不思議な私とカラスの少しな時間
ボーッと空を眺める。暇だなぁと思いつつも、そんな暇な時間も私は好きな時間になっていた。
「今日も寒いけど、晴れてていい天気だな」
病気になり入院して、初めての冬。元気ならばこうやって窓からボーッと空を眺めることもせず、友だちと何か楽しく遊んでいたと思う。
入院すると聞いたときは、とても悲しかった。なんの病気なのかはよくわからないけど、入院してゆっくり治そうねってお医者さんに言われた。毎日熱を測り薬飲んで調子はどうかな?って聞かれるのは、最初の頃は何回も同じことを聞かないで!って思った。何も変わらないよ!って泣いたこともあった。でも、だんだん何日も繰り返してくると何も感じなくなった。慣れたのかな?
「そうだ、今日も来てくれるかな?」
私が入院してから友だちはたくさん来てくれた。でもしばらくすると、みんな忙しかったりして来るのが時々になった。少し寂しさはあったけど、しょうがないかとも思った。外にはたくさんの面白いことがあり、みんなにはそれぞれの楽しいことがあるんだから。
でもその代わりに、私には新しい友だちができた。今日も来てくれるかわからないけど。
コツコツ、コツコツ
窓を叩く音。この音がすると今日も来てくれた!って嬉しくなる。私は窓を開けて外に居た友だちを招き入れた。
「こんにちは。今日も来てくれたんだね」
「こんにちは。もちろん、僕は暇だからね。それにしても外は寒いよ。ちゃんと体を温めなきゃダメだよ?」
「うん、ありがとう。カラスさん」
不思議でしょう?私はなぜなのか、カラスさんとお話しがてきるの。他のカラスさんとは話せないし、他の動物もダメ。このカラスさんだけとはお話しすることができるの。
カラスさんとは夏になるかな?という少し暑い日に会ったの。私がいつもみたいにボーッと空を眺めていたら、声が聞こえてね。たしか、今日も暑いなって言っていたから、私もそうだねって言ったの。それから話せる!ってお互いにわかって、色々とお話しをしたら仲良くなったんだ。
「そうだ、今日も探してきたよ! ほら、見てよこの光る玉。凄いでしょ」
「これはビー玉だね。とても綺麗な色」
「変わった石だよな、こんな石があるなんて思わなかったよ」
「これは石じゃないんだよ?ガラスだから、この窓と同じなんだよ?」
「へ〜、この窓は色が無いのに。形も全然違う」
カラスさんはこうやって外に出れない私のために色んな物を探してきてくれる。そして、その探してきてくれた物を私がカラスさんにどんな物なのか教えて、2人で楽しんでいるのだ。
他にも綺麗なお花を探してきてくれたりして、そのお花がどんな名前なのかを教えたら、この1輪だけじゃなくもっとたくさん咲いてたんだ!とどれだけ綺麗なお花畑だったかを説明してくれたり、私が友だちに貸していた大切なお守りを失くされたときには平気だよと言って友だちが帰った後に大泣きしてしまい、それをカラスさんが聞いて探してくる!と言い数日間来ない日があった。結果は見つけた!と言い渡してくれたお守りはまったく違う物だったが、今ではこれが私の大切なお守りだ。
「今日も楽しかったよ」
「僕も楽しかった〜。あ、そうだ! 僕、春になるまで君に会いに来れないんだけど……大丈夫? 寂しくない?」
「そうなんだ。大丈夫だけど何かあるの?」
「うん、ちょっとね。それじゃあ、また春に会おうね」
「うん、また春に会いに来てね」
カラスさんは暗い夜の中、飛んで行った。来年の春か、長いなぁ。
冬も終わり、春になって僕はワクワクしながら彼女のところへ飛んで行く。彼女は気に入ってくれるかな?たくさんのキラキラ光る物で作ったこの花を。
前にあげた花は綺麗だったけどすぐに綺麗じゃなくなっちゃったからなぁ。彼女が外に出れたら、あのたくさんの花の場所に連れて行けるのに。まぁ、でもこの光る花を見たら驚くだろうな!作るのにこんなに時間がかかるなんて思わなかったけど、彼女が喜んでくれるなら良いかな。
コツコツ、コツコツ
あれ?なんで開けてくれないんだろ。
コツコツ、コツコツ
あ、居ない!なんで?どこに行ったんだろ彼女は。もしかして、外に出れるようになったのかな。探してみるか。
あの子供たちが集まる場所にも居ないな。
いい匂いのする場所にも居ない。
木のたくさんある場所で探しても見つからないなんて、彼女はどこに行ったんだ?
しばらく飛んで探し回ると灰色の石がたくさんある場所に彼女は居た。
「やっと見つけた! 外に出られるようになったんだね」
彼女はこちらを見てにっこりと笑っている。
「僕いつもの場所に居ると思ってさ、さっきまであっちこっちずっと飛んで探してたんだよ」
彼女は悲しそうにこちらを見ていた。
「いいよ、気にしなくて! こうやって会えたんだから。それよりもさ、ほらこれ見てよ」
彼女に光る花を差し出した。彼女は驚いた顔をしていたので、僕はやったっと嬉しく思った。
「実は今までこれを作ってたんだよ。君が気に入ってくれるかなと思いながら。どう? 気に入ってくれた?」
彼女は笑顔で頷いてくれた。
「良かった、気に入ってもらえて。そういえば、どうして今日は話してくれないの?」
しばらく彼女は悲しそうしてから口を開いた。
「カラスさん、今までありがとう。あと、ごめんね。お花、大切にするからね」
「どうしたの? 何かあったの?」
僕がそう聞くと、いつのまにか彼女が居なくなっていた。彼女の立っていた場所の灰色の石の上に、僕が作った光る花があった。
「……また何か探してくるよ。バイバイ」
僕はその場を飛び立ち、またいつか彼女を探しに来ようと思った。