あんぎゃああああああ




 動物の皮で出来た長袖長ズボンの上下に同色のキャスケット帽といった駆け出しの冒険者ルックで武器は鉄扇になります。


 顔立ちのイメージは小顔で少し幼さがあり、目はパッチリとしていますが勝気な印象を与える少し吊り上がった感じです。


 灼眼のあの子を金髪碧眼の狐っ子にした感じと思ってもらうと分かりやすいかもしれません。


 以上作者の戯言でした。

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